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2021/2/7  1:50

ジョージア先生の長い長い夜2  小説

教官の放つただならぬ気配に、その晩の消灯点呼は、まさに一触即発だった。

タリウスとの付き合いが長い上級生にはわかっているのだ。怒りに任せて怒鳴り散らしている分にはまだ良い。真に恐ろしいのは、鬼教官が口を閉ざしたときである。

「連絡は以上だ。予科生はこの場に残れ。監督生二人も同様だ」

本科生が静かに退出していく。ひりついた空気から早々に解放され、どの顔にも安堵が窺えた。


「これが客人に対するお前たちのもてなしか」

上級生の姿が見えなくなると、教官は吐き捨てるように言った。彼の視線は予科生の最後尾に注がれている。昨日までその場所には北部士官学校から来た予科生二名がいた。

「昨日はラサーク、それからつい今し方、オーデンの着替えが盗まれた」

信じ難い台詞に、それまで沈黙していた予科生たちがざわつき始めた。監督生二人も互いに顔を見合わせる。

「黙れ!!」

だが、教官の怒号に、たちまち水を打ったように静まり返る。

「オーデンは風呂上がりに着替えを奪われ、風邪を引いて寝込んでいる。もしもお前たちに一欠片(ひとかけら)でも良心が残っているなら、やった者は直ちに名乗り出ろ」

教官の刺すような視線に怯えながらも、少年たちは微動だにしない。

「ならば、これからひとりずつ事情を聞く。監督生はこの場に残り予科生を監視しろ。一切の私語を許さず、離席する際には必ずどちらかが付き添え。良いな」

従順な返事が二人分返された。


「該当の時間、お前はどこで何をしていた」

それから宣言どおり、予科生をひとりずつ教官室に呼んだ。

「資料室で課題をやっていました」

「お前はどの辺りにいた。書け」

タリウスは手元から紙を一枚つまみ上げると、少年のほうへ押し出した。紙は白紙だった。

「ここが入口だとして、この辺りです」

「他の奴は?それぞれいた位置に名前を書け」

「えーと、確か…」

少年は記憶を辿りながら、ぎこちない手付きで級友たちの名前を紙に落とし込んでいく。

「だいたいこんな感じだったと思います」

「わかった。顔を上げろ」

少年はペンをおいて、教官に向き直った。

「何か言いたいことはあるか」

「いいえ、ありません」

不安げにこちらを見返してくる少年を教官が一瞥する。

「良し、下がれ。次」

タリウスは少年を下がらせ、今度はまた別の少年と向かい合う。そして、先程と同じ質問をした。

「ノーウッド先生のお部屋にいました」

「そこで何を?」

「本を入れ過ぎたとかで、棚が壊れたから修理するよう言われ、直していました」

「先生はずっとお前と一緒にいたのか」

「いえ、先生はすぐに部屋から出られました」

「なら、途中で誰かと会ったか」

「いえ」

少年の声が小さくなる。自然と瞬きの回数が増えた。

「で、でもずっとノーウッド先生のところにいました。棚も確かに直っています。先生、自分は疑われているんでしょうか」

「今の時点では全員を疑っている」

「でも、自分は本当に…」

「お前が本当に潔白だと言うなら、堂々としていれば良い。他に何か言いたいことが?」

「いいえ」

少年は真っ向からこちらを見つめ返してきた。

「良し。次」

少年が席を立ち、入れ替わりにまた別の少年が入室して来る。

「該当の時間、お前はどこで何をしていた」

「自分の部屋にいました」

「他の者は?誰か部屋にいたか」

「チェイスとカヴァナーがいました」

「二人は何をしていた」

「チェイスは、確か課題をやっていて、カヴァナーは寝ていました」

「お前は?」

「え?」

少年がピクリと身を固くする。

「お前は何をしていた」

「何って、特に何も…何もしていませんでした」

「途中で誰か席を立ったか」

「わかりません」

「わからない?」

「ずっと見ていたわけでは、ないので」

少年の視線が忙しなく動き、定まらない。

「クリフ=ドーン、顔を上げろ。何か言うべきことはあるか」

少年の視線がキョロキョロと行きつ戻りつを繰り返し、最終的には教官から視線を逸らした。

