何と、起きたら午後1時過ぎだった。このところ何だか眠い。いったん起きてからまた寝てしまうことが多い。そして夢の続きを見るのが一種の楽しみなのである。これは今に始まったことじゃない。
それで寝坊した。
しかしせっかくの遅番の日なのに起きてすぐシゴトとなると何だか時間をずいぶん損した気分にもなる。仕事が終わればもうすっかり暗い夜になっているからだ。
それでつい、何かしなければという気分になって夜のカフェに寄って本の数ページでも読んだりして、なにか有効な時間を過ごした気持ちになって帰るのだ。
それとも帰ってからランニングに出るという方法もある。今日はそっちを選んだ。これも足を疲れさせて何かやったという気分になる手っ取り早い方法だ。
そして走ったあとにいつもの公園でストレッチングをしようとそこに寄ったのだが、何だか中年の男が座っていた。ちょっとがっかりしてぼくが足の筋を伸ばしながらその男を見るといい歳の男だ。ぼくはどうもと声に出さずに挨拶をして気まずい気分を解消したら「これはいいですよ」とアッチから声がかかった。
何のことかというと彼が座っている椅子状の遊具の事を言っているらしい。それはどうも腰を回す道具らしい。座って肘掛に手を回して腰を回すとくるくると回る仕掛けになっている。何だかテレビの広告で見たような運動用具に似ている。勝手に腰が回ってくれるので簡単にウエストのねじり運動ができる仕掛けになっているのだ。どれどれとぼくもそれに座ってみたがなるほど思ったとおりに腰が回ってくれる。これは良いかも、とか思ったものだ。
そんな話をしていると彼はこの公園はいいんです、おとなの運動遊具があるんですと言う。「ほらこれも」と例の回転椅子の背を指差した。そこにはたしかに「大人用」とかかれてあったのだ。
なるほどその他にも一本橋とか背中を伸ばすカマボコ状の物体があり、ぶら下がり器具も工夫した形に作ってある。ようするにこの小さな公園には高年齢用の健康具が子供用の遊具に負けず劣らず用意されてあったのだ。
ぼくの見る風景が一変した。そうなると本来子供用のブランコにしてもジャングルジムにしてもまるで大人のために用意されてあるように見えてしまう。子供のいない夜の公園は高齢者用ワンダーランドに早変わりというわけだ。
こいつあいいや。これからラニングの後はここで遊ぼうか。
本当にもう何年もさわったことのなかったブランコに乗ってゆっさゆさとやってみたら、ブランコがこんなにもスリリングなものかと思ったものだ。周りの風景全体が揺れて体が宙に浮いている。ぐいぐいと高く上がっていくともうめまいを感じるほどだ。こんな気分をすっかりと忘れてしまっていた。まっことブランコは年をとってからこそ、またエキサイティングな体験になるってわけだ。
同時に遠い遠い記憶の底からいろいろな光景が甦ってくるというのも、夜の公園のブランコの仕業なのだった。

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