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2021/5/30  5:53

鬼面仏心3  小説(再掲)

規則正しい靴音がこちらへと近付いてくる。途端に、意識が現実へと返った。こんな歩き方をする人間はここにはいない。だとすれば、答えはひとつだ。シェールの背中を冷たいものが伝った。

「とうさん」

無遠慮に扉が開かれ、反射的にシェールは立ち上がった。そして、父と目が合った瞬間、目の前を大きな手が掠めた。殴られる。シェールは咄嗟に身構えた。

「お父さん!!」

だが次の瞬間、教師が叫び、その手が止まった。

「手を、下ろしてください」

急激に心拍数が上がり、息苦しいくらいだった。

「もう連れて帰っても?」

「結構です」

呆然としてその場に立ち尽くすシェールに代わり、教師は机の上を手早く片付けた。そうしてまとめた荷物をこちらへ寄越した。

「先生」

教師に何か言わなければと思うも言葉が出てこない。それより何より父の視線が痛くて、これ以上はこの場にいられなかった。シェールは今にも張り裂けそうな心臓を抑え、物言わぬ父の背を追った。


部屋に帰り着くと、タリウスはすぐさまベッドに腰を下ろした。そして、言葉を発する代わりに、パシンとその膝を打った。シェールはピクッと身を縮めた。

「とっとと来い」

有無を言わさぬ雰囲気に、シェールはすぐさま父の膝に身体を預けた。そうしていつものようにお尻を剥かれながら、何かが心に引っ掛かった。だが、それも最初の一打を受けるまでの話だ。

「やっ!うわぁ!」

初めから手加減なしに、バチンバチンと重い平手が襲ってくる。全く心の準備が出来ていない。シェールは、開始早々音を上げそうになった。

「痛ったい!!」

その後も父の手は、間髪入れずにシェールを襲った。それは差し詰め壊れた機械のように、執拗に終わりなき打擲を続ける。

「ごめんなさい!」

シェールは堪え切れずに、謝罪の言葉を叫んだ。

「何のごめんなさいだ」

「へ?」

「やってもいないことをやったと言ったことか」

「えぇ?!し、知ってたの?」

シェールはうつ伏せのまま、ガバッと起き上がった。上体をひねって仰ぎ見た父は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

「親を舐めるな」

「じゃあ、何でさっき学校で…」

あのとき、教師が止めに入らなければ、父に横っ面を張られていた。

「嘘をつくからだ」

「ああ、そっちか」

「だいたい、本当にカンニングなんぞしようものなら、こんなもので済まされるわけがないだろう」

「だよね、そうだと思った」

それが先程から感じている違和感の正体だろうか。シェールはふうと息を吐き、それから再びお仕置きを受ける体勢に戻った。

「いっ!」

「立ちなさい」

バチンと仕上げの一発をもらい、シェールは解放された。

「良いことをしたと思っているのか」

許可を得てお尻をしまっていると、唐突に訊かれた。シェールは答えない。

「正しいことをしたと胸を張って言えるのか」

「そんなこと言うつもりはない。言うつもりはないけど、でも困ってたから」

ほっとけなかったんだ、そう言うシェールはそれこそ困り果てていた。

「ただ、とうさんに嘘つきたくないとは思ってて、だからそれが解消されたんなら、もう良いかなって。間違ってるかな」

「間違っている」

「そりゃとうさんは、そんなことしないだろうけど。でも僕はそうしたかったんだ。だって、本当に困ってたから」

「話にならないな」

タリウスは吐き捨てるように言った。

「人にやさしくするのは良い。だが、そのやさしさは誰のためだ」

「誰って…」

「自分のためじゃないのか?」

「そんなことない!」

何が悲しくて、自分のために他人の罪を被ったりすると言うのだ。シェールは全力で否定した。

「本当にそう言い切れるのか。お前が庇ったことで、確かに一時的には相手は救われたように思ったかもしれない。だが、そのせいで後々どんなことが起きる。よく考えてみろ」

言うだけ言うと、タリウスは立ち上がり、戸口へ向かった。

「どこに行くの?」

「仕事に戻る」

父の言葉にシェールはハッとした。几帳面な父は、帰宅後真っ先に着替えるのが常だ。だが、今日の父は未だ軍装を解いていない。これこそが初めに感じた違和感の正体である。

「ごめんなさい、とうさん。忙しいのに、こんなことになって」

「お前のために費やす時間は惜しくない。だが、そうだな。どうせならもう少し建設的なことに使いたい」

こんなときでもやはりやさしい父の言葉に、チクリと胸が痛んだ。

「行ってくる。遅くなるかもしれないから、先に寝ていなさい」

「はい」

凛とした背中を見送りながら、心のなかがざわざわと騒がしくなるのを感じた。


ストックがなくなったので、ここからカメ更新になります。あしからず。

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2021/6/3  8:13

投稿者:そら

2021/6/3 2:48の方
ありがとうございます!今回のお仕置きシーンは、まさに流れるように展開するイメージで書きました。シェールは、タリウスの言うことには、もはや条件反射的に従ってしまうっていう。
書いていてかなり楽しかったので、気に入っていただいてとても嬉しいです♡

2021/6/3  8:05

投稿者:そら

2021/5/30 13:40の方
ですよね。シェールはそんなことしないと、タリウスもお友だちもわかっているのに、本人わかんないっていう。
フツーにカンニングするより遥かにめんどくさい展開になっていますが、もうちょいお付き合いください。

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