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2022/2/5  23:53

続カーラさん3  小説

「タリウス!お帰りなさい」

自室へと続く階段を上り切ると、ユリアが満面の笑みを浮かべ、迎えてくれた。今夜はもう遅い。彼女への報告も含め、すべては明日にしよう。そう考えていた矢先のことだった。

「何だかひどくお疲れのようですけど、兵舎にでもいらしたのですか?」

「いえ、今日は非番です」

あまり自覚はないが、朝から遠出をしたのと、長年の懸案事項がなくなって気が抜けたことがそう見せたのだろう。

「一体どちらへ?」

「実は、御生家へ伺っていました」

「ゴセイカ…?御生家?!」

瞬時にユリアの笑顔が凍り付く。

「まさか私の家へ行ったんですか」

「そうですが」

「どうして私に断わりもなくそんなことをなさったんですか!」

「いけませんでしたか」

「いけません!!」

こうなるだろうとは思っていた。だが、彼女の怒りはタリウスの予想を遥かに上回っていた。

「おねえちゃん?大丈夫?!」

その激しさと言えば、寝ている筈の息子が思わず部屋から飛び出してくるくらいだ。

「少しも大丈夫ではないわ、シェールくん」

「ど、どうしたの?」

シェールは目をパチパチ瞬かせながら、大人二人を見比べた。息子を巻き込むのは本意ではないが、ユリアはまるでお構い無しである。

「聞いてくれる?タリウスときたら、私に何の相談もなしにひとりで勝手に私の家へ行ってきたのよ」

「ええー?ずるい!僕も行きたかったのに!」

「そんなシェールくんが行ったところで、面白いことなんてひとつもないわ」

「そんなことないよ。僕、おねえちゃんのお母さんにまた会いたかった」

「え?また?」

今度はユリアが目をパチクリさせる番である。

「我々の留守に、お母上がこちらを訪ねていらしたそうです。どうやら、シェールひとりでお相手を」

「そ、そんなこと全然知らなかったわ」

「あれ?言わなかったっけ?」

「聞いてないわ!」

ユリアの怒りが再燃し、シェールが固まった。

「ご、ごめんね、おねえちゃん。でも、おばちゃんにはちゃんと言ったよ」

「どうして女将さんに?」

「だって、おばちゃんに用があって来たって言ってたもん。ねえ、カーラさんっておばちゃんのことだよね?」

「ええ、そうよ。確かにそのとおりだけれど…。シェールくん、大丈夫だった?何もされていない?」

「全然。裏庭でおしゃべりしただけなのに、用は済んだって言って帰ってった。良い人だったよ」

「それは外面は良いわよ。私の母だもの」

タリウスが思わず失笑すると、ユリアにキッと睨まれた。

「そもそも、何故実家に行くことを話してくれなかったですか」

「そうだよ!ずるい!」

「言ったところで反対されるに決まっている。シェール、お前に話さなかったのは、お前を連れていって良いものか判断がつかなかったからだ。それにまさか行きたがるとは夢にも思わなかった」

「勝手に決めないでよ!!」
「勝手に決めないでよ!!」

苦し紛れに言い返すも、すぐさま両側から怒鳴り返された。

「悪かった。謝るから。こんな時間に大声を出すんじゃない」

泣く子も黙る鬼教官も今夜ばかりはたじたじである。

「じゃあさ、もう一回行こうよ」

「ええ?!」

「いや、それは…」

予想外の提案に驚きならも、ユリアはタリウスの異変を見逃さなかった。

「その反応を見る限り、少しも歓迎されなかったのでは?」

「席に着くなり、帰るよう言われました」

「やっぱり」

言わんこっちゃないと、ユリアは手で顔を覆った。

「ですが、お父上自ら庭園を案内してくださいました」

「は?まさか、父の庭に入ったんですか?」

ユリアは目を見張り、身体を仰け反らせた。

「庭に入るのにもあなたの許可が?」

「まさか。そうではなくて、父は身内以外、絶対にあの庭に入れないんです」

「そうなんですか」

タリウスは驚いた。てっきり屋敷を訪れた客人は等しく自慢の庭園を見せられるものとばかり思っていた。

「ええ。元々荒れ放題だった庭園を父が一から手入れを。婿養子だった父にとって、自分が手掛けたあの庭は、言わば聖域みたいなものなのだと思います」

「お父上もお歳を召されて、宗旨変えをされたのでは?」

「あの頑固者がそう簡単に宗旨変えなんてするものですか」

「じゃあ何で?おねえちゃんと結婚して身内になったから?」

「ええ、恐らくはそういうことなんでしょう。俄には信じられませんが、一体どんな手を?」

ユリアが探るような目を向ける。

「断じて意図したわけではありませんが」

言って、タリウスが顎先で息子を指した。

「へ?」

「そういうことでしたか。流石はシェールくん。無敵ね」

ユリアはその場に屈んで、ふわりとシェールを抱き締めた。

「え?ねえ、どういうこと?」

「シェール、子供はとうに寝る時間だ」

「でも!」

「我が家の命運は、お前が如何に良い子にしているかに掛かっている」

「何それ」

シェールが不満げに声を上げ、それを見たユリアがクスクスと可笑しそうに笑った。

「ともかく夜更かしは禁止だ。二人とも良いな」

「私も?!」

「当然です。ほら、早くしなさい。十、九、八…」

「ちょ、待って待って」

「じゃあね、シェールくん。おやすみなさい」

「うん、おやすみなさい!」

カウントがゼロになったとき、廊下にいたなら一大事だ。二人は慌ててそれぞれの居室へと駆け込んで行った。

「はぁ」

様々な感情の混じりあった溜め息が静まり返った廊下に響いた。


おしまい
6



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