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■更新履歴■  そらごと


2月28日 更新
「小説」→「本編」→「マーガレットの祝福」up
「小説」→「ごちゃまぜ」「短編集」に過去拍手SS再掲
結構なつかしい!15〜が今回掲載分です。




そらちゃばこぽけっと。


過去の更新
206

2021/4/10  7:51

♪♪♪  小説

「シェール。どうした」

「え?」

父の問い掛けに、シェールはハッとして目を上げた。目の前には、こちらを窺う父の姿があった。

「えーと、僕も昔のこと思い出してた。昔のとうさんはさ、すごいやさしかったよね」

父という人間が、本質的にやさしい人であることは今でも疑いようがない。気心が知れたが故に遠慮がなくなったともとれるが、それでもシェールが幼かった頃の父は、やはり格別にやさしかった。

「それは昔のお前が素直でかわいかったからだ」

「今はひねくれててかわいくないってこと?」

「少なくともそんなことは言わなかっただろう」

確かに。そう思うと返す言葉が見付からない。シェールが沈黙していると、クスリと父が笑った。自分に向けられた穏やかな眼差しは、昔と少しも変わらない。

「さっきの話だけど、別に欲がないわけじゃないよ。ただ、欲しいものは大概買ってもらってるし、やりたいことだってさせてもらってる」

シェールがそのことに気が付いたのは、比較的最近の話だ。父が駄目だというのにはなにがしかの理由がある。むやみやたらに却下することはないのだ。

「たまたま今やりたいことが、働くことってだけで」

「大人になったら、否応なしに働くことになるんだ。何も今することとも思わないが、言い出したら聞かないからな、お前は」

それはお互い様と言うより、こっちのセリフだと思った。

「とうさんに似たんだよ、たぶん」

「どういう意味だ」

「別にそのままのい………わ!ちょっと?やめっ…!」

突如としてたくましい腕に自由を奪われ、あっという間に羽交い締めにされた。

「降参するか」

「し、しない!!」

シェールは咄嗟に万歳をした後、すかさずその場に屈んだ。どうにか父を振りほどくことには成功したが、突然のことに心臓がバクバクと音を立てた。

「ほう」

その半ば感心したような、意外そうな声に、シェールはこれで終わりではないと確信する。そして、改めて思うのだった。目前に立ちはだかる壁は存外に高い。


おしまい

長いこと一緒に暮らしていると、考え方や行動が似通っていきますよねっていう話。

7

2021/4/5  7:04

♪♪  小説


「ただいま」

数年前のある日のことだ。帰宅を告げる兄の声で、シェールは目を覚ました。つい先程まで、ベッドに転がって絵本を読んでいた筈だが、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

