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2021/7/12  21:33

続ジョージア先生の長い長い夜1  小説

ある夜のこと、急ぎの仕事があったユリアは、夜更けまで食堂で店を広げていた。自室ではなく食堂を仕事場に選んだ理由は、広い場所が必要だったことに加え、もうひとつ。居眠りの誘惑に打ち勝つためだ。

「ああもう、限界だわ」

だが、そんな彼女に睡魔は容赦なく襲い掛かった。どうにも目蓋が重くなり、手燭の灯りが大きく揺れた。薄目を開けて炎の揺らめきを追っていると、突然ドンドンと激しい音が鳴った。ユリアはハッとして椅子から立ち上がった。

音は玄関から聞こえてくるようだった。彼女は咄嗟に背後を振り返った。炊事場の奥は女将の私室になっているが、眠っているのか、女将がその姿を現すことはなかった。その間も、戸はドンドンと激しく鳴った。

ユリアは引き寄せられるようにして、音のするほうへ向かった。

「どちらさまですか?」

次第に速くなる鼓動を抑え、戸越に尋ねた。勿論、閂(かんぬき)がしっかりと掛けられているのを確認した上でだ。

「おお、ミス=シンフォリスティか」

「そのお声は、ノーウッド先生でいらっしゃいますか」

聞き覚えのある老いた声に、途端に緊張が解けた。

「夜分にすまないが、ジョージアはいるか?緊急事態だ。本科生がひとり、外出したきり帰って来ん」

「お待ちください。今、閂を…」

ユリアは老教官を招き入れると、続いて音もなく階段を上り始めた。

「どうしました?」

階段を上り詰めたところで、タリウスと行き合った。騒ぎを聞き付け部屋から出てきたのだろう。

「ノーウッド先生がいらっしゃっています。訓練生のひとりが未だに帰って来ないそうです」

「すぐに行くと伝えてください」

タリウスは自室に取って返すと、すぐさま軍装をして出直した。その間、ものの一分と掛かっていない。

「お待たせしました」

「お前さんは所帯をもったというのに、相変わらずこんなところに住んでいるのか」

玄関にユリアの姿はなく、代わりに老教官が興味深そうに屋内を窺っていた。

「いろいろと事情がありまして」

「その事情とやらも大いに気になるところだが、まあ良い。話は聞いたか?」

二人はそのまま連れだって夜の街へと出た。

「はい。いなくなった訓練生というのは誰ですか」

「カヴァナーだ」

想定外の名前に、タリウスは眉をひそめた。当該訓練生は、これまで成績にも素行にも問題らしい問題はなく、一時は監督生に推そうとしたくらい優秀だったからだ。

「こんなことをしでかすような奴ではないと思うたが」

「同感です。公安には報せたのですか」

自ら規律を乱すようなことをしないとなれば、何らかの事故なり事件なりに巻き込まれた可能性が高い。それでなくとも、昨今の王都は再び窃盗団が暗躍し、お世辞にも治安が良いとは言えなかった。

「ジョージア、そいつはあくまでも最終手段だ」

「確かにそうですが、士官候補生は一般人であって士官ではありません。こんなときくらい…」

「そんなことはわかっておる。だが、士官候補生が士官でないのは、不祥事を起こせば簡単に首を切れるからだ。もし、士官の文字が新聞に載るような事態になったら、陛下にどう申し開きをするつもりだ」

軍も軍人も、それから士官候補生も広義の意味で国王の持ち物である。それ故、日頃の行いには最大限注意を払うよう、予科生の頃から耳にタコが出きる程言われ続けてきた。そして、それが出来なければ容赦なく切り捨てられて然りともまた言われていた。

「儂らのツラなぞいくら汚れたところでかまわない。何のために体面を保っているか忘れたわけではあるまい」

「申し訳ございません」

「下らんことを言っている暇があったら、手でも足でも動かせ」

「はっ!」

直立不動で敬礼を返す元教え子を見て、老教官がはあ、とため息をついた。

「お前さんとこにも似たような歳のがいるんだろう?気持ちはわからんでもないが立場を弁えろ。それに、公安に行ったところで、今夜はかきいれどきらしくて、とてもじゃないが相手をしてもらえそうもない」

「どういうことですか」

「実は公安まで偵察に行ってきたんだが、何やら大捕り物があったらしい」

「捕り物?窃盗団が捕まったんですか」

そうであれば、確かに子供ひとりに構っている場合ではない。

「恐らくな。儂はこのまま城下をもう一回りしてくる。お前は兵舎へ行き、ミルズの指示を仰げ」

「はっ!」

分かれ道に差し掛かり、タリウスが颯爽と踵を返そうとするのを、 老教官が待てと呼び止めた。

「わかっていると思うが、今夜のミルズは相当お冠だ。間違っても刺激するなよ」

「心得ました」

道理で普段温厚な老教官までピリピリしている筈だ。タリウスは俄に痛み出したこめかみを抑え、それから闇に向かって走り出した。


昨夜まで全然違うのを書いていたのですが、今朝になって同時多発的にネタが降ってきまして。もうひとつは、クリスマスネタ(しかもチビの頃)なので、流石に暑苦しいと思いこっちにしました。
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