≪日本−パラグアイ≫ 延長0−0
日本はダイナミズムがない。双方ともディフェンシブな戦いをずっと続けて前半を終わった感じだ。両チームとも良いところをつぶし合ったという、今大会で屈指の、見るべきところの無い試合になってしまった。
しかし後半も終わり頃になって実はこの二つのチームはもうそういう考えは始めからなかったのではないかと思うようになった。だから、ただ勝ち上がることだけで汲々としていたのではないかという疑問がふつふつと湧いてきた。
初めての8強が目の前にちらついていたのだ。とすればぼくらはまんまと騙されていたのだ。何か裏切られたという感じがするのだ。ワールドカップでこういう試合は見たくないとつくづく思った。
お互いにちっともチャレンジをしなかったし相手のミスを待ち望むだけの試合になってしまったのだ。あらかじめ考えられる一番良くない試合をしてしまったのではないだろうか。
救いは日本はかれらよりも弱いチームだったということだ。だから勝つためにはこんな戦いしかできなかったという言い訳ができるのである。
しかしそれならばぼくはチャレンジをして負けたほうがはるかに得るものがあったと思う。挑戦者がどうあるべきかという事には議論があると思う。この試合で日本は負けなかったという事実を持って自信とするのか、挑戦しなかったという負の遺産を持って帰るのか。それはこれからの彼らの課題として残ったわけだ。
ぼくは決して勝てなかった相手ではなかったし、挑戦することで勝機を引き寄せられたのではないかと思うから悔しいのだ。今大会せっかく良くなってきた日本サッカーが4試合目に来て元に戻ってしまったではないか。
中盤で日本の力を試してほしかった。もっと中盤でボールを支配してほしかった。パラグアイは中盤で強い粘りを見せるチームだ。ぼくはそこで日本がチャレンジしてほしかったのだ。
惜しかっただって? PKで負けるなんてほんとにつまらないことだ。PKで負けて得るものはまったくない。試合で負けることの中にはたくさんの教訓が含まれているというのに。
たぶんPKで勝てばぼくも嬉しがるに違いないが、それは次の試合を闘えるという1点においてだ。PKは次の試合へのチケットなのだから。

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