「お兄ちゃん!おかえりなさい」

待ち人の帰宅に、シェールはベッドから飛び降りた。

「元気にしていたか?」

「うん」

「それは何よりだ」

まだまだ話したいことはたくさんある。何せ今日一日、ずっとこの時を待っていたのだ。

ところが、タリウスはそんな自分の胸中を知るよしもなく、こちらに背を向け黙々と着替えに取り掛かかった。

「ねえ、お兄ちゃん」

「何だ?」

弟の呼び掛けに、タリウスは背中で応じるだけだ。

「あのね…」

「うん?」

「あの、えっと…」

次第に小さくなる声に、タリウスは何事かと振り返り、それから弟の前に膝を折った。

「どうした?」

思わずうつむくと、真顔で覗き込まれた。もとよりそう大した話ではない。そう思ったら、うまく言葉が出てこなかった。

「…れる?」

「ん?何だ?」

やっとのことで声を絞り出すが、兄には届かない。

「シェール、何が欲しい?」

「えっと、お菓子」

「お菓子?」

咄嗟に口から出任せを言うと、兄が眉を潜めた。

「ついこの間、買ってやったばかりだろう。もうないのか」

シェールは答えない。何故なら、本当は引き出しの中にたんまりあるからだ。

「そんなに頻繁には買えない。ダメだ」

「でも」

「今日のところは我慢しろ」

兄はピシャリと言い放った。本当にお菓子が欲しいわけではないが、ここで引き下がったら会話が終了してしまう。シェールは必死だった。

「なんで?」

「何でって、わからないのか。お前に意地悪するためか。それとも、お前が嫌いだからか」

「そんなの、そんなのどっちもだよ!」

「本気で言っているのか」

タリウスに鋭い視線を向けられ、シェールは泣き出しそうになるのをどうにか堪える。二人はしばらくの間、睨み合った。

「だって」

だが、それもいくらも続かない。先に目をそらしたのは、もちろんシェールだ。

「だって?」

「だって、そんなことないって思うけど、でももしそうだったらって思ったら…」

「違う。お前のことは大事に思っているし、出来る限り望みは叶えてやりたいと思っている」

「お兄ちゃん…」

想像していなかった言葉に、シェールは今度こそ泣きそうになる。

「でもね、シェール。お前には我慢することも覚えて欲しい。きちんとした大人になって欲しいからだ。俺の言っていることがわかるか?」

コクリとシェールは頷いた。

「この次は買ってやる。だから、今日のところは聞き分けろ。良いか?」

「うん」

「良し、良い子だ」

タリウスは微笑み、それから頭をぽんとなでてくれた。今なら本当のことが言えるかも知れない。

「…ってして」

「うん?何だ、もう一度言ってごらん」

「あのね、ぎゅってして」

タリウスは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐさま顔をほころばせた。

「これも我慢?」

「いや」

それから、膝を折ったままやさしくシェールを抱き締めた。広くあたたかな背中に触れ、言いようもないくらい心が満たされた。

「これは我慢しなくて良い。いつでも言って良いよ」

「ホントに?」

「ああ。淋しいおもいをさせて、悪かったな」

タリウスはそのままシェールを抱き上げ、ベッドに着地させた。

「今日は何をしていた?」

「えーっと」

そうして並んで腰を下ろし、他愛のない話をする。シェールだけの時間である。


もうちょい続く
9

2021/4/4  8:32

♪  小説

ときは夕暮れ、タリウスはひとり自室でまどろんでいた。

目蓋の裏に映し出されているのは、在りし日の息子である。息子は、今よりも格段に小さく頼りない身体で、奔放に動きまわっては、よく迷子になった。

そうして発見したときに、泣きながら自分を追い求めていることもあれば、我関せずであそびに熱中していることもまたあった。いずれにせよ、見付かるまで気が気ではなかったと記憶している。

「ただいま!」

「ああ、おかえり」

成長した息子の声に、意識が現実へと返る。タリウスはベッドから身体を起こすと、シェールの姿をまじまじと見詰めた。

「何?」

「いや、大きくなったなと思って」

「どうしちゃったの?急に」

「昔のことを思い出していた。ここへ来た頃は、ほんの子供で、暇さえあれば迷子になっていたというのに」

「今だって子供なんだけどな。 迷子には、なんないけど…」

言いながら、シェールは頭をかいた。

「あ、そうだ。とうさん、これ」

シェールは思い出したとばかりに、自分の引き出しから小さな袋を取り出し、こちらに寄越そうとした。

「今月分と、あと先月の分もちょっと入ってるって」

「それはお前が働いて、稼いだお金だろう?」

「そうだけど」

「いくらか欲しいとは言わないのか」

無造作に差し出された袋に、タリウスは手を伸ばさない。この袋の重みを理解しているからだ。

「別に。今欲しいものないし」

「欲のない奴だな」

「そんなこともないけど、たまたまだよ」

これ以上、孝行息子の好意を無下にするわけにもいかず、タリウスは袋を受け取った。

それは、少し前の自分には考えられないことだった。無論、息子を働きに出し、稼ぎを得ることには、今でも抵抗がある。自らの不甲斐なさの象徴だとすら思う。だが、それが本人の望むところであるのなら、尊重するより他ないと思った。

「シェール。ありがとう」

自分の言葉に、はにかむ顔が昔と寸分たがわず愛おしかった。


続くかも?


日々ご来場&パチパチありがとうございます!
怒涛の年度替わりです。身体がおかしいのとヤル気スイッチがどっかいってしまった関係で、作業効率が落ちまくりですが、時々癒されに来ます…

11

2021/3/15  11:41

カーラさん  小説

春ですね。私は春が、特に別れの季節である三月が、六月に次いであまり得意ではありません。何だろう、ふわふわと暖かくなって嬉しい反面、無性に不安を掻き立てられるとでも言いましょうか。昔から心が騒がしくなるのです。

まあ、それだけ淋しいと思えるくらい、毎年良い出逢いをいただいている、そう思うことにします。


さてさて、新作は二作続けて新婚さん話でした。

ここ最近、記憶力が低下しているのか、パフォーマンス力が落ちていて、思い付いた先から活字にしていかないと忘れてしまい、ちまちましか書けなくなるようです。

今回は(「覚醒」は特に)途中でいろいろ余裕がなくなってしまい、アウトプットを後に回したら、いざ書く段になって言葉が逃げて行った後でした。

たぶん、当初はあんな話ではなかったと思うのですが、タリウスがしあわせならもうそれで良し。カワイイ妻子に癒されて、また頑張っていただきたい。


いや、もうね、職場が本当ヤバイ。特にここ二年は、自分の立ち位置や過去のしがらみもあって、もろもろ殺して随分尽くしてきたけれど。それにしたって、限界超えてます…

ヘロヘロになった私を見て、「そらさん荷物多過ぎ。余計なもん下ろしたら?」って、一際デカイ荷物丸投げしてきた本人に言われた日には………働き方変えようかなと本気で思案中。うん、変えるわ。


閑話休題。以下、短編(掌編?)です。本当は拍手SSにしようと思って昨夜書いていたんですが、さすがに長過ぎたのでここに。

アポ無しオバサン再び。



短編を読む
14



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