2021/3/15 11:41
カーラさん 小説
春ですね。私は春が、特に別れの季節である三月が、六月に次いであまり得意ではありません。何だろう、ふわふわと暖かくなって嬉しい反面、無性に不安を掻き立てられるとでも言いましょうか。昔から心が騒がしくなるのです。
まあ、それだけ淋しいと思えるくらい、毎年良い出逢いをいただいている、そう思うことにします。
さてさて、新作は二作続けて新婚さん話でした。
ここ最近、記憶力が低下しているのか、パフォーマンス力が落ちていて、思い付いた先から活字にしていかないと忘れてしまい、ちまちましか書けなくなるようです。
今回は(「覚醒」は特に)途中でいろいろ余裕がなくなってしまい、アウトプットを後に回したら、いざ書く段になって言葉が逃げて行った後でした。
たぶん、当初はあんな話ではなかったと思うのですが、タリウスがしあわせならもうそれで良し。カワイイ妻子に癒されて、また頑張っていただきたい。
いや、もうね、職場が本当ヤバイ。特にここ二年は、自分の立ち位置や過去のしがらみもあって、もろもろ殺して随分尽くしてきたけれど。それにしたって、限界超えてます…
ヘロヘロになった私を見て、「そらさん荷物多過ぎ。余計なもん下ろしたら?」って、一際デカイ荷物丸投げしてきた本人に言われた日には………働き方変えようかなと本気で思案中。うん、変えるわ。
閑話休題。以下、短編(掌編?)です。本当は拍手SSにしようと思って昨夜書いていたんですが、さすがに長過ぎたのでここに。
アポ無しオバサン再び。
「ごめんください」
シェールが裏庭で素振りをしていると、背中から品の良い声が聞こえた。
「カーラ=ハリソンさんはいらっしゃるかしら」
「えーと、ここには住んでないと思います」
模擬剣を下ろし、シェールは声の主に向かって答えた。今現在、ここに住んでいるのは、自分たち父子とそのお隣だけである。時折、短期滞在客がいることもあるが、それでも女性客は久しく見ていなかった。
「女将さん、ハリソンさんはどこかに越されたの?」
「え?女将さん?おばちゃんのこと?」
自分はもちろん、父もユリアも女将を名前で呼ぶ習慣がないため、シェールは彼女のフルネームを知る機会がなかった。俄には信じられない話である。
「おばちゃんならいます。いますけど、でも今は、えーと、寄合?の会合でいません。組合の集まりみたいで」
言っている本人もよくわからないのだが、誰かに聞かれたらそう答えるよう女将から言いつかっていた。たぶん嘘だと、シェールは直感的に思っていたが。
「そう。では、ジョージアさんはいらっしゃる?」
「とうさんは出掛けています。たぶん、おねえちゃんも一緒だと思います」
だからこそ、シェールはこうしてひとり留守番を任されているのだ。
「ユリアのこと?」
「そうですけど、あの…」
シェールは改めて客人に目を向けた。客人は身なりが良く、立ち振舞いも優雅で、細身だが貫禄があった。
「ああ、ごめんなさい。私はリードソン。ユリアのその…母親…よ」
「へ?」
シェールは目をぱちくりさせ、客人の顔を凝視し、それからおっかなびっくり彼女の足元に視線を移した。
「えーと、あの足がありますけど…」
「足?ああ、別にお化けじゃないわよ。安心してちょうだい」
「あ、えっと、その、ごめんなさい。いきなりオバケと間違えるとか、本当にダメですよね。ごめんなさい」
シェールは慌てふためいて、自らの非礼を詫びた。初対面の相手に対して、完全なるマナー違反だ。父が聞いたら、鉄拳制裁ならぬ、平手による制裁を受けるに違いない。
「良いのよ。あの娘が、母親は死んだと言ったのでしょう。それもまた、事実だから」
客人の顔が曇るのをシェールは見逃さなかった。
「もしかして、二人いますか?」
「二人?」
「おねえちゃんには、お母さんが二人いるんですよね。違いますか?」
「有り体に言えば、そういうことになるわね。でも、どうして?」
「僕も同じで、とうさんが二人います。ひとりは本当のパパで、随分前に亡くなっています。もうひとりは、僕の今のとうさんです」
「そう」
「事情をよく知らないひとは、そのあたりのことがこんがらがっちゃうんです」
言いながら、シェールは苦笑いを浮かべた。
「聞くほうにしてみたら、それが初めてだけど、こっちはもう何回も同じ話をしているから、なんか段々めんどうになっちゃって、あえて説明しなかったりもして。おねえちゃんもそうだったのかも。だから、そんなに気にしなくて良いって思います」
「どうもありがとう」
客人は相好を崩し、シェールに惜しみない笑顔を向けた。
「あなたはやさしいのね。それに、相手のことをちゃんと考えてあげられて、とても賢いわ」
「そんなこと…」
「あなたの家族やまわりの大人は、きっとやさしい方ばかりなのね。突然、お邪魔してごめんなさい。また、来るわ」
「え?でも、まだ…」
「良いのよ、もう用は済んだから。お話出来てとても楽しかった」
朗らかに微笑む客人を見ながら、シェールは先程から頭にあった台詞を口にした。
「おねえちゃんの本当のお母さんかと思いました。違うって聞いたのに、変ですけど。笑った顔がそっくりで」
「本当?おかしいわね」
客人は控えめに、だが嬉しそうに笑った。
〜Fin〜
そう、おばちゃんのお名前はカーラでした。ようやく、しかもこんなところで、お披露目です。
14
まあ、それだけ淋しいと思えるくらい、毎年良い出逢いをいただいている、そう思うことにします。
さてさて、新作は二作続けて新婚さん話でした。
ここ最近、記憶力が低下しているのか、パフォーマンス力が落ちていて、思い付いた先から活字にしていかないと忘れてしまい、ちまちましか書けなくなるようです。
今回は(「覚醒」は特に)途中でいろいろ余裕がなくなってしまい、アウトプットを後に回したら、いざ書く段になって言葉が逃げて行った後でした。
たぶん、当初はあんな話ではなかったと思うのですが、タリウスがしあわせならもうそれで良し。カワイイ妻子に癒されて、また頑張っていただきたい。
いや、もうね、職場が本当ヤバイ。特にここ二年は、自分の立ち位置や過去のしがらみもあって、もろもろ殺して随分尽くしてきたけれど。それにしたって、限界超えてます…
ヘロヘロになった私を見て、「そらさん荷物多過ぎ。余計なもん下ろしたら?」って、一際デカイ荷物丸投げしてきた本人に言われた日には………働き方変えようかなと本気で思案中。うん、変えるわ。
閑話休題。以下、短編(掌編?)です。本当は拍手SSにしようと思って昨夜書いていたんですが、さすがに長過ぎたのでここに。
アポ無しオバサン再び。
「ごめんください」
シェールが裏庭で素振りをしていると、背中から品の良い声が聞こえた。
「カーラ=ハリソンさんはいらっしゃるかしら」
「えーと、ここには住んでないと思います」
模擬剣を下ろし、シェールは声の主に向かって答えた。今現在、ここに住んでいるのは、自分たち父子とそのお隣だけである。時折、短期滞在客がいることもあるが、それでも女性客は久しく見ていなかった。
「女将さん、ハリソンさんはどこかに越されたの?」
「え?女将さん?おばちゃんのこと?」
自分はもちろん、父もユリアも女将を名前で呼ぶ習慣がないため、シェールは彼女のフルネームを知る機会がなかった。俄には信じられない話である。
「おばちゃんならいます。いますけど、でも今は、えーと、寄合?の会合でいません。組合の集まりみたいで」
言っている本人もよくわからないのだが、誰かに聞かれたらそう答えるよう女将から言いつかっていた。たぶん嘘だと、シェールは直感的に思っていたが。
「そう。では、ジョージアさんはいらっしゃる?」
「とうさんは出掛けています。たぶん、おねえちゃんも一緒だと思います」
だからこそ、シェールはこうしてひとり留守番を任されているのだ。
「ユリアのこと?」
「そうですけど、あの…」
シェールは改めて客人に目を向けた。客人は身なりが良く、立ち振舞いも優雅で、細身だが貫禄があった。
「ああ、ごめんなさい。私はリードソン。ユリアのその…母親…よ」
「へ?」
シェールは目をぱちくりさせ、客人の顔を凝視し、それからおっかなびっくり彼女の足元に視線を移した。
「えーと、あの足がありますけど…」
「足?ああ、別にお化けじゃないわよ。安心してちょうだい」
「あ、えっと、その、ごめんなさい。いきなりオバケと間違えるとか、本当にダメですよね。ごめんなさい」
シェールは慌てふためいて、自らの非礼を詫びた。初対面の相手に対して、完全なるマナー違反だ。父が聞いたら、鉄拳制裁ならぬ、平手による制裁を受けるに違いない。
「良いのよ。あの娘が、母親は死んだと言ったのでしょう。それもまた、事実だから」
客人の顔が曇るのをシェールは見逃さなかった。
「もしかして、二人いますか?」
「二人?」
「おねえちゃんには、お母さんが二人いるんですよね。違いますか?」
「有り体に言えば、そういうことになるわね。でも、どうして?」
「僕も同じで、とうさんが二人います。ひとりは本当のパパで、随分前に亡くなっています。もうひとりは、僕の今のとうさんです」
「そう」
「事情をよく知らないひとは、そのあたりのことがこんがらがっちゃうんです」
言いながら、シェールは苦笑いを浮かべた。
「聞くほうにしてみたら、それが初めてだけど、こっちはもう何回も同じ話をしているから、なんか段々めんどうになっちゃって、あえて説明しなかったりもして。おねえちゃんもそうだったのかも。だから、そんなに気にしなくて良いって思います」
「どうもありがとう」
客人は相好を崩し、シェールに惜しみない笑顔を向けた。
「あなたはやさしいのね。それに、相手のことをちゃんと考えてあげられて、とても賢いわ」
「そんなこと…」
「あなたの家族やまわりの大人は、きっとやさしい方ばかりなのね。突然、お邪魔してごめんなさい。また、来るわ」
「え?でも、まだ…」
「良いのよ、もう用は済んだから。お話出来てとても楽しかった」
朗らかに微笑む客人を見ながら、シェールは先程から頭にあった台詞を口にした。
「おねえちゃんの本当のお母さんかと思いました。違うって聞いたのに、変ですけど。笑った顔がそっくりで」
「本当?おかしいわね」
客人は控えめに、だが嬉しそうに笑った。
〜Fin〜
そう、おばちゃんのお名前はカーラでした。ようやく、しかもこんなところで、お披露目です。

2021/3/16 0:53
投稿者:そら
ありがとう!誰かにねぎらってもらうって純粋に嬉しいものですねΣ(ノд<)
そして、お仕事がお仕置に見えてしまう謎のビョーキ…