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2019/11/16  20:06

閑話休題  小説

鬼〜のつづきも、その後のもまだ出来ていないのですが、なんかこのタイミングでまたしてもくだらない小ネタが降ってきまして。

とりあえず忘れないように書き留めていたら、完成したので先にお披露目します。いや、ホント大したことないんですが。





教官室の奥の奥、資料室の閲覧禁止区域に二つの影が潜む。影のひとつは女で、先程から古い指導記録を手にとっては戻し、また手にとっては戻しを繰り返している。

経年劣化で背表紙の文字が消えかかっており、この暗がりではなかなかどれが誰のものかわからない。目当てのものが見付からないことに、彼女は苛立ち、ふいに視線をあげた。視線の先には部下が一人、入り口付近を見張っているはずだった。

「ちょっと、関係ないところ触らないでよ」

「いや、これは自分ので…」

もうひとつの影は若い男で、上官と同じように指導記録を一冊手にとっていた。

「あんたのはだめよ。まだ新しいからなくなったら気付かれる」

戻しなさい、とミゼット=ミルズが顎でしゃくる。

「いや、でも…」

キール=ダルトンは、なおも未練がましい視線を自らの指導記録に送っている。

「しっ!」

言うが早い、ミゼットは後ろの棚と柱の間に身を潜めた。

「え?」

カツカツとこちらに近付いてくる長靴の音に、キールが振り替えると、そこには鬼が一人立っていた。

「ジョージア先生!」

「貴様、性懲りもなくまた…」

「ち、違います!誤解です!せんせ…」

鬼の形相をしたタリウスは、キールの襟首を掴み、すぐさま壁へと追い詰めた。

「何が違う!何が誤解だ!答えろ、キール=ダルトン」

「自分はただ、命令で…」

「命令?」

乱暴にキールから手を離し、閉架へ向かう。目を凝らすと、棚の隙間から見知った影が浮かび上がってきた。

「簡単に私を裏切るのね」

憮然とするミゼットを前にタリウスは溜め息をついた。

「些か悪戯が過ぎやしませんか」

「ゼインみたいなこと言わないでよ」

目の前にいる教官は、ゼインが自身の後継者と認めただけあって、日に日に言動が似てきている。

「背中にあるものをお返しください。出来れば手荒な真似はしたくありません」

つまり、出来なければ手荒な真似も辞さないということだ。まともにやりあえば勝ち目はない。

「ダルトン」

「無理です」

そうだろうと思ったが、念のため聞いてみただけだ。ミゼットは後ろ手にあった指導記録を元の棚にぽんと投げ入れた。

「邪魔したわね」

そして、何事もなかったかのように退出してしまう。ひとり残されたタリウスは、彼女が殊の外すんなり引き下がったことに安堵の溜め息をついた。

書架に目をやると、たった今、賊から戻ってきた指導記録が自立せず隣にもたれ掛かっている。立て直すべく手に取り、その名を二度見した。

「エレイン…?」

一瞬ですべてがつながった。タリウスは弾かれたように教官室を飛び出し、賊の後を追った。

「お待ちください」

賊はこちらを振り替えることなく、歩みを止めた。

「あとの一冊は、外套の中ですか」

キールが驚いて上官を見た。

「お願い、見逃して頂戴」

「いいですよ」

予想していなかった返事に、ミゼットがこちらを振り返った。キールもそれに倣う。

「私の指導記録と引き換えなら」

「あなたの指導記録?見たことないわ」

「そうですか」

「いっ…」

突然、キールの足に激痛が走った。驚いて足元を見ると、あろうことかかつての師が踏みつけているではないか。

「以前、恐ろしく素行の悪い訓練生がふたり、資料室に忍び込んだ挙げ句、私の指導記録を盗み出そうとしました」

「あなた、随分大胆なことをしたわね」

「外禁中でやることなかったんで」

「暇潰し?」

「生涯、外禁にしてやれば良かった」

「いててて…」

教官が苦々しい顔で足に付加をかけてくる。

「それで?」

「以来、教官の指導記録はミルズ先生がご自身で管理されています。恐らくはご自宅にあると思うのですが」

あれから機会をうかがっては、方々捜索しているが一向に出てこない。既に兵舎の中は調べ尽くしたはずだ。

「わかった。捜してみる」

「では、それまでそちらは私がお預かりします」

ミゼットがしぶしぶ指導記録を差し出す。表紙には今度こそ彼女の名がある。

「ねえ。わかっていると思うけど」

「はい?」

「中を見たら殺すわよ」

物騒な物言いにキールの目が点になるが、教官はあくまですずしい顔のままだ。

「それはお互い様でしょう」


「まったくあんたのお陰でわけわかんないことになったじゃないのよ」

「すいません。ちょっとした好奇心で、ジョージア先生がどんな訓練生だったのか知りたくて」

「見たとおりよ。成績も素行も申し分なかった」

「かぶっていたんですか?」

「いいえ、一年空いてるわ」

「そうなんですか。でも、それなら別に見られたって…」

「叩いて誇りのでない訓練生なんていないわよ。それに、ゼインがあれだけ目を掛けているってことは、何かあるのよ。あなただってそうでしょ」

「俺ですか」

「ジョージア教官の特別みたいじゃない」

「特別に出来悪かったですからね」

それ故に、特別に虐められたと理解している。哀れな足は今もってズキズキと痛む。

「でも、良かったんですか?先生の指導記録はどこにあるかわからないのに、こっちはとられちゃいましたよね」

「いいのよ。彼が持っていてくれるのがある意味一番安心だもの」

人一倍正義感の強い彼のことだ。恐らくは、中をみることも、それをネタに揺すってくることもないはずだ。正直なところ、夫の手にあるより安全だと思った。

もちろん心配すればきりがないが、もしものときは、また指導記録奪還作戦を企てるまでだ。それよりも、絶対にわかり合えないと思っていた相手と、期せずして共闘関係になったことにミゼットは充足感を覚えた。




「些か悪戯が〜」というセリフをタリに言わせたかっただけの話。当初は、「些かオイタが〜」だったのですが、これじゃまんまゼインだよなと。で、タリが言うなら「些か悪ふざけが〜」なんですが、これだとゼインぽさが消えるんですね。

そんなわけで、、足し引きした結果、今のに落ち着きました。

これを書くにあたって、昔書いたキールとテイラーの予科生コンビが資料室に忍び込む話を読み直したかったのですが、ちょっとPC開いている暇がなかったので結局読めていません。

タリとゼインとどちらに見付かるか、途中で話が分岐していたのですが、一応どっちに転んでも今回の話につながると思います…(  ̄- ̄)
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