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■更新履歴■  そらごと


2月28日 更新
「小説」→「本編」→「マーガレットの祝福」up
「小説」→「ごちゃまぜ」「短編集」に過去拍手SS再掲
結構なつかしい!15〜が今回掲載分です。




そらちゃばこぽけっと。


過去の更新
206

2021/6/14  18:31

鬼面仏心6  小説

「ぼっちゃん、大丈夫かい?」

階段を降りたところで、心配そうに二階を伺う女将と遭遇した。食事も摂らずに、大声で諍いをしていたのだ。無理もない。

「お騒がせして申し訳ない」

「どうせあんたたちしかいないから、それは良いけど。それよりか、心配なのはぼっちゃんだよ。昨日からずっと元気がないみたいで、今日なんておやつにも来なかったんだよ」

「はあ」

察するに、一連の騒ぎで頭が一杯になり、それどころではなかったのだろう。そう思い、気のない返事を返すと、たちまち女将が目の色を変えた。

「はあってあんた。大した問題じゃないと思ってるかもしれないけど。私はね、ぼっちゃんがこんな小さい頃から毎日一緒にお茶してるんだ。それなのに、こんなことは虫歯になったとき以来、初めてだよ」

女将は声のトーンを落としつつ、それでいて鋭くこちらを威圧した。

「そう、ですか」

「そうだよ。何があったのか知らないけど、あの落ち込み方は相当なものだよ。ぼっちゃんは、そこいらの子よりよっぽど賢いし、身体も大きくなったけど、それにしたってまだ子供じゃないか」

確かに今日のシェールは、見るからにひどくうちひしがれていた。もう済んだこととして勝手に片付けてきたが、本人にしてみれば、それほど簡単に流せることではなかったのかもしれない。

タリウスはため息を吐き、それから宣言どおり、戸口へと向かった。頭を冷やしたかった。

「ただいま戻りました」

玄関の戸に手を掛けたそのとき、向かいからなんとも涼やかな声が聞こえた。ユリアの帰還である。

「お取り込み中、ですか?」

「いや…」

「ぼっちゃんが拗らせててね。それなのに、おとうさん、からきし空気読めないから」

なかなかの言われようであるが、事実なだけに何の反論も出来ない。クスリとユリアが笑った。

「私でよろしければ、ひとまず様子を見に行ってきましょうか」

いつもながら、彼女の笑顔には大いに救われるおもいがした。


「ただいま、シェールくん。もう寝てしまった?」

幾度かのノックの後、ユリアはドア越しに帰宅を告げた。

「おねえちゃん?とうさんに何か言われた?」

シェールは、背中をドアにつけたまま、小声で返事を返した。彼はあのままドアのすぐ前に座り込んでいた。

「いいえ。タリウスなら、頭を抱えて出ていったけれど」

「へ?何で?」

「さあ、女将さんと言い合いと言うか、一方的に責められている感じがしたけれど、よくはわからないわ。気になる?」

「うん。とうさんが僕のことで怒られてるんなら、やっぱりちょっと気になる」

「シェールくんは本当にやさしいのね。でも、そんなふうにいつもみんなに気を遣ってばかりで、疲れない?」

「別にいつもじゃないし、みんなにでもないよ。特にとうさんには言いたいこと言ってる」

「ふふふ。それでタリウスと喧嘩に?」

「だって、とうさんひどいんだ」

思い出したらまた腹が立ってきた。シェールは立ち上がって、扉を開けた。

「聞いてくれる?」

「ええ、もちろんよ」

シェールはユリアを招き入れ、それから先程あったことを話して聞かせた。

「信じられなくない?僕があげたお金、全然使わずに返すって言ってきたんだ」

「それはいくらなんでも、あんまりよね」

「でしょう?!」

「でも、使えなかった気持ちも、なんとなくだけど、わかるような気がするわ」

「なんで?お金って、使うためにあるんでしょ?」

「もちろんそうだけど、でも、勿体なくて使えなかったんじゃないかしら」

しきりにひどいと繰り返すシェールにユリアは苦笑した。

「ねえ、シェールくん。シェールくんが稼いだ硬貨一枚と、大人が稼いだ硬貨一枚とでは、どっちが価値があると思う?」

「そんなの、どっちも同じだよね。店屋に行ったって、同じものしか買えないし」

「でも、タリウスにとってはやっぱり違ったんだと思う。シェールくんが朝早くから起きて、やりたいことも我慢して、頑張って働いたお金だと思ったら、おいそれと使えなかったんじゃないかしら」

