2015/5/12
病院に長期入院している父は
見るたびに小さくなってゆく。
どれだけ私が話しかけても
もう返事もしてくれないし、
うなづいてもくれないけれど。
私より白く細くなった手を握ると
かすかな力で握り返してくれる。
私が、庭に咲いてる花のことや
母の様子など話しかけている間、
唯一動く、右手の親指で
わたしの手をずっと撫でている。
触れるか触れないかの
ほんのかすかな、かすかな力で。
だからきっと父は私が分かるし、
私が話すことも分かるにちがいない。
本当は言いたいこともあるにちがいない。
今は、言いたいことも言えない代わりに、
父は「思い」を飛ばしているみたい。
母の夢に毎晩のように出てきたりして。
わたしもなぜか西宮の家にいる時に
時折ふと、父の匂いがすることがある。
「あ、お父さんが来てる」
きっと様子を見にきてくれたのかも。
そう信じたいだけかもしれないけれど。

2
コメントは新しいものから表示されます。
コメント本文中とURL欄にURLを記入すると、自動的にリンクされます。