東洋医学の現存する最古の医学書のひとつに、紀元前1〜2世紀に書かれた「黄帝内経」があります。
そのなかの、鍼(はり)についての篇「霊枢九鍼十二原篇」に、虚を補うときの鍼の手技に、
蚊がでてくるのです。
以下、{ }内は「福島弘道著 わかりやすい経絡治療」より抜粋です。
{即ち「補に曰く、之に随う。之に随うの意は、妄りに行くが如し、行くが若く按ずるが若く、蚊ぼうのとまるが如く、留るが若く還るが若く、去ること弦絶の如し。左をして右に属せしむ。其の気、故に止まる。外門すでに閉じて、中気及ち実す」
とあります。
これを要約しますと、「補法とは、生気の不足している所にこれを補う手法であるから、気をもらしてはならない。
その為には、鍼柄を極めて軽く持って、静かに刺入し組織の抵抗に逆らわぬように無理をせず、吸い込まれる如く自然に刺入しなければならない。
丁度
蚊やぼうが肌に止まって全く気付かれないように口先を刺し入れるが、これと同じようにして、・・・中略・・・
目的を達するを見て抜き去るのである。それは丁度、引き絞った弓の弦が、絶えると同時に矢が離れるようにパッと抜き去り、間髪を入れずはり跡を閉じるのである。
・・以下省略」}
この古典の、鍼手技は、私も行っている、脈診流経絡治療の補法の手技として、受け継がれています。
だから、はりが刺してるのかわからないくらい痛くなかったり、鍼を持った右手を急にパッと大げさに動かしているように見えるのです。
(鍼を受けた方は、びっくりされてるかも?)
あと、もうひとつ、蚊は命がけで、気付かれない場所を探して刺してるので、
変動のある経絡上に蚊に刺された跡が並んだりすることもあるそうです。