『希望の青空』 1943年東宝
監督 山本嘉次郎
脚本 山崎謙太 、小国英雄 、山本嘉次郎
撮影 鈴木博
音楽 伊藤昇
山本礼三郎(太田鶴右衛門)
二葉かほる(太田まつ)
藤原鶏太(太田亀造)
英百合子(太田たけ)
池部良(三男 務)
入江たか子(長女 萬亀子)
中村メイ子(武田純子)
高峰秀子(成島秀子)
原節子(三女 千鶴子)
大日方伝(長男 進)
江川宇礼雄(成島文之進)
その他
花井蘭子、霧立のぼる、岸井明、月田一郎、高田稔、音羽久米子、佐伯秀男、嵯峨善兵、伊達里子、一の宮敦子、尾上栄次郎、深見泰三、御舟京子、矢口陽子、御橋公、真木順、河野糸子、羽島敏子
全くダメ、これだけのメンツをそろえていてちっともまとまりのない稚拙な映画にしてしまった。名優集まって名作とはならないの謂いだが、どうしたんだろう、山本嘉次郎。
今となっては、戦争さ中にこんなポヨーンとした映画ができていたことを、一つの救いとして記憶するのではある。
幼い男女がある事情で結婚を勧められる関係になってしまうが、二人のよく発する言葉が「青い鳥っていないのねぇ」などと言うのである。お子様映画のようじゃないか。それで二人はその家族たちの既婚者の家をめぐってみることにした。すると皆とんでもない家庭なのだった。
最後に田舎で牧場をしている長男のところに行って、やっと腑に落ちるシアワセの片りんを見るが、当の夫婦は、結婚はシアワセを追うものじゃないと言う。しかしまだ若過ぎる二人には全くその意味が分からないのだった。
凝りに凝った、結婚とは何か映画なのだが、焦点がなくせっかくの名優たちがただ顔見世に出ているだけのように見えてしまう。
今となっては原節子のお姉さんぶりが際立っている。穿っていえば彼女だけが浮いているのだ。彼女の結婚の日に、弟(池部良)と相手の女性(高峰秀子)を部屋に呼んで、どちらも寂しいんでしょう?と諭す場面がある。今や結婚式場に行くという角隠し姿の原が弟に諭すのである。後の『晩春』で父に諭されてうつむいたままの角隠し姿の彼女を思い出させるじゃないか。
正に秩序派の原節子節である。ほとんどが喜劇調のこの映画において、このシーンだけはマジな佇(たたず)まいなのである。原節子、本当にまじめな、硬すぎるほどまじめな映画人だったのだ。

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