「それはまあ、なんとなくわかるけど。だからって、返さなくても」

「もう働かなくて良いって、突き返されたの?」

「さすがにそんなことは、されてないけど」

ユリアは知らないが、そもそも先に返せと言ったのはシェールだ。それきり二人は沈黙した。

「気を悪くしないで欲しいんだけど、カンニングのこと聞いたわ」

「ああ、あれ。結局全部ばれちゃったんだ」

「そう。色々と辛いおもいをしたわね」

「ううん、全部自分のせいだから」

「自分に責任があろうとなかろうと、辛いものは辛いし、苦しいものは苦しいわ。そうでしょう?」

やわらかな手が頬に触れた瞬間、折角乾き掛けた目頭がうっかりまた熱くなった。

「だって、私、自分が夜更かししたせいで寝坊したとわかっていたって、毎回落ち込むもの」

「それは、おねえちゃんが寝るの遅すぎなんだよ」

「そうかしら?」

軽やかな笑い声に、途端に涙が引っ込んだ。何故だかふいに、亡き母のことが思い出された。思わず彼女を凝視すると、今度はそっと手を握ってくれた。

「私ね、カンニングのことを初めて聞いたとき、それが良いかどうかは別として、すごいなって思った。お友だちのことを一番に考えて、自分が代わりに叱られようなんて、とても勇気のいることだもの」

「今考えたら、何であんなことしたのか、もうわかんないんだ。迷ってる時間もなかったし」

「そう。なら、タリウスのことまで考えている余裕はなかった?」

「一応考えたよ。とうさんにうそついて悪いって思ったし、それに、忙しいのに学校に呼び出されたことだって…」

「そういうことじゃなくて。タリウスの気持ち、考えた?」

「とうさんの気持ち?」

罪悪感に駆られたのも、お仕置きに恐怖したのも、それらはみんなシェール自身の感情である。

「シェールくんが無実の罪で責められたり、評判を落としたりするの、すごく嫌だった筈よ。当たり前よね。シェールくんのこと、大好きなんだから」

思ってもみなかった台詞に、シェールは言葉を失った。何でそんな簡単なことに今まで気付かなかったのだろう。父の胸中を考えたら、どうにもいたたまれなくなって、ほろりと涙がこぼれた。

「あのね、先生が言ってたんだ。カンニングしたって聞いても、とうさんは全然信じなかったって。僕のこと、信じてくれてたんだ。やっぱり、やっちゃいけないことだったんだね」

ユリアは黙って頷くと、震える背中をやさしくさすってくれた。シェールはしばらくの間、涙がこぼれ落ちるままに任せた。


スイマセン。決着つかず。延長戦に入りまーす。

7

2021/6/7  21:57

閑話休題  そらごと

突然ですが、子供(親戚の子でも友達の子でも)と本を読んでいるときに、うっかりスパシーンに遭遇!そんなとき、一体どうするのが正解ですかね。

かくいう私は、思い切り動揺して、該当のシーンをゴニョゴニョと読み飛ばしました。

なんだろう、めっちゃ恥ずかしいって言うか、気まずいって言うか。昔、親とテレビを見ていて、たまたまスパシーンにぶち当たったときとはまた違う衝撃でした。

うん、今時そんなものはないと思ってて、完全に油断しました。でも、よくよく考えたら、前にも似たようなことがありましたっけね。そっちは比喩的な意味でしたけど。


それはさておき。ひさびさに書き始めたタリパパ&シェールの本編も、ようやく折り返し地点まで来ました。相変わらずお互いのことが好き過ぎる二人ですが、今回もいろいろこじらせています。

そして、コメントでもいただきましたが、シェールも成長したものだなと。タリパパもいろんな意味で大変です。

次で決着つく予定なので、もう少しお付き合いくださいませ。

そして、サイトが放置気味で、やっている意味をあまり感じられないですが、落ち着いたら今回のなど含めて引っ越します。

どうせならもうちょい使い勝手を良くしたいとも思っていて。まとめてこえが聴けるショートカットとか、サウンドノベルのリンクとか、整理したいです。果たして、いつになるか定かではありませんが…
5

2021/6/7  0:51

鬼面仏心5  小説

「ただいま」

翌日、仕事を終えたタリウスは、自室に戻りいつものように帰宅を告げた。

「おかえり…」

ややあって、掠れた声が返されるも、息子の姿は見えない。てっきりまた出窓にでも座っているのだと思った。

ここへ来た当初は、シェールが出窓へ上がることを禁じていた。だが、息子はどうにもこの場所が好きなようで、何度叱っても効果がなく、やむなくそのことを容認した経緯がある。そんな出窓は、今でも息子のお気に入りの場所である。

