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2020/10/8  21:47

石の記憶1  小説

「ただいま」

自室に戻り、いつものように帰宅を知らせるが応答がない。一瞬、息子の留守を疑ったが、視線の先には出窓に腰掛けたシェールの背中があった。

「シェール」

「え?ああ、とうさん。おかえり」

そこで息子は初めて自分の存在に気が付いたのか、慌ててこちらを振り返った。それまで窓のほうを向いてはいたものの、その実自分が帰宅したことすら目に入っていなかったようだ。

「考え事か」

「うん」

息子はどこか上の空である。

「ねえ、とうさんはママがどこから来たか知ってる?」

「エレインの何だって?」

着替えに取りかかろうと息子に背を向けたところで、唐突に聞こえた問いにタリウスは眉を寄せた。

「士官学校に入るまで、ママがどこで何をしてたか、とうさんは知ってる?」

「いや、聞いたことがないな」

「じゃあ、ママのママとかパパのことを何か知ってる?」

それについては、彼自身長年疑問に思っていた。シェールを引き取るにあたり、まず初めにそのことを確認したが、結局はっきりしたことはわからなかった。

「わからない」

それ故、そう答える他なかった。

「そっか」

シェールは明らかに落胆したようだった。今更自分にこんなことを聞くということは、エレイン本人の口からは、何も語られなかったのだろう。

「どうした、急に」

「自分のルーツを調べるっていう宿題があって、うちは何て言うか、いろいろごちゃごちゃしてるから無理にやらなくて良いって言われて。まあ無理にやるも何も無理だからやるつもりはないんだけど、でもちょっと気になって」

宿題はひとつのきっかけに過ぎない。恐らくは、前々から漠然とした疑問があったのだろう。

「ミルズ先生たちにはもう聞いたのか」

「先生にこの話をしたことはなくて、ミゼットには前に聞いたけど、知らないって言われた。本当かどうかわからないど」

「どういう意味だ」

「だって、あんなに仲が良かったのに何も知らないなんてことある?」

「仲が良いからと言って、何でも話すわけではないだろう」

「そうかな」

息子は未だ納得いかないといった様子である。前回エレインの死の真相について彼女が口をつぐんだことから、今回も疑いをもっているのかもしれない。

「機会があったら、俺からも聞いてみる。それで良いか」

「いいけど、何言われてもちゃんと教えてね」

「わかった」

疑いをもたれているのは自分とて同じようである。
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