2005/11/29

せっかくだから  時間の記憶オリジナル2

机の中のノートを見てたら、むかーし書いたのが出てきたので載せてみます。

「それは、なりませぬぞ!」
緞武宝は大声を上げた。
「下界に行かれるなど、もってのほかでございます!」
そうだ、まったくとんでもない。
緞武宝は翔龍子が虎王であった頃、下界に遊びに行ったり、いたずらばかりするのに悩まされていた。だが、まさか翔龍子がこのようなことを言い出すとは・・・
武宝はそのいかつい顔をしかめた。
「どうしてもだめか、武宝」
「・・・・・・」
武宝はただ、苦い顔をしている。
「・・・そうであろうな。すまない武宝、無理を言って。駄目ならよいのだ」
翔龍子は顔を伏せた。
「翔龍子様、いったいどうなさったのですか。なぜ下界になど」
今度は声を穏やかにして武宝は聞いた。先刻は大声を出してしまったが、翔龍子がただ遊んだりするために下界に行きたいなどと言い出すはずがない。
「いや、よいのだ武宝。時間を、取らせた」
そう言って踵を返す翔龍子の前に緞武宝は回りこんだ。
「翔龍子様、この緞武宝、そんなに信用が置けませぬか?」
真剣に問われて翔龍子は困ったような顔で武宝を見つめた。
(穏やかな目だ)
武宝は思った。
翔龍子の瞳はいつも穏やかなその底に溢れるばかりの感情を湛えているように見える。
深い、深い青。
緞武宝は、もう決してこの世には存在を許されていない少年の、凛とした、哀しみと決意を込めた眼差しをその中に見たような気がした。
(気のせいだ)
慌てて打ち消す。
(そうだ、気のせいだ。翔龍子様はそのことを覚えてはおられない・・・・思い出しては、ならないのだ)
「武宝・・・」
翔龍子はためらいつつ言う。
「武宝は、この創界山がドアクダーに支配されていたときのことを覚えているはずだな」
「・・・・・・!」
「余は・・・余だけが、自分のものである責任を全て忘れて、魔界の影響下にあって行ったことを全て忘れて生きていくのは、正しいことだろうか?」
「翔龍子様、まさかそれで下界に行って思い出そうというのですか?」
「・・・・・・」
翔龍子は答えない
何故、突然下界に行きたくなったのか。それは翔龍子自身にも分からなかった。
何故、武宝にこんなことを言ってしまったのか、それも分からなかった。
ただ、下界に行けば。―――ゲカイニイケバ
翔龍子の中の何かが、強く訴えていた。



まだまだ続くけどまた今度。
この翔龍子、星の涙に出てくる翔龍子と通じるものがあるなあ。多分1990年の秋ごろに書いたものじゃないかと思います。完結してない。長くなりそうなのであきらめたみたい。
にしても文章の書き方あまり変わってないですね私(進歩がないともいう)。10年以上たってるのに・・・
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