2011/4/9  14:32


不思議なこと、驚くことはある日突然、何の前触れもなくやってくる。

仕事から帰り、お菓子を食べながらテレビを見ていると
家の電話が鳴った。

家族や友人は携帯にかけてくるので家の電話が鳴るということは
マンション、お墓、家のリフォームなどのセールスに違いない。
今度は何だと思いながら受話器を取った。

それは某出版社からの電話だった。
その社名に私は心当たりがあった。

一年前、この出版社が行ったコンテストに応募したのだ。
当然のことながら結果は落選。
今となっては応募したことすら私の記憶から消えていた。

応募者のリストを元に
「自費出版なんていかがでしょうか」
と営業の電話か・・・

自費出版なんて金は私にゃないぞ
面倒くさいから早く断ろう・・・

そう思って警戒していると編集者と思われる男性は
穏やかそうな口調でこうきり出した。

顔「以前コンテストに応募いただいた作品を読み返していまして。」

彼が口にしたのは確かに私が応募した作品のタイトル。
出版社にはたくさんの原稿が寄せられるけれど、
ちゃんと読んでるんだこの人たち・・・と驚いた。

彼はこう続けた。

顔「コンテストは落選だったのですが・・・
  今すぐ本にしようとかそういうお話ではないのですが・・・
  とても書き慣れている感じがしたので
  書くお仕事にたずさわっているのかなと思いまして。
  他に作品をお持ちでしたら読ませていただけないでしょうか。」

「作品ですか
  作品・・・作品は・・・私はないんですけど。
  書く仕事にたずさわったこともありませんので
  書き慣れているということはないと思いますが。」

そう言うと彼はややびっくりような反応をした。
作品から受ける印象と私の経歴が彼の想像とかけ離れていたのだろう。
編集者としての彼の勘はことごとく裏返された。

私に作品があればもちろん
「ぜひお願いします。」
と言ったのだけれど、無いものは無いのだ。

その後、彼はいろいろ質問をしてきた。

顔「どういう時にお書きになるんですか。」
「あのぉ〜、ブログをやっているのでそこに書いたりとかします。」

顔「そのブログを読ませていただけませんか。」

このブログのタイトルをおしえてもいいかなとも思ったのだけれど
彼が期待しているものとは違うかもしれない。

下手に中途半端なものを見てがっかりした時、
せっかく興味を持ってくれた私の作品に対する印象が
色あせてしまうのが嫌だったのだ。

チャンスだと思って持っているものをなりふり構わず出すか、
中途半端だからと今は出さずにおくか、

運命の分かれ道

さぁ、どっち  No.1!

欲と焦りで持っているものを全部見せてしまうような
安売りはしない

ど素人はど素人なりに考えてこう答えた。

「ご覧いただくほどのブログではないかと・・・」

チャンスを逃した、
そう思う人もいるかもしれない。
でも私はこの時「これでいいんだ」と妙な確信があった。

このブログに恥ずかしいものは書いてこなかったはず。
誰か一人でもその人の心に届けばそれでいいと思って書いてきた。
書いたものは自分の子どもだと思っている。

ただ・・・
落選後も出版社のダンボールの中で懸命にがんばって好印象をもらった
我が子の努力を欲や焦りで簡単に無にする親なんていない。

真摯に書き続けてさえいたら、チャンスは来る。
きっとまた来る。

彼と話しながら頭の片隅でそう思ったのだ。

顔「ブログにはどういう文章をお書きになりますか。」
「エッセイとかどこに行ってきたとかそんな感じです・・・」

顔「文章はいつぐらいから書いているんですか。」
「ここ数年くらいです・・・」

彼はまたやや驚いたような反応をした。

質問されるがまま答え、

顔「またコンテストに応募してみてください。」
「ありがとうございました・・・」

そう言って電話は終わった。

今思えば自分の作品のどの辺が彼の心に引っかかったのか
プロの編集者としての感想のひとつもきいておけばよかった。

仕事が終わりオフモードになっていたところに突然かかってきた電話、
ぼぉ〜っとしたまま話す女がひとり。
彼は2度自分の名前を名乗ったけれど、私はまったく覚えていない。

まさかこんなのんびりした女が出てくるとは思ってもみなかった
のではないだろうか。
編集者としての自分の勘に疑問を抱いたりしていないだろうか。

今まで私の書くものを「おもしろい」と言ってくれた人はいたけれど
もっと読んでみたいと言ってくれた人はいなかった。
私のような「ど」が付く素人の作品が
ほんの少しでもプロの心に引っかかったのなら、
それだけで上出来じゃないか。

コンテストに入選するよりも
落選したのに連絡がきたっていう方が心晴れ晴れ。

そこに意外性が生まれるから

作品、私の作品・・・考えてみても

無いものは無いパンチ^▽^

「作品は・・・ないんですけど・・・」

そんな会話が何だかおかしくて思い出して吹き出した。
これが就職の面接だったら間違いなく不採用である。NG

またテレビの前に座り、食べかけのお菓子に手を伸ばした。
吹き出してお菓子の粉がとんだ。

いつもと変わりない夜の出来事だった。
0




※投稿されたコメントは管理人の承認後反映されます。

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