バイリンガルの科学  6) 教育・セオリー

バイリンガルの科学

小野博著(工学医学博士) 
講談社発行 ブルーバックスB-1011
科学的実証例に基づいてバイリンガルの実態を分析した本。

●語学と知能の相関的闊達
海外に住む日本人にとって言語教育の問題は必ずついてまわるものです。しかし子供に多数の言語を習得させる事を子供の性格形成や知能の発達にまで関連づけて考える人は少ないようです。

大学時代、教育心理の授業で教授が突然言い出した言葉に私は愕然としました。それは「バイリンガルの子供は知力の発達が遅れる。何故ならば人間は言葉を使って物事を考えるからで、習得言語を2つに広げると、両方の言語の発達程度が低くなるので、難しい問題を考えようとする時にどちらの言語の発達も未熟となって頭が混乱してしまう。」というものでした。

当時、一生懸命に英語を勉強していた私は「母国語を持たないセミリンガルの弊害」という事をその時、初めて知ってショックを受けてしまいました。


●成功するバイリンガル教育
でも、やはり自分が母親になってみれば、子供をバイリンガルにさせたいという欲も出るし、見栄も働くものです。では、どうすれば、子供に上手に言語を身に付かせ、尚且つ子供が幸せになれるでしょうか。これは誰にとっても是非知りたい事です。この本はそんな疑問に、科学的に実証したデータを使って答えてくれます。

たまたま外地に長く住んでいたからと、自分の狭い経験だけで本を書いたりする人もいますが、個人の知り合える範囲など、たかが知れているし、子供によってまったく違うので、あまりあてにもならないものです。筆者が世間で信じられているバイリンガルに対する常識を敢えて「神話」と呼ぶのも、世間一般のそういった盲目的な信じ込みを比喩しての事です。

●バイリンガルの神話
筆者の説く「バイリンガルの神話」とは:
・帰国子女は皆、英語ができ、発音もすばらしい。
・国際結婚の子供は皆、バイリンガルになれる。
・二つの言語がペラペラ喋れる人は、2言語を使って何でもできる
・日本国内だけの外国語学習でバイリンガルになるのは難しい。
・幼児のうちに外国語を学習させないと発音は良くならない。

●科学的実証例に基づく理論
筆者は自分の工学、理学で得た理系の研究手法をモトに、日本人の日本語と外国語とのバイリンガルに関してより深く探るため、言語学、音響学、外国語教育学、日本語教育学、障害児教育学など、発達と言語にまつわる多くの分野の科学的な根拠を組み合わせて分析し、調査研究で得られた結果が説明できる新しい理論を構築しようとしました。

そのために、人間の言語の習得と教育の始まりとの関係、日本語と外国語間の距離、子供の母国語の習得と感受期の関係、日本人の学校教育にいける外国語学習などについて、従来の外国語学習の研究の視点では欠けていた点にも注目して、海外駐在、帰国子女の調査結果を分析、考察して本書をまとめました。

●科学的実証による結論
その結果、著者が結論として得たものは、
(1)子供の知的な発達が自然に行われるためには、少なくとも小学生の時代は1つの言語で教育を受ける事が望ましい。

(2)将来仕事で使えるバイリンガルになるには、中高校まで日本語で教育を受けた後、海外で必要に応じて外国語学習を実践した人の方が到達しやすい。

というものです。

●バイリンガルの育て方
「とにかくバイリンガルにする事がこの子のため」と、必死にがんばってきた方にとっては、自分が信じていた事を根底からくつがえされたような思いがするかも知れません。でも筆者は「現地の学校には行かせるな、小さい子供に英語を教えるな」と言おうとしているのではなく、「日本人のバイリンガルの問題点」というものを整理して説明し、セミリンガルにならないための対策をも紹介してくれています。

同じ努力をするなら、こういった知識を踏まえた上で、語学を教育していきたいものです。私達は過去に同じように努力した人達が失敗した実例に学び、既に立証されている事と同じ失敗をわざわざ自分の子供にさせないようにしたいものです。

教育に熱心になるあまり、子供から出ているサインを見過ごしてしまうケースは多いものです。この本は海外で子育てをする日本人の必読の書と言えると思います。


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