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2021/2/13  0:50

ジョージア先生の長い長い夜5  小説


翌朝、ゼインは一連の騒ぎについて部下から報告を受けていた。

「一週間の謹慎?」

タリウスがクリフ=ドーンの処分について言及したときのことだ。ゼインは唖然として、部下の言葉をそのまま返した。

「その一週間も、出来れば訓練には出させたいと考えています」

「如何に脅されていたとは言え、窃盗の実行犯だ。それではいくらなんでも甘過ぎる」

冗談じゃないと即座に却下するが、部下もまた引かなかった。

「確かに先生のおっしゃる通りだとは思いますが、元を正せば、ウィルキンスの愚行に気付けなかった私の落ち度です。昨夜私からきつく指導し、本人も深く反省しています。どうか…」

「ジョージア」

平身低頭する部下を前に、ゼインはため息を吐いた。

「全く君は人が良いと言うか何と言うか。そんなことでは、いつぞや君にやった鬼を、返上してもらうことになるよ」

ほんの一瞬、部下の瞳孔が開くのをゼインは見逃さなかった。

「今、惜しそうな顔をしたね。いくら口ではいらないいらないと言っても、一度手に入れたものを取り上げられるのは、やはり不快に感じるか」

「いえ、そう言うわけでは。そもそも私は、オニに向いていないのかもしれません」

「私は向いていると?」

「そうですね、少なくとも私よりかは」

同じ質問を部下の教え子、例えばキール=ダルトンあたりにすれば、恐らくは同じことを答えるだろう。ゼインは堪えきれずにクスリと笑った。

「まあ良い。こちらの予科生については君に任せる。問題は、姦しい娘たちをどうやって黙らせるかだ」

「それならば、私が…」

「いいか、ジョージア。この世の中に、婦女子のおしゃべりほど恐ろしいものはない」

ゼインはそう言って、身震いした。


数日後、主任教官の執務室に黄色い歓声が上がった。

「まさかこんなに早くまたお会いできるなんて、感激です!」

「そう?」

ミゼット=ミルズである。今日は非番らしく、略式の常装に、長い黒髪は下ろしたままだ。

「本当はこちらからお伺いしたいと思っていたんです。でも、ジョージア先生が…」

「ジョージア教官がどうかした?」

「いえ、お会い出来たので、もう結構です。それより、今日はどうされたんですか」

「お見舞いよ」

「お見舞い、ですか?」

アグネスとイサベルが互いに顔を見合わせた。

「とんでもないことに巻き込まれたのでしょう。イサベル、風邪はもう良いの?」

「はい。ノーウッド先生から万病に効く薬をいただいたので、もうすっかり」

「何よそれ。怪しすぎる。本当に大丈夫なの?」

「だ、大丈夫ではないのですか?!」

「え?ま、まあ病は気からと言うし、元気になったのなら何よりよ」

不安げに顔色を変える少女を前に、ミゼットが慌てて執り成した。

「そんなことより、二人に受け取ってもらいたいものがあるのよ。気に入ってもらえると良いけれど」

言いながら、ミゼットが手のひらほどのサイズの包みを二つ、テーブルに乗せた。二人は、頭にはてなマークを浮かべながら包みを開いた。

「え?」

「あ!」

それから、またしても顔を見合わせた。どちらも頬を上気させている。

「どこの馬の骨ともわからない男に触られたパンツなんて、気持ち悪くて使えないでしょう。そうかと言って、おいそれと買いには出られないでしょうし。言っておくけど、最高級品よ」

「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」

満面の笑みで包みを覗き込む後輩たちに、ミゼットもまた上機嫌である。

「良いのよ、私も昔同じようなことをされたことがあるから、気持ちはわかるもの。でも、もう済んだ話。いろいろあったけれど、私は今でもここが好きだし、卒校したことを誇りに思ってる」

二人はミゼットが話すのをコクコクと頷きながら聞いていた。

「だから、妙な噂が立つのは本意ではないの。嫌な思いをさせた上でこんなことを言うのは心苦しいのだけど、今回のことは墓場まで持っていってくれない?」

「それはもちろん、かまいません」

「私もそれで大丈夫です」

いくらこちらに落ち度がないとは言え、自分たちにとっても不名誉な話である。その上犯人は捕まり、相応の処分を受けたと聞けば、あえて吹聴するような話ではない。

「良かった!下着が足らなかったらいくらでも買ってあげるから、遠慮しないで言って頂戴」

ミゼットはとびきりの笑顔を少女たちに向け、席を立った。


「そんな顔をするな」

「私は別に…」

一方、こちらは執務室前の廊下である。

「名誉のためだ。致し方ない。だいたいいくらでも買ってやるのは妻ではなく、私だ」

ぼやきが止まらない上官と、いつもに増して仏頂面の部下が扉の前で聞き耳を立てていた。

「あ、そうそう。ノーウッド先生には気を付けなさい」

そろそろ引き上げようというところで、俄に気になる台詞が耳に入った。

「どさくさに紛れて、平気な顔してお尻を触ってきたりするから」

「えぇ?!」

「ホントですか!!」

たちまち少女たちの目が点になる。

「やさしそうに見えて一番厄介だから、絶対に気を許しちゃだめよ。あの人はね、中央士官の闇よ」

良いわね、そう念押ししてミゼットは扉に手を掛けた。外にいた男ふたりが慌てて廊下に身を潜める。

「あの老害が…」

沸々と静かに沸騰する上官から、タリウスはそっと離れた。これ以上の厄介事はもう御免である。


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2021/2/14  23:50

投稿者:そら

2021/2/14 1:43の方
こちらこそありがとうございました!
お楽しみいただけて良かったです!

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