最近、ジュジュと言う女性歌手が、ジャズスタンダードのアルバムを出した。ララバイオブバードランドは、サラボーン(Vo)とクリフォードブラウン(tp)の演奏や、ヘレンメリル(Vo)が有名であるが、ジュジュのプロモーションビデオでは上手いことこの曲を歌っている。NHK FM の松尾 潔さんの番組で、ピアノの島健さん、良い奏者が沢山参加しているのが解った。
バードとはモダンジャズ黎明期のジャズアルトサックスの天才奏者チャーリーパーカーの愛称であり、それにちなんだニューヨークのジャズクラブがバードランドであり、イギリス出身のピアニスト、ジョージシアリングが、30分で作曲したのが、ララバイオブバードランドであった。
ジュジュは、ニューヨークで、洋服店の店員をしながら、10年間ニューヨークのクラブに出ていた人で、ポップと言うよりはルーツはジャズにある人だと言うことだ。名前のジュジュも、あのウエィンショーターの有名なアルバム”ジュジュ”から取ったという。
高校時代ジャズに興味を持っていた僕は、高校3年生で、この曲を演奏していた。その後、プロ入りしてから、本物のヘレンメリル(Vo)さんと共演する機会があった。
考えて見ると僕は、内外の有名ジャズ歌手とのご縁があるようだ。20代では、中本マリさんとは3年間、阿川泰子さんのツァー、故人であるが、アンリ管野さん、サラボーンの来日公演瞳記念講堂で新日本フィルオケの時もご一緒させて頂いた。
このときの顛末が、忘れようにも忘れられないお話なので今日は是非紹介したい。当日のプログラムも保管しているので調べると日時も解るのだが、たぶん1990年前後のことだろう。20年以上は前のことである。外タレのプロモーターとして有名な I さんからいきなり電話がかかってきた。
「菊地君ですか?×月×日だが空いていたら、ヘレンメリルさんの歌伴でお願いしたいのだが・・」
「はい、菊地ですが、どちら様ですか?」
「だから、プロモーターの I だよ(俺のことを知らないなんて、まだ若造だな?)。空いているのか居ないのか?」
「はあ、空いていますが。。(誰だろうこの人は??)・・・」(笑)
てな感じで、事情が飲み込めるまで少し時間がかかった(笑)。プロ入りして7、8年の若者である20代の僕は、とにかく言われたとおり、その日、東京芝の郵便貯金ホールへ向かった。
ピアノトリオは、内田浩生(p)トリオ、ドラムは彼のバークレー仲間のティムホーナーだった。ニューヨークのため息として、青江美奈のアメリカ版として、日本で人気のヘレン・メリルさんの日本ツァーの初日は、1000人以上の大ホールである郵便貯金ホールであった。
僕の出番は1曲だけ。確か忘れもしない、My funny Valentine であった。構成は、僕が、テナーサックスで1コーラス、ヘレンさんが1コーラス歌った後に、カデンツの掛け合いをすることになった。
さて本番では、打ち合わせ通り、マイファニーをサックスで1コーラス、怖いもの知らずな若者の僕は、世界の歌謡いであるヘレンさんに臆することもなく、自然体で演奏、彼女が歌った後、僕のカデンツは、しばらくオーソドックスなフレーズを吹いた後、少し色気を出して、サブトーンのアーシーなスタイル、ベンウェブスター(往年のサムテイラーのような)むせび泣くフレーズでフッフッフッと吹いたものだからたまらない。ヘレンさんが吹き出してしまったのだ。
今までのしっとりとした雰囲気はどこへやら、肩で笑うヘレンさんを見ながら、下を向いて拍手を受けていた僕であった・・・・。
終わってから、ヘレンさんから、You have beautiful sound! とお褒めの言葉を頂いて家路についたのだった。写真は、トランペットの村田さんとヘレンさんと私。
後日、車のラジオから、なんだか聞いたことの有るサックスのサウンドなので聞いていたら自分であることに気が付いた。このときの演奏が今は亡きイソノテルヲさんの番組で紹介されていたのだった。しっとりした良い演奏だった。もし録音が残っていたら聞いてみたいものだ。ピアノも内田浩生(こうせい)、サックスの菊地康正(こうせい)の2部構成でお届けしました。菊地はまたプレイボーイとしても浮き名を馳せているなどと根も葉もない事まで(笑)紹介されていたのはご愛敬であった。

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