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2020/3/20  23:13

鬼の牙城にて〜おまけ〜  小説


「おかえりなさい」

隣に人の気配がして、ミゼットは寝所の中で夫の帰宅を知った。時計を見たわけではないが、恐らく深夜だろう。

「ああ、ただいま」

「お疲れ様。ねえ、昨日のことだけど」

「ミゼット、それを今やるのはやめないか」

「だって」

「わかった」

夫の声は疲れていたが、そうそう機嫌は悪くない。彼は観念して天井を見上げた。

「思ったんだけど、私のせいで気が散るのは別に志願者ってわけじゃなくて…」

「ああ、私だ」

どうしてこう悪びれもせず、さらりとそんなことが言えるのだろう。

「ゼイン」

「一年で一番忙しい日だ。心を乱されてたまるか」

ミゼットが精一杯非難がましい視線を向けるが、お相手はどこ吹く風だ。

「だったらそう言って。すぐにはわからないわよ」

「あの場でそんなことを言えるわけがなかろう」

「まあ、そうだけど」

だからといって、わざわざ自分を下げることもないだろう。無駄に怒らされるほうの身にもなって欲しい。

「君のほうこそ部下の前で感情的になるのはどうかと思うが」

「良いのよ、ダルトンだから」

些か乱暴な物言いたが、意外にも夫は反論してこなかった。

「ダルトンと言えば、助かったよ。彼を貸してもらえて」

「でしょう。もうあんまりいじめないで」

昼間本人からも報告を受けたが、改めて夫の口から謝意を聞いて、ミゼットは安堵した。

「別に苛めているわけではない。どうも君たちはダルトンの肩ばかりもつ」

「君たち?ジョージア教官のこと?」

「そうだ。なんのかんのとかまっては甘やかす」

「ああ、それはたぶんだけど、似てるのよ」

「誰が誰に?」

「ダルトンがシェールに」

「そうか?」

「一見すると温厚で虫も殺さないように見えて、その実結構大胆なことをするのよね、ふたりとも。それでいて根は善良だから、何かとかまいたくなるのかも」

「ふうん」

いかにも気のない返事に、夫が納得していないのか、そもそも興味がないのか、俄にははかれなかった。だが、次の台詞にミゼットははっとした。

「エレインと組ませてみたかったな」

「だ、だめよ。気は合ったかもしれないけど、あのふたりじゃ収集つかない」

「そうか。やはりあの手のタイプにはジョージアだな。彼は自分にはないものに惹かれる傾向にある。君と話していてわかった」

「あらそう。それにしても、随分とお気に入りなのね」

「私の一番はいつだって君だよ」

「もう」

はぐらかさないでよ、そう言いかけるが、言葉は声にならず暗闇に吸い込まれていった。

〜Fin〜


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