≪イングランド−ドイツ≫1−4
またしても伝説が
前半はまだイングランドが前の試合のような陰鬱な気分を引きずっていたような気もする。それでドイツがキーパーからの一発キックでクローゼが押し込んだ。おいおいこれじゃまったく古いドイツだぜと思った。美しさのかけらもないゴールだった。勢いに乗ってたて続けに2点目だ。
しかしそれからは徐々にイングランドがパスをつなぎドイツゴールに迫る。だんだんと試合は動き始めついにイングランドが1点を返しこちらも勢いに乗った。するとドイツのディフェンスが浮き足立ち、さらに畳み込むようにしてイングランドが攻め立てた。
そして同点のゴール、とアナウンサーが叫びぼくらもそう思った。
が審判のホイッスルは鳴らなかった。バーに当たって地面で跳ね返ったボールをすかさずキャッチしたキーパーの動きにまんまと審判が騙されてしまったのだ。明らかにボールはマウスに入っていたというのに。
同点を消された気の毒なイングランドだが、後半に入りその悔しさを晴らすようにドイツゴールに迫るが惜しいシュートもバーに跳ね返される。
しかしイングランドの勢いを凌いでドイツはカウンター攻撃姿勢に入った。なんとしてももう何点か入れなければあの取り消しゴールのおかげで勝ったと歴史に残されてしまう。それはなんとしても避けなければならない、そういう思いだったろう。
あっという間に2点を追加してイングランドに引導を渡してしまった。しかし見ている者にはまた昔のパワープレイサッカーが舞い戻ったかのような悪夢だった。
あの消えたゴールが後のプレイに影響したかしないかは神にもわからない(ドイツの監督は正直にもあの一件で守備が落ち着いた、と言っているが)。言えるとすればイングランドというチームは不幸な幻のゴールが有ろうとなかろうと、それでダメになるようなレベルのチームではないということだ。つまり後半のドイツの2点がそれによって汚されることは無いだろう。
それにしても因縁の深い対戦である。結果はドイツの圧勝に終わった。これは今回の両チームの出来を見れば順当な結果といわなければならない。
残念なのはルーニーやジェラードなどイングランドの面々の笑顔が一度も見れなかったことだ。
≪アルゼンチン−メキシコ≫ 3−1
第一試合の意地悪な神がまたピッチに現れた。
うって変わって中南米の戦いである。第一試合を見た人はヨーロッパとの違いを感じたことだろう。まるでサッカーの質の違いを絵に描いたような、教科書のような二試合になった。
出だしのメキシコが良かった。何度かアルゼンチンゴールを脅かした。試合の行方が見えないほどだった。
それだけに始めの「疑惑のゴール」が惜しまれる。これも疑惑と言うにはあまりにもハッキリしたオフサイドなので、実はゴールではなかった。前の試合のノーゴール誤審をここで穴埋めしたわけでもあるまいに。
明らかにこの試合はこの誤審が試合を左右したようにしか見えなかった。その後にメキシコのディフェンダーが信じられないミスを犯してしまうのだ。ボールを敵のイグアインに「パス」してしまったのである。これで2点目、もう目も当てられない状態だ。審判のミスと自分たちのミスでアルゼンチンに2点を献上してしまった。もうこれで試合は決まったようなものだ。
ハーフタイムで選手同士の小競り合いがあり、後半に入ったが、今度はテベスが渾身のミドルをたたきつける。3−0、メキシコ無残。
しかし、だからと言って試合がつまらなかったかというとまったくそういうことが無かった。メキシコの名誉?のためにも彼らは試合を捨てるようなことはしない、そういうチームなのである。1点を返し果敢に戦う。
彼らは自分のスタイルを変えようとはしなかった。中盤を省略してゴール前に放り込むようなこともしなかった。しようと思ってもできなかっただろう。見どころは盛りだくさんにあった。

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