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2021/5/16  14:37

先見之明5  小説

「持ち矢十本のうち、より多く的に当てた者を勝ちとする。なお、同数の場合は、より中心部に近い位置にあるほうを勝ちとする」

教官が淡々とルールを説明するのを、少年二人が緊張した面持ちで聞いていた。特にミゼットの隣からは、そわそわと落ち着かない様子が伝わってくる。

「どうしたの?」

「勝負だなんて、自分聞いてなくて。あいつのうちは代々軍人だし、弓術だって昔から習ってるはずです。自分なんか到底…」

「余計なことは考えないで。あなたはただひたすら、目の前の的を射抜けば良い」


教官の号令で、二人は同時に矢を放った。矢は二本とも的を捉えた。精度の差こそあれど。

その後も二投、三投と続いて矢が放たれるが、今のところどちらも的を失することはない。だが、回を追うごとに両者の力量の差が顕著になっていく。

「すいません」

ミゼットのすぐ横から発射された矢は、本来の軌道を外れ、的の縁すれすれに刺さった。

疲労から姿勢が崩れてきている。ミゼットは思わず口を開きそうになるが、寸でのところで飲み下した。ここで何らかの助言を与えれば、相手は反則と捉えるだろう。苦し紛れに、目線を上げるよう顎をしゃくるのが精々だ。

そして迎えた最後の一投は、ここへ来て初めてど真ん中に命中した。その直後、辺りにどよめきが起こる。

「十対九で勝者、バーディ」

教官が無機質に勝負の終わりを告げた。

「嘘だろ…」

少年、ヘクター=バーディは、その段になって初めて隣の的に目を向けた。的の中心部には九本の矢が突き刺さり、そして地面には矢が一本落ちていた。

「ご苦労様。練習の邪魔して悪かったわね」

「いえ、こちらこそありがとうございました」

ヘクターは一礼して、元の位置へ下がった。


「なかなか良いものを見せてもらったぞ」

レグラスが教官と談笑していると、背後から視線を感じだ。

「申し訳ありません」

敗者である。まさかの展開に弓を握る手が震えている。

「謝ることはない。大した腕前だ。俺の見込んだとおりな」

「でも…」

「明日、同じことをすれば必ずお前が勝つだろう。つまり、惜しむべきは、ここだ」

レグラスは動揺する少年の胸に自身の手を押し当てた。少年の顔が悔しそうに歪む。

「何、時間はまだある。ここにいるうちに山ほど失敗しろ。挫折を知らない者ほど使えない奴はいない」

少年ははっとして視線を上げた。先程までは恐ろしくて直視出来なかった瞳が、にやりと笑った。

「あの女が良い例だ。さっきそこで聞いたんだが、昔あいつは万年どべだったらしい。それが今じゃ城の内側にいる。全く笑い話にもなりゃしない」

狂戦士が豪快に笑うのを横目に、ミゼットは大きな溜め息を吐いた。

「お前も精々精進することだ」

去り際に少年の肩をバシバシとはたき、レグラスが戻って来る。

「相変わらず悪運が強いな。まさか本当にお前の言ったとおりになるとは」

「運の良さと気概だけでここまで参りました」

レグラスはふんと鼻で笑い、それからミゼットの顔を間近に覗き込んだ。

「お前は戦場にいるほうが似合っている。戻ってこい、モリスン。お前のその目が必要だ」

レグラスのいつになく真剣な目付きに、心臓が激しく脈打った。

「ご命令とあらばいつでも」

「黙れ」

あくまで平生を装ったつもりだった。だが、それでも一瞬生まれた心の隙まで隠しきることは出来ない。

「期待しないで待つということが俺には出来ん。何故他人のものになった」

周囲の視線が痛い。しかし、そんなものは目の前の男が放つ圧に比べれば、ないも同じだ。

「結婚したいと思ったからです。他に何か必要でしょうか」

「さあな」

「レグラス様」

「俺には一生わからない質問だ。軍学の宿題以上にな」

レグラスは言うだけ言うと、すぐさまこちらに背を向け、一歩を歩み出した。かつて、どれだけ欲しても手に入らなかったもの、この男の賞賛が、目の前を通過していく。このまま行かせるのはあまりに口惜しい。

「二年、お待ちいただけますか」

唐突に発した台詞に、ぴたりと歩みが止まった。

「その二年で何が変わる」

「部下を育てております。年若いですが、私より従順で御しやすい筈です。何より私が選びました」

「そんなに待てるか。一年で寄越せ」

「それでは、かつてのわたくしのようにご面倒をお掛けすることに。それでも」

「一年半だ。それ以上は待てん」

再びレグラスの背が遠ざかる。

「御意」

遠ざかる背中に向け、ミゼットは最敬礼した。


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2021/6/3  7:00

投稿者:そら

2021/5/30 13:33の方
ねえさんは、ようやくレグラスに認められて、二つ返事で付いて行きたい気持ちだけど、そうもいかなくて。ただこのまま諦めきれなくて、何とか爪痕を残したくて、ダルトンで良いや、みたいな。考えるまでもなくヒドイ話ですよね…。
そう!基本的なことはジョージアせんせが叩き込んでくれたので、あとは自分(ミゼット)の下でやっていけるなら、レグラスんとこでも大丈夫かな?みたいに思っているのかと。従順で、御しやすいし。

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