ダラダラ中につきカメ更新 感想など、ちょろっとでも書き込んでいただけましたら泣いて喜びます🎵

2021/2/14  23:26

ジョージア先生の長い長い夜3.5(オマケ)  小説

クリフ=ドーンは思い詰めた面持ちで教官室の前に立っていた。

一体全体どうしてこんなことになってしまったのだろう。彼はここへ来て、これまでのことに想いを馳せていた。

つい数ヵ月前、自分は幸福の絶頂にいた。国内最難関と言われる中央士官学校に合格したのだ。それもその筈である。

だが、幸せなときはそう長くは続かなかった。彼は入校してすぐに、上には上がいることを知り、そしてまた、努力ではどうにもならないことがあると思い知らされた。

それからは、とにかく失敗だけはしないよう、ひたすら目立たぬよう、細心の注意を払って生きてきた。それが何故。

「開いている」

震える手でノックをすると、扉越しに無機質な声が返された。クリフは意を決してドアノブに手を掛けた。

「先生にお話したいことが、あります」

緊張に声が上ずった。教官は椅子に座ったまま、静かにこちらを見上げてきた。まるで自分がここに来ることを知っていたかのようだった。

「お前の知っていることを包み隠さず話せ。但し、今度は本当のことだけを言え」

教官と目が合ったが最後、逸らすことが出来なかった。

「昨日の夜、たまたま見てしまいました。その人は、風呂場から出てくるところでした」

「その人?」

「本科生…です。名前は…」

自分には血縁はもとより、親しくしている上級生もいない。通常なら知り得ない筈だが、クリフはその名を知っていた。

「アーサー=ウィルキンス」

「そう、です」

知らぬ人間などここにはいない。それは彼が常に首位の成績をおさめているからでも、類稀な運動神経をもっているからでもない。目をつけられたら終わりだからだ。

「ウィルキンスは風呂場で何を?」

「はっきりとはわかりません。ですが、ラサークたちが使っている時間だったので、驚いて二度見しました。そうしたら、呼び止められて、黙っているよう言われて」

そこでクリフが大きく息をした。

「端からそのつもりだったので、そう伝えましたが、信じられないと言われ………ました」

クリフが何事かを呟くが、声が震えてよく聞き取れない。

「何だ。何をされた?」

「く、くびを…」

強く握りしめた手がじわりと汗ばむ。

「首?」

教官が立ち上がり、机越しにクリフの襟元に手を伸ばした。首元には圧迫されたと思しき指の跡がうっすらと浮かんでいた。

「何故黙っていた」

「誰かに話したら、ここにいられなくすると言われて…」

「それで?」

「昨日はそれで終わりました。でも、今日になって、また風呂場に来るよう言われて、着替えを盗ってくるよう言われました。もちろん、最初は断りました。でも、断りきれなくて風呂場に入りました」

教官が吐息した。自分に失望したのだと思った。

「そうしたら奥から物音がして、見付かると思い、咄嗟にオーデンの制服を全部持って風呂場から飛び出しました。そのまま三階まで走って届けました。物凄く迷惑そうな顔をされましたが…」

その場に居合わせた別の本科生が、アーサー自身の洗濯物だと勘違いし、クリフはそれを良いことに無理矢理置いてきたのだ。

「お前が脅されていたということはわかった。報復を恐れたことも。だが、それでもどこかで引き返せた筈だ。それをしなかったのは何故だ」

クリフは答えない。代わりに教官からすっと目線をはずした。

「クリフ=ドーン!」

教官の厳しい声にクリフは再び視線を戻した。

「い、言うことを聞けば守ってやると、言われました。自分の他にも子飼いがいるようでしたし、それで…」

「本当に守ってもらえていたら、お前は今ここにはいない筈だ」

教官の言う通りだった。それ故、すぐには言葉が出てこない。

「オーデンの制服のことで怒らせたと思いました。それに、このままでは自分が犯人にされる、そう思いました。とにかく退校になるのだけはどうしても嫌で、ここに来ました」

「状況は理解した。だが、あの二人はどうだ。オーデンに何か落ち度があったか。それとも、お前はあいつらに恨みでもあるのか」

「あ、あの二人には何の恨みもありません。もちろん、落ち度だって…」

「何の落ち度もないのに、いわれのない辱しめを受けた挙げ句、オーデンにいたっては熱にうなされている。たとえお前の意思ではなかったにしろ、それがお前のしたことだ」

クリフが大きく目を見開く。

「申し訳ありません。オーデンにも、本当に悪いことをしたと思います」

「謝って済む問題か」

「違うと、思います」

教官は小さく溜め息を漏らし、それから執務机に掛かっていた藤鞭を手に取った。

「机に手を付け」

クリフは促されるまま、罰を受ける姿勢になった。初めにこの部屋の前に立ったときから覚悟はしていた。

「いっ!!」

だが、予想を遥かに上回る痛みに、すぐさま声が漏れた。まるで身体が切り裂かれるようだった。

ピシッという僅かな音に似合わず、鋭く強烈な痛みに、回を追うごとに身体が逃げた。きちんと起立しなければならないと頭ではわかっているが、ひとつ打たれる度に、思考がバラバラになった。

「動くな!」

教官は容赦ない叱責に合わせ、激しく身体を打擲(ちょうちゃく)する。いつの間にかクリフの目から涙が溢れだし、幾筋も頬を流れていった。

「お前の言っていることがすべて出鱈目の可能性だってある」

意地の悪い台詞に心臓がドクンと音を立てた。

「恐らくあいつはすべてを否定するだろう。どうやって証明するつもりだ」

「それは…多分出来ません」

「出来ない?」

「でも、それでも良いです。自分が盗ったことに変わりはないですし、退校にさえならなければ、自分のせいでもう良いです」

「呆れたな」

教官は鞭を下ろし、クリフを解放した。

「教官を恐れるのも良いが、ときには頼れ。少なくともあいつよりかは守ってやれる筈だ」

「先生…」

「しばらくそこで反省していろ」

教官は苦笑いをひとつし、それから顎をしゃくった。





やっと終わった!!何気にオマケが一番時間掛かったり。
思った以上に達成感があるので、しばらく休憩します

読後の感想とかリクエストとか、何かございましたら、ここでもweb拍手でもメールでも。

メールは字数制限があるようなので、長文のときは、お手数ですが何度かに分割してお送りください。

14



2021/2/17  23:21

投稿者:そら

ともろーさま
ありがとうございます!
めちゃくちゃ一生懸命ケインの恐怖?を思い出しながら書いたので嬉しいです。クリフ、いろんな意味で頑張りました。

2021/2/16  23:25

投稿者:ともろー

お疲れ様でした!
オマケが一番好みのお仕置きシーンでした!ドーンくんおバカだけど、えらい!好きです✨

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