2020/12/15 0:45
続石の記憶7.5 小説
その日、ユリアが目を覚ましたのは夜も更けてからだった。
「タリウス」
暗闇の中、不安と心細さにまず口をついて出たのは想い人の名前だった。
「気が付きましたか」
声は殊の外近くから聞こえた。利き手に意識を移すと、包帯の上から体温を感じた。どうやらずっとタリウスが握っていてくれたようである。
「気分は?」
「頭がぼーっとしますが、悪くはありません」
「水を飲みますか」
「はい」
タリウスはユリアのすぐ隣に腰掛け、彼女が起き上がるのに手を貸した。そうして自分にもたれさせたまま、口元まで水筒を運んでやった。
「ずっと私の傍に?」
「ああ」
「すみません、ご心配をお掛けして。お疲れでしょう。ベッドで休んでください」
「そうしたいのは山々ですが、そうもいかなくて」
ほらと促され、目を凝らすと、隣のベッドの真ん中でシェールが大の字で寝ているのが見えた。
「あらら」
「こいつが小さい頃には時々一緒に、と言うか、夜中に潜り込まれて一緒に寝たりもしましたが、流石にもう手狭ですね」
「シェールくん、頼もしくなりましたね。私、お陰で痩せ我慢出来ました」
「はい?」
「シェールくんがいなかったら、きっと怖くて泣き叫んでいたと思います。自分がどうなってしまうのか、正直怖かったですし、それに刺された直後は結構痛かったんですよね」
再び恐怖が戻ってきたのか、ユリアの目からポロリと涙が落ちた。
「もう大丈夫です」
大きな手が涙をぬぐい、そのままふわりと髪を撫でてくれた。
「タリウス」
それ以上は我慢が効かなくて、ユリアはタリウスの胸に抱き付いた。
「命に別状はないと医師が言っていました。それから、朝には動けるようになるとも。だから、もう心配要らない」
「本当にお医者様を?大変だったでしょう」
ユリアは一旦タリウスから離れると、今度は間近に顔を覗き込んできた。
「あなたの偉大さを実感しました」
「そんなこと…」
「いえ、シェールを救っていただいたことと言い、本当に感謝しています」
「怒らないんですか?散々無茶をしないよう言われていたのに」
「怒れるわけがないでしょう」
「でも」
「わかりました。あとで説教くらいはします。いずれにしても回復してからだ」
「タリウスのこわーいお説教も生きてからこそ聞けるというものです」
「そんなことで生を実感しないでください」
「だって…」
再び反論しかけるのを腕ずくで阻止される。そうして痛いほどに抱きしめられながら、ユリアはかつてないほどの安心感を得た。
とりま昨日の取りこぼしをば!
7
「タリウス」
暗闇の中、不安と心細さにまず口をついて出たのは想い人の名前だった。
「気が付きましたか」
声は殊の外近くから聞こえた。利き手に意識を移すと、包帯の上から体温を感じた。どうやらずっとタリウスが握っていてくれたようである。
「気分は?」
「頭がぼーっとしますが、悪くはありません」
「水を飲みますか」
「はい」
タリウスはユリアのすぐ隣に腰掛け、彼女が起き上がるのに手を貸した。そうして自分にもたれさせたまま、口元まで水筒を運んでやった。
「ずっと私の傍に?」
「ああ」
「すみません、ご心配をお掛けして。お疲れでしょう。ベッドで休んでください」
「そうしたいのは山々ですが、そうもいかなくて」
ほらと促され、目を凝らすと、隣のベッドの真ん中でシェールが大の字で寝ているのが見えた。
「あらら」
「こいつが小さい頃には時々一緒に、と言うか、夜中に潜り込まれて一緒に寝たりもしましたが、流石にもう手狭ですね」
「シェールくん、頼もしくなりましたね。私、お陰で痩せ我慢出来ました」
「はい?」
「シェールくんがいなかったら、きっと怖くて泣き叫んでいたと思います。自分がどうなってしまうのか、正直怖かったですし、それに刺された直後は結構痛かったんですよね」
再び恐怖が戻ってきたのか、ユリアの目からポロリと涙が落ちた。
「もう大丈夫です」
大きな手が涙をぬぐい、そのままふわりと髪を撫でてくれた。
「タリウス」
それ以上は我慢が効かなくて、ユリアはタリウスの胸に抱き付いた。
「命に別状はないと医師が言っていました。それから、朝には動けるようになるとも。だから、もう心配要らない」
「本当にお医者様を?大変だったでしょう」
ユリアは一旦タリウスから離れると、今度は間近に顔を覗き込んできた。
「あなたの偉大さを実感しました」
「そんなこと…」
「いえ、シェールを救っていただいたことと言い、本当に感謝しています」
「怒らないんですか?散々無茶をしないよう言われていたのに」
「怒れるわけがないでしょう」
「でも」
「わかりました。あとで説教くらいはします。いずれにしても回復してからだ」
「タリウスのこわーいお説教も生きてからこそ聞けるというものです」
「そんなことで生を実感しないでください」
「だって…」
再び反論しかけるのを腕ずくで阻止される。そうして痛いほどに抱きしめられながら、ユリアはかつてないほどの安心感を得た。
とりま昨日の取りこぼしをば!
