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■更新履歴■  そらごと


9月26日 更新
「小説」→「本編」→「過去からの来訪者」up
お幸せに



そらちゃばこぽけっと。


過去の更新
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2020/12/3  17:46

続石の記憶4  小説

交渉の末、彼らは無事に今夜の宿を得た。大人二人で話し合った結果、安全面を考慮し、三人まとめて部屋を取ることで合意した。少々手狭だが背に腹は変えられない。

それと言うのも、念入りに宿を選んだつもりだったが、いざ割り当てられた部屋に入ってみると、窓枠が歪んでおり完全には木戸が閉まらない。防犯以前に、まずもって夜中に雨でも吹込んだら厄介だと思ったが、ユリア曰