W杯テレビ漬けでいいことがたくさんある。何で気分がいいのか、この時ばかりは一日中サッカー番組を点けていても誰も文句を言わない。誰もといってもツレアイだけだけどさ。幸せはそればかりではないのだった。あのバラエティ番組という大っ嫌いな番組を目にしなくて済む幸せ。あれは普段の日常ではいやおうなしに目に入ってしまう。なぜかぼくはあれがほんとに嫌いなのである。そしてあれを見ている人を見るのもいやなのだ。
ところがついでにニュースにまったく疎くなってしまった。コウテイエキって何だ?ユンケル皇帝液?なんてね。
≪ガーナ−アメリカ≫ 延長2−1
真夜中の観戦で延長かよーっ!
しかしアメリカは「強い」。何がって同じぶち込み攻撃を120分続けられることが、強い。
とにかくペナルティエリア内に放り込むだけを続けるのである。相手陣内にぶち込んでおけば自分の危険はないだろう。そう、まるで地域限定の爆撃をしているようなのだ。
思えばつまらないことでも延々と続けられることが戦争の基本であった。アメリカはその戦争が大好きな国でもあった。
奇しくも番組の最初に、観戦に来ていたクリントン(男)がインタビューに答えて言っていた。サッカーも選挙も「戦争」も同じだ、と、アメリカの名誉のために頑張ってほしい、と。
そうなんである。こんな国のチームを応援できるはずはない。サッカーというスポーツを楽しもうとは思ってもいないのだ。
ガーナは開始早々の1点のリードを保てなかった。やはりアメリカは「強い」のである。延長に入ってまたもやガーナが3分で1点入れる。しかし予想通りアメリカはまったく諦めないで、放り込み続ける。ガーナ陣内への猛爆である。
ついにガーナもその手に乗ってしまうかに思えた。彼らも疲れてしまったので、放り込みサッカーを展開しだした。こうなるとキーパーから相手のキーパーにドカンと打ち込む長距離砲ばかりである。もうサッカーではない。
しかしついに試合は決した。ガーナはボールをキープする自分たちの形を取り戻して最後を守りきった。8強へ。
ガーナが最後まで自分たちの形を見失わなかったことに驚く。素晴らしい気持ちの持続である。いったいあの監督は何をチームに注ぎ込んだのだろうと興味が湧いてくる。アフリカ「らしさ」はそれで失われてしまうのだろうか、それともヨーロッパサッカーと高い段階で融合するのだろうか。
ホイッスルと同時に倒れこむでもなく呆然として悔しさを顔に出すアメリカチームの面々。なんかぞっとする。終わったら健闘を讃え合うのじゃなかったのか?
敗残兵のようにうつむいて歯を食いしばる姿。それをアメリカ国民は美しいというのだろうか。素晴らしいファイティングスピリットというのだろうな。
しかしここはワールドカップだぜ?
気付けばぼくは日本代表に言っている言葉とまったく裏腹のことを吐いていることに気付いた。「闘えよ!」と言っていたのはぼくなのだった。

0