仏壇の上に掛けてある父の写真、掛かってはいてもまともに見たことはない。親父の顔なんか知っているもの。
しかし、今日なぜかじっと見てみたら、ああこんな顔だったのかと思った。
考えてみるともうぼくは親父の年を越えてしまっていたのだった。お父さんはいつだって自分より年をとっているものと思っていた。お父さんが静かに微笑んでいる。
もうぼくのほうが年が上だ。自分より年下のお父さん。56歳からそれ以上年をとらないお父さん。
自分より若いお父さんというのも何か不思議な気持ちだ。どう見ても彼はお父さんだし、どうしたってぼくより年上にはなれない。
妙な気分だ。
充分に親らしいことをしてくれた、本当のお父さんだ。
ぼくは決して好きではなかったが、子供に好かれることが親の本分じゃないという事を知っていた人だ。
今は年下になってしまった親父に、ちょっと感謝をしてしまった。

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