『カプリコン』 1977年アメリカ、イギリス
監督: ピーター・ハイアムズ
脚本: ピーター・ハイアムズ
撮影: ビル・バトラー
出演: エリオット・グールド:コールフィールド
ジェームズ・ブローリン:ブルーベーカー
カレン・ブラック:ジュディ
テリー・サヴァラス:農薬散布会社の社長
サム・ウォーターストン:ウィリス
O・J・シンプソン:ウォーカー
ハル・ホルブルック:ケラウェイ博士
ブレンダ・ヴァッカロ:ブルーベーカーの妻
こんな面白い映画とは知らなかった。事実、当時(1977年)あの月面着陸を疑う人がけっこういるほどの、どこかあやしい宇宙探検報道が下地にあって、この映画はあるリアリズムを持ち得ているのだ。
この映画では、ナサがでっち上げた壮大なウソのシナリオ。なんと、実際に行ってもいない火星探索をスタジオ撮影でごまかそうというのだ。
火星探索に出発するロケット≪カプリコン1≫が秒読みに入った時、ロケットの外からこんこんとノックの音がしてドアが開く。乗組員の三人は何が起こったのかわからない。ところが連れ出されて飛行機でどこか近くの大きな倉庫に入れられてしまう。そこで目にしたのは巨大スタジオに火星の大地と思しきセットがつくられていた。
そして実は生命維持装置に不具合が見つかったのだが、今の冷戦の中でこの計画を中止にするわけにはいかない、君たちはこのセットで架空の火星探索をしてほしいと言われる。しかし一人だけは頑なにそれを拒否する姿勢を見せた。
一方で人のいないロケットは打ち上げられて軌道に乗った。管制室は大いに沸いた。あとは映像を交えたウソの交信をすることだけだ。が、管制室の人たちはそのでっち上げを知らされずに巧妙に仕組んだコンピュータ画面を相手に仕事を続けている。
ところが一人の職員が責任者に、実はぼく個人のコンピュータで調べると音声が数秒早くキャッチされるのだがこれはなにか機器に不具合があるのじゃないかと思う、と整備を要請する。責任者は、わかったわかったありがとう、と言って偽の整備士を呼ぶが、そのうちにこの疑問を持った従業員が消えてしまうのだ。
彼と仲がいいジャーナリストが、彼が消えたことに気付いてその家に電話するが出ない。それで先週訪ねた彼の家に行くと知らない人が家に住んでいたのだ。しかもその友人の存在自体が消されていたのだ。これはなにかある!と彼はぴんときた。しかしいったい何があるというのだろう。
そしてテレビでは宇宙からの家族との交信場面になった。このトリックに納得がいかない乗組員が果たしてどう受け答えするのだろうか。ナサはもし彼が事実を言おうとしたらすぐ通信をカットせよと命ずる。彼は自分の家にいる子供との対面になる。どうなるか、と息をのむナサ、のみならず観客も。
すると、帰ったら約束のフットボール試合に行こう、と子供に言う。ほっとするナサ。しかし子供を抱えていた妻の表情がふと曇る。
ジャーナリストはこの場面を見逃さなかった。さっそく奥さんにこの次第を問いただすのだ。彼はこの乗組員とも友人であった。奥さんは実は夫の約束はフィッシングだったんですよ、それをフットボールと勘違いしたのでおやと思った、というのだ。ジャーナリストは確信する。彼は子供との約束を間違えるような男ではないと知っているからだ、これはメッセージなのだ、と。
ところが帰還の際にカラの帰還シャトルのタイルがはがれて燃え尽きてしまったのだ。偽のシャトルを用意してそれに乗り込むはずの三人の乗組員三名は、帰還に失敗したという事実を知って命の危険を感じた。自分たちはもういないことになっているのだ。
三人は閉じ込められた施設を脱出して飛行機で逃げる、が砂漠で燃料が切れてしまった。もちろん彼らが生きていては成り立たないシナリオだから、追手が彼らを始末するため追い詰めるのだが、かの一人だけは荒野で生き延びる。
一方、ジャーナリストも車を改造させられてブレーキが利かずに海に落ちる、など危険が身に迫ってくる。
それからは彼のナサを相手にした謎解きと戦いが展開されるのだ。
奇跡的に脱出した彼は、死んだとされた乗組員たちを探すために田舎の農薬散布用飛行機をチャーターする。そして、命からがら生き残った一人の乗組員との接触を果たすのだ。
ここからはアメリカ映画お決まりの彼らの農薬散布飛行機と追跡のヘリのチェイスが始まってしまう。面白いが映画の緊張感が崩れてしまう。そしてお約束通り追っ手のヘリは崖に激突。となる。
三人の追悼の墓地に現れた生き残りの搭乗員と記者が車から降りて駆けてくる。一斉に報道のカメラがそちらを向く、家族は信じられない光景に唖然とするところで幕。
何もいうことはない、とにかくエンターテイメントだ。

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