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2020/12/13  21:30

続石の記憶7  小説

複数の足音がバタバタとこちらへ近付いてくる。シェールはごくりと生唾を飲み込み、身構えた。

「え?!」

勢いよく戸が開かれ、見知らぬ男たちが次々と入室して来る。しかも、最後のひとりはなんと昼間見た大男である。シェールは心臓が止まるほどに驚き、思わず後ずさりそうになったが、寸でのところで踏みとどまった。

自分のすぐ後ろには意識を失くしたユリアがいる。父が不在の今、自分が何とかしなくてはならない。そう思い、両手を広げ、男たちに向かってとおせんぼをした。

「蠍を見せろ」

大男が言った。

「サソリ?」

自分のおかれている状況がわからず、シェールはしばし思考停止状態に陥った。

「シェール、言われたとおりに」

「とうさん!」

父の声に、瞬時に呪縛から解き放たれたようだった。

「蠍はどこだ」

「あ、あれです」

再度大男に問われ、シェールは壁に打ち付けられた蠍を指差した。男たちはすぐさま蠍に駆け寄り、そして何やら話し始めた。

「遅くなって悪かったな」

「ううん、帰ってきてくれたから良い。それよりおねえちゃんは?」

「これから診てもらう」

タリウスは息子を呼び寄せ、それから部屋の外に出るよう促した。すると、大男もまた薬屋と共に戸口に向かってやって来た。

「あの蠍だが」

タリウスは大男を見上げ、息を殺して次の言葉を待った。

「薬屋が欲しいと言っている。いくらなら手離す?」

「金など不要だ。それより容態が知りたい」

こんなときに一体何を言い出すのだ。場違いな問いに彼は苛立ちを隠せない。

「毒性は弱い。子供や年寄りならともかく、大の大人なら死ぬようなことはない」

大男は事も無げに言った。その言葉に、タリウスは心底安堵した。そして、それは息子にしても同じらしく、すぐ隣から大きなため息が聞こえた。

「本当にただで良いのか」

「ああ、勿論だ」

タリウスは薬屋の店主に向き直り、深々と頭を下げた。この男には感謝してもしきれない。

「本当はきちんと礼がしたいが、あの蠍で良いと言うのならひとまず進呈します」

大男がタリウスの言葉を訳し、それを聞いた薬屋が興奮気味に何かを言った。

「あれは希少な種類で、しかも一発で仕留めてあるから状態も良い。高く売れるそうだ」

父子は思わず顔を見合わせた。

「諸々お手柄だったな」

「うん」

などと息子を労っていると、薬屋が蠍を手に戻って来た。そうして大事そうに袋にしまうと、先程まで蠍に刺さっていたナイフをこちらに返してきた。

「これをどこで手に入れた?」

ナイフを見るなり、大男の顔つきが変わった。薬屋の通訳ではない。それはこの男自身の言葉だ。

「ママの形見です」

「お前は本当に石の民なのか?我らの仲間にそんな髪の色の者はいない」

大男はシェールの銀糸の髪をしげしげと見やった。

「石の民?」

「我らが一族の呼び名だ。皆石を尊ぶ」

「よくわかんないけど、石の入った袋なら持っています。それから、この髪はパパと同じだって」

大男はタリウスに目をやった。彼の髪は茶褐色で息子のものとは似ても似つかない。

「ああ、えーと、とうさんじゃなくて。二人いるんです。でもって、どっちも大事なんだ。もちろんママのことも」

そのとき、ユリアのそばにいた男がこちらに向かい何事かを言った。

「診察が終った。朝には普段どおり動けるようになると言っている」

「だが、未だ意識が…」

医者の言葉を信用しないわけではないが、相変わらず目を閉じたままのユリアを見るにつけ、不安は払拭されない。

「眠っているだけだ。元から疲れていたんだろう」

そう言われたところで心配なことに変わりはないが、これ以上は聞きようがない。タリウスは礼を言って、求められるがまま代金を支払った。

「明日の午後にまた来る」

去り際に大男が言った。何のことかわからず答えずにいると、男は更に続けた。

「ガイドをして欲しいんだろう?同胞を石の民のところまで連れていく」

「どうほうって僕のこと?」

「ああ、多分な」

男たちの背中を見送りながらシェールが聞き、タリウスが答えた。後から考えれば、大男の申し出にもう少し感謝を伝えるべきだったのだろうが、いかんせんユリアのことで頭がいっぱいだった。それ故、他のことに考えが及ばなかった。


時間切れなので、短いですがここまで。続きは近日中に!
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