私の現在の仕事は、サックス、フルートの演奏技術及び心(精神)を教えること、そして演奏活動である。
音楽の演奏、歌唱には、音感が必要であるのは皆同意することだろう。所で、音感とはこれも又、人によってとらえ方が違うであろう。
私の意味する音感とは、調性のある音楽において、
1.メロディの個々の音を聞いて、同じ音程を歌えること(しばしの間、メロディを記憶しておく力も含まれる)
2.調性を感じ取る能力(今何の調であるか、Cか、Fか?)
3.引いては、和声進行感(ドミナント、5度からトニック、主和音に解決した)などを感じ取る能力のことである。
相対音感、絶対音感などの議論はまたの機会にするとして、最近気が付いたことがある。
音感をトレーニングする教材を製作するために、視唱(楽譜を見て歌うこと)、聴音(聞いた音を当てる、それを楽器で吹く)などの教材を取り寄せたり(ネット上で2万円の、教材も買いました!)市販の教材を買ったりしてみたのだが、なるほど、音大受験生などそれなりのモチベーションを持った人には良いかも知れないが・・・内容が面白いとは言えないのである。
ある日のレッスンで、60代のある生徒さんに、ロシア民謡「カリンカ」そして「赤とんぼ」を吹かせてみてびっくりした。
いつもは、読譜に苦労しているその生徒さんが、所見(初めて見た譜面を準備無しに演奏すること)で間違えないで吹いて行くではないか?
彼の言うことには「若いときに覚えた曲は忘れないものですね?人間の脳って素晴らしいですね?」そうだったのだ。ジャズ教室とは言え、我々には、生まれてから、童謡、文部省唱歌に始まって、民謡、演歌、歌謡曲、ニューミュージック、フォーク、ロック、ソウル、ラテン・・・と色々な音楽を聞いて体で覚えているのだった。音楽的資産が豊富に埋蔵されて居るではないか?
歌うだけのだったら、感覚で思い出して歌うだけだから、感覚が良いだけで、事足りるのであるが、楽器で演奏するには、それを指に対応させる必要があるのである。そのためにはドレミで覚え直さなくてはならない。
だがそのために、新たらしい曲を作る必要はない!記憶していて歌える曲(たぶん普通の人でも数百曲はあるだろう)を思い出し、ドレミでラベリングし直せば、楽器用の音感トレーニングになるではないか?皆さんが持っている音楽的資産の活用法が見えた!
考え続けると、答えはいつか見つかるもののようである。浮力の原理を入浴中に見つけたアルキメデスは、歓喜のあまり全裸で町を駆けたそうだが、その気持ちもよく解るのである。全裸で町を走る勇気も自信はないのだが・・・

2