2015/8/16  21:42

小さな窓の物語  しっぽコラム/エッセイ

もう15年ほど前の話になりますが
1年間、アメリカで生活をしたことがありました。

はじめの4か月間ホームステイしたのは老夫婦の家で、
二人は清潔な部屋を用意して待っていてくれました。

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                        〜ホームステイ先・私の部屋〜

部屋には窓がひとつ。

白い枠で上下スライド式。
窓辺に小さな机が置かれていて、
私はここに座り日本の友人たちにメールを打ったり

「今日も英語がよくわからなかった…」

と気休めに辞書をめくってみたり、
何かと心の折れる海外生活のスタートを
ひとりになれる静かなこの窓辺が癒してくれました。

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                    〜右から2つめの窓が私の部屋〜

私の部屋は家の前の庭に面していたので、
小さな窓枠から家の前を通る人や
お父さんが芝を刈る姿がよく見えました。

貨物列車が通る音、鳥の鳴き声、長閑な風景をながめながら
言葉や習慣に慣れる日が来ることを待っていたのです。

大きな窓からながめる風景も開放的、絵画的で素敵だけれど
小さな窓枠から見る限られた世界はとても人間的で、心くすぐられるものがありました。

大きな絵画の中の一ヶ所にカメラがズームして寄っていくように
小さなフレームの中で繰り広げられる他愛もない日常の映像には
ストーリー性が感じられたのです。

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        〜大学のキャンパスからホームステイ先の住宅街を望む〜

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                             〜大学のキャンパス〜

アメリカ南部の田舎町、
緑に囲まれた町にはいつも芝の匂いが漂っていました。

日本の公園にある芝とは違い、とても力強い匂いを放ち
窓を開けると風にのって部屋に入り込んで来ます。

時にむせ返るようなその匂いは息苦しく感じることがありました。
今でも芝の匂いを嗅ぐと胸が苦しくなるのは
当時の失敗や楽しかった思い出がグチャグチャになって
フラッシュバックするからなのでしょう。

我が家にも窓辺の書斎が欲しい。
緑の匂いが漂う小さな窓辺に座って書き物がしたい。
そう思い続けてきました。

我が家の2階に小さな窓があります。
そこからは隣りの家の庭が見下ろせるようになっていて
目線の高さに なんじゃもんじゃの木(ヒトツバタゴ)が見えます。

書斎をつくるならここしかない…

そう思い、数年前、長机を購入。

こっち向きかな、それともこっち向きかしら…

ああじゃない、こうじゃないとレイアウトが決まらないまま疲れて
結局、取り込んだ洗濯物の置き台に。

ところがこの夏、なぜか急にやる気になり書斎づくりにとりかかることにしました。
思い立ったが吉日
猛暑の中、

「おりゃ〜」

っと机を持ち上げ、物置部屋を大改造。

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机にはアメリカのキャンパスで撮った写真を飾りました。
大学のアリーナで行われる卒業式を見に行く際、知人に撮ってもらった写真です。

新緑の時期、フレッシュな緑の芝に囲まれたキャンパス。
1年の滞在期間が間もなく終わり、帰国を間近に控えた私は
とてもすっきりした笑顔を浮かべています。

大都会の東京でもあの芝の匂いと緑色の風を感じていたいと思い
数ある写真の中からこの一枚を選んだのです。

この部屋はエアコンがないので夏は蒸し風呂状態。
暑くて今はまだ座れません。

もう少しして秋になったら、ここに座って書き物をしたり
デザインをしたり、何かを作ってみたりしてみよう。
きっと楽しいアトリエになることでしょう。

若く、こわいもの知らずだったあの頃のように
また何かにチャレンジしてみよう。
そんな気持ちが湧いて来るのを感じています。

夜になると「リン、リン」と虫の声が聞こえるようになりました。
昨日まではまったく聞こえなかったのに。
秋が近いのだと知らせてくれているのでしょう。

涼しい風がこの窓辺にやわらかな空気を運んでくる日を待ちわびています。
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