「何も、ありません」

「もう良い。下がれ」

少年が一礼して踵を返した。

「ドーン、本当は誰がやったのか知っているのでは?」

「い、いえ。自分は何も…」

去り際に背中へ声を掛けると、やはり背中越しに返事が返された。

「失礼します」

クリフは一応こちらを振り返りはしたが、最後までその視線を捉えることは叶わなかった。タリウスが手元の名表に印を付けた。

「次」

ややあって、また別の少年が入室する。タリウスが同じ質問を繰り返す。

「資料室にいました」

「自分がいた場所を書け」

教官が自分の手元から紙をつまみ取り、少年の前に置いた。白紙を前に少年の動きが止まる。

「どうした。お前は資料室のどのあたりにいたんだ」

「覚えて、いません。いろいろなところにいたので、特にどこというわけでは」

「なら、他の者はどうだ」

「よく覚えて…」

「一人くらいは思い出せるだろう。誰がいた?そいつはどこで何をしていた」

少年は白紙に視線を落としたまま、動かない。

「………いませんでした」

「何?」

「すいませんでした!」

少年が立ち上がり、勢い良く頭を下げた。

「お前がやったのか」

「ち、違います!」

「ならば何故謝る!」

「ほ、本当は資料室にはいませんでした」

「どういうことだ!お前はどこで何をしていた!」

教官が机を叩いた。机上の筆記具がガシャンと音を立てる。

「自分の部屋にいました。けど、ひとりだったので、疑われるのが怖くて」

「馬鹿者!!」

今度は勢い良く机を蹴り飛ばした。少年が驚いて後ろに飛び退くが、すぐさま教官が間合いを詰めたので、両者の距離は変わらない。

「申し訳ありません!でも、自分は盗っていません」

「目の前で嘘を吐くような奴の言うことを何故信じなくてはならない!」

「すいません!!でも…」

「お前は先週、ラサークとやりあい、そのことで罰も受けた。彼女たちを恨んでいてもおかしくない」

「違…っ!」

「何が違う!!」

教官は少年に向かいカツカツと歩み寄り、胸ぐらを掴んだ。

「待って…ください」

少年の声が恐怖に震える。恐ろしい形相で睨み付けられ、目が離せなかった。

「確かに、嘘をついた自分が悪いですし、ラサークと喧嘩もしました。ですが、自分はそこまで卑劣なことはしていません。本当です」

「言いたいことはそれだけか」

少年が震えながら首をたてに振ると、教官の手が乱暴に離された。

「二度と俺に嘘をつくな。下がれ」

「せんせい!!」

「下がれ!」

少年を無理やり部屋から追い出し、タリウスはため息をこぼした。

「次」

教官の声に、また別の少年が入室して来る。タリウスが同じ質問を繰り返す。

「部屋で課題をやっていました」

「他には誰がいた」

「ドーンとカヴァナーです」

「二人は何を?」

「ドーンは本を読んでいて、カヴァナーはベッドにいました」

「その間、席を立った者はいるか」

「ドーンが一瞬どこかに行きました」

「一瞬?」

「はい。でもすぐに戻ったので、多分用を足しに行ったんだと思います」

「変わった様子はなかったか」

「特には。手ぶらでしたし、あいつには、ドーンにはそんな大それたことは出来ないと思います」

確かに、クリフ=ドーンはノミの心臓と呼ばれるくらい臆病なことで有名だった。
8



2021/2/14  0:02

投稿者:そら

Rさま
いや〜もう、ごめんなさい〜!としか言いようがない。ノーウッド先生がお好きだとお聞きしたときから、エロジジのくだり書きにくいな…とは思っていたのですが。結局書くっていう。ほら、時代ってことで(謎)。
そして、Rさまの読みがいい線いってて驚きました。クリフの罰は………

2021/2/13  23:56

投稿者:そら

2021/2/7 4:51の方
タリウス、終始ご機嫌最悪でしたね。いやはや、お気の毒さまです。
一応エピローグまで書き終わりましたが、最後にクリフのパートが残っているので、あともうちょいお付き合いくださいませ。

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