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2021/5/29  6:39

鬼面仏心2  小説(再掲)

人気のない教室の隅で、シェールは便箋とにらめっこをしていた。作文のお題は、ずばり反省文である。

頭を掻きむしりつつ、どうにかこうにか二三言葉を書き連ねたところで、ペンを握る手が止まる。それから、今書いたばかりの文字をぐしゃぐしゃに書き潰し、更には便箋ごと丸めて放った。

机の上には、同じような紙屑が既にいくつも放置されている。便箋は高級品だ。こんな使い方が許されるわけがない。ましてやこんなときだ。考えたら、ズキリと心臓が音を立てた。

シェールは深いため息を吐いた。


話は少し前まで遡る。

今日は算数の試験だった。以前は算数そのものを苦手にしていたシェールも、周囲の導きや本人の努力の介あって、少しずつ意識が変わり、最近では問題を解くことを面白いとすら思えるようになった。

それ故、試験が始まっても、彼は少しも苦痛を感じることなく、むしろスラスラと流れるように問題を解き進めた。

事件は試験中盤、ほんの少し意識が脇にずれたときに起きた。

何者かの視線を感じ、シェールが目を上げると、隣の席の友人が身を乗り出して答案を覗き込んでいた。シェールは驚いて、思わず声を上げそうになった。

「ちょっとだけ見せて」

「ダメだってば」

小声で制するも、隣人はなおも答案を盗み見ては、手元の答案に写し込んでいく。

「ちょっと!やめてってば」

「あと少し」

「は?ちょっと、もう…」

シェールが思わず腰を浮かせたところで、パッと答案が遠ざかった。

「え…?」

慌てて答案の行方を追うと、教師が怖い顔をしてこちらを見ていた。手には作成途中の答案がある。

「二人とも外に出なさい。早く」

教師は隣人の答案をも手に取り、二人に退出を迫る。シェールは呆然として答案のなくなった机を凝視した。

「頼む!シェールが見たことにして」

「は?」

「親にバレたら殺される」

「そんなのうちだって一緒だよ」

むしろ、こちらのほうが事態は深刻である。なんせ我が家には鬼が棲んでいるのだ。

「本当お願い。何でもするから」

あろうことか友人は泣いていた。
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