しかし、出窓にも息子の姿はなく、視線を落とすとベッドにふくらみがあった。

「どうかしたのか」

シェールはベッドに潜り込み、こちらに背を向けていた。

「ううん、平気」

様子がおかしいのは明らかだが、無理矢理聞き出すような事柄なのか、すぐには判断がつかない。そこでタリウスは、一旦息子から離れた。

「やっぱり僕、間違ってた」

タリウスが自分のベッドで着替えをしていると、背後から今にも泣き出しそうな声が聞こえてきた。

「うん?」

「嘘ついて自分がやったって言ったこと、やっぱり少しも良いことじゃなかった」

「何故そう思った?」

「何でって、だって、だって…」

シェールが声を詰まらせる。タリウスは着替えもそこそこに、息子の傍に腰を下ろした。毛布の上からそっと肩に触れると、息子が声を殺して泣いているのがわかった。

「本当のことがばれたみたいで、今日、相手が謝ってきたんだけど。そのとき、すっごい苦しそうで、昨日僕がやったことにしてって言われたときより、もっとずっと辛そうだった」

話しながらシェールが鼻を啜る。

「こんなことになるなら、最初から嘘なんてつかなきゃ良かったって思って、謝りたかったけど、でもそれも何か変で、結局何も言えなかった」

言うまでもなく、一番悪いのはカンニングをして、その罪を息子になすりつけた人物である。だが、その息子も自らを犠牲にして、嘘つきの片棒を担いでいる。被害者であり加害者でもある息子の中で、行き場のない罪悪感がくすぶっているのだろう。

「なあ、シェール。お前は困っている人を見ると、黙っていられないんだろう?」

コクリと毛布が揺れる。

「そのこと自体は少しも悪くないし、 むしろ良いことだと思う。だけど、その困っている人に対して、自分がしようとしていることが、本当にその人のためになるか、よく考える必要がある。今回のことで言えば、お前のせいで相手は余計に罪を重ねてしまった。そうだろう?」

「そんなふうに、僕、考えてなかった。でも、確かにそうだと思う」

シェールはハッとして、それからまたぐずぐずと啜り泣いた。

「シェール、済んでしまったことはもう仕方がない。今お前に出来ることは、きちんと反省し、同じことを繰り返さないことだ」

「そんな自信ない」

昂然と言い放つ息子に、だろうなと、思わず笑いそうになる。

「ならこう考えろ。前に虫歯をほっておいて、夜中に痛くてたまらなくなったことがあっただろう。あのとき俺は、行きたくないと駄々をこねるお前を、無理矢理歯医者へ引きずっていった。もし、あのとき、そんなにイヤなら別に行かなくて良いと言ったとしたら、どうなったと思う?」

「一晩中、大変なことになったよね、そりゃ」

「それと同じことだ。どのみち痛い思いをするなら、被害は最小限にとどめたほうが良い。それは相手のためであり、自分自身のためでもある」

「うん。わかった」

息子はしっかりと返事を返し、それから手の甲で目頭を拭った。その様子に、もう大丈夫だと思った。それ故、つい不用意な発言をしてしまったのだ。

「ところで、シェール。お前の望みとおり東方に連れていったというのに、何故今も仕事を?」

「とうさんはさ、僕が働くの嫌?」

息子は質問には答えず、代わりに小さく問うた。

「嫌というわけではないが、手放しで賛成は出来ない」

「どうして?悪いことじゃないって言ってたじゃん。まわりの人にいろいろ言われるから?」

核心に迫る質問に、一瞬ひやりとした。

「それも多少あるが、それよりもだ。お前には今しか出来ないことをして欲しい」

「今しか出来ないことって?」

「働く以外のことだ。思い切り身体を動かしたり、本を読んだり、友達と関わったり、何でも良い」

「そんなの、いつでも出来るじゃん」

「それがそうでもない。俺はお前より長く生きているから言えるが、大人になるとやるべきことに追われ、そうそう好きに出来る時間はない。お前には、今ある時間を有意義に使って欲しい」

本人は無自覚だろうが、息子に残された平和な時間はそう長くはない。

「それとも、何か理由があるなら話は別だが」

「それは…」

掠れた声で言い掛けるが、その後が続かない。

「シェール、この話はまたにしよう」

弱った息子を理詰めで黙らせることに良心が痛んだ。

「どうして?」

「もう少し元気なときに話し合おう」

「話し合う?どうせダメだって言うんでしょう?!」

シェールは勢い良く起き上がると、声を荒げた。

「そんなことはない」

「でも、嫌だって言ったじゃん」

「嫌だとは言っていない」

「言ったじゃん!!」

こうなったら何を言っても無駄である。いきり立つ息子を前に、タリウスは辟易した。一体どこにこんな元気が残っていたのだろう。

「こら、どこへ行く」

シェールは自分の横をすり抜け、壁に掛かった上着を手に取った。

「どこだって良いでしょ」

「良いわけないだろう。一人になりたいのなら、俺が出ていくから。お前はここにいろ」

これ以上ややこしいことになるのは御免だった。タリウスは戸口を塞ぐようにして、息子の前に立ちはだかった。

「いやだ」

「こんな時間に一体どこへ行くと言うんだ」

「どっかに泊まる」

「無理だ。第一、先立つものがないだろう」

「なら、今まで稼いだ分返して」

「わかった。明日にでもそれは返す」

「なんで?使ったんじゃないの?」

「いや」

「全然?全く?」

「ああ」

「どうして?!」

シェールはいよいよ我慢の限界を迎えたらしく、ただならぬ様相でこちらを睨み付けてきた。このままいけば、次は手が出る。

「黙れ!!」

そこで、やむなく怒鳴り付けると、息子の瞳に恐怖が浮かんだ。

「外の空気を吸ってくる」

シェールが怯んだ隙に、タリウスは逃げるようにして、部屋を後にした。


毎度のことながら、この二人の親子喧嘩は、疲れるけど、楽しいです。書いてる分には、ですが。

9

2021/6/3  6:41

鬼面仏心4  小説

「お帰りなさい。今夜はまた随分と遅かったですね」

食堂で書き物をしていたユリアが、待ち人の帰宅を知ったのはその夜遅くだ。

「昼間やり残したことがあって、それが片付いたと思ったら、今度は予科生がトラブルを。お陰でこんな時間です」

「お疲れ様でした。でも、当直が別にいらしたのでは?」

「ミルズ先生ひとりに押し付けて、上がるわけにもいかなくて」

「それはまた、いろいろと不運でしたね」

ゼイン=ミルズが当直に入ることはまれである。無論、彼に任せておけば何の問題もないのだが、いかんせん対応が斜め上なのだ。タリウスとしても、関わった以上、最後まで付き合わなければ、教え子を見捨てるようで心もとなかった。

「全くです。ところで、シェールはどんな様子でしたか」

そもそも不運の始まりはシェールのカンニング騒ぎだ。

「それが何だか今日は元気がなくて、始終浮かない顔をしていました。テストの出来が思ったより良くなかったのかしら」

「出来以前の話だ」

そこで、タリウスは昼間の出来事をひととおり話して聞かせた。

「いかにもシェールくんらしいですね。これが他の子供ならもう少し驚くところですが」

「お人好しもここまで来ると心配になる」

ユリアが苦笑いをし、タリウスが吐息した。

「そんな。もし、本当にカンニングをしたとして、それはもうひどく叱られるとわかっていたでしょうに、それを承知で他人の罪を被るなんて。シェールくんなりの正義だったのでは?」

「そんなものは正義ではない。偽善だ」

「手厳しいこと。それで、どうなさるおつもりですか」

「どうもこうも、しばらくすれば自ずと自分の過ちに気付く筈です。そこはさして心配していませんが、それより問題は仕事です」

「結果的に無実だったんですよね。でしたら、シェールくんのお仕事のことは、この際関係ないのでは?」

「だが、あらぬ疑いをもたれた。だいたいあいつが仕事をすること自体、賛成していない」

昼間、教師の言った台詞が頭の中でリフレインする。思い出しただけで不快だった。

「でも、本人は働くことを望んでいるんですよね」

「そこです。あいつは何故そこまで働くことにこだわる?そもそも、どうして働いているのか今一つ理解出来ない」

「私が聞いた限りでは、東方に行くためのお金を稼ぎたいという話でしたが」

「だが、その目的は達成した。それなのに、未だにあいつは働いている」

本人に理由を尋ねたところで、明確な答えを示すことはなかった。今まで黙認してきたが、これ以上はこちらが我慢ならない。

「単純に働くことが楽しくなったのでは?自分で欲しいものを手に入れられる喜びを知ったとか」

「いや、欲しいものは特にないと言っていました。だから、稼いだ分はそのまま私に」

「それでしたら、答えは簡単です」

ユリアは微笑み、きっぱりと良い放った。

「タリウス、あなたの役に立ちたいからよ」

「そ、そんなことは少しも望んでいない」

働いて欲しいと言ったことはおろか、生活に不安をおぼえるようなおもいもさせていない筈である。頭の中が何故というおもいでいっぱいになった。

「こちらが思っているほど、シェールくんはもう子供ではないのかもしれませんよ」

「そうかもしれませんが…」

もうしばらく子供でいて欲しいというのが本当のところだ。

「いずれにしても、もう一度話し合ってみてはいかがですか」

「そうですね」

果たして、こちらの言うことをすんなり聞き入れてくれるのだろうか。タリウスは息子を思い、ため息を吐いた。
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