2021/3/11 14:35
【覚醒】2 小説
「それでは、前回のおさらいです。まずは問の一から、答えてください」
耳馴染みのある声が聞こえてきたところで、院長が足を止めた。タリウスもまたそれに倣う。
「正解です。それでは、続いて問の二です」
声の主は、自分の知っているそれと寸分違わず、涼やかに授業を行っていた。
「どうしましたか?問の二、答えてください」
「わ、わかりません」
蚊の鳴くような声が返されるのが、辛うじて聞き取れた。いつものユリアなら、某かの助け船を出すか、はたまた質問自体を変えるかする局面である。
「何故?」
だが、予想に反して、教師は冷ややかに問うた。
「つい先日も、同じような問題でつまずいていましたね。そのとき、次回までによくさらっておくよう命じた筈です。それから、こうも言いました。ひとりで手に負えなければ私のところへ来るようにと。でも、あなたは来なかった。つまりは、自分の力で理解したことになります。それなのに、答えられないのは何故ですか」
教師は、立て板に水の如くすらすら言葉を発した。表向きは、あくまで柔和な姿勢を崩していないが、一方で言葉では言い表せない圧をも感じた。恐らく、この状況でも彼女は笑っているに違いない。
「この時間はあなたひとりのものではありません。質問に答えなさい。今すぐに」
「すみません、先生。おさらいを…しませんでした」
「お話になりませんね。まるで時間泥棒だわ。学ぶ意志がないのなら、退席していただいて結構です」
立ちなさいと、教師は凄んだ。
「ごめんなさい、先生。今度は、必ず…」
少女の言葉が途中から嗚咽に変わった。
「結構です。ただし、約束を果たすまで、あなたの席は一番後ろです」
椅子を引く音がして、それから小さな足音がコツコツと床を鳴らした。
「待って。忘れ物よ」
教師の言葉に、ピタリと足音が止まった。
「板書も忘れずにね」
先程よりかいくらか角の取れた声だった。
「立ったまま石板に教科書では、どうしたって手が足らないでしょうに」
そう言う院長は呆れているようにも感心しているようにも思えた。タリウスは小さく吐息した。自分があの中のひとりなら、間違いなく胃を悪くしていると思った。
「もう充分です。そろそろ失礼します」
目下、絵に描いたような無気力(←どんなだ?)で、何をするにもひたすらスローペースです。
そして、オニのユリアにF/*な展開を期待された方がいらしたら、申し訳ない。彼女は人を叩きません。
5
耳馴染みのある声が聞こえてきたところで、院長が足を止めた。タリウスもまたそれに倣う。
「正解です。それでは、続いて問の二です」
声の主は、自分の知っているそれと寸分違わず、涼やかに授業を行っていた。
「どうしましたか?問の二、答えてください」
「わ、わかりません」
蚊の鳴くような声が返されるのが、辛うじて聞き取れた。いつものユリアなら、某かの助け船を出すか、はたまた質問自体を変えるかする局面である。
「何故?」
だが、予想に反して、教師は冷ややかに問うた。
「つい先日も、同じような問題でつまずいていましたね。そのとき、次回までによくさらっておくよう命じた筈です。それから、こうも言いました。ひとりで手に負えなければ私のところへ来るようにと。でも、あなたは来なかった。つまりは、自分の力で理解したことになります。それなのに、答えられないのは何故ですか」
教師は、立て板に水の如くすらすら言葉を発した。表向きは、あくまで柔和な姿勢を崩していないが、一方で言葉では言い表せない圧をも感じた。恐らく、この状況でも彼女は笑っているに違いない。
「この時間はあなたひとりのものではありません。質問に答えなさい。今すぐに」
「すみません、先生。おさらいを…しませんでした」
「お話になりませんね。まるで時間泥棒だわ。学ぶ意志がないのなら、退席していただいて結構です」
立ちなさいと、教師は凄んだ。
「ごめんなさい、先生。今度は、必ず…」
少女の言葉が途中から嗚咽に変わった。
「結構です。ただし、約束を果たすまで、あなたの席は一番後ろです」
椅子を引く音がして、それから小さな足音がコツコツと床を鳴らした。
「待って。忘れ物よ」
教師の言葉に、ピタリと足音が止まった。
「板書も忘れずにね」
先程よりかいくらか角の取れた声だった。
「立ったまま石板に教科書では、どうしたって手が足らないでしょうに」
そう言う院長は呆れているようにも感心しているようにも思えた。タリウスは小さく吐息した。自分があの中のひとりなら、間違いなく胃を悪くしていると思った。
「もう充分です。そろそろ失礼します」
目下、絵に描いたような無気力(←どんなだ?)で、何をするにもひたすらスローペースです。
そして、オニのユリアにF/*な展開を期待された方がいらしたら、申し訳ない。彼女は人を叩きません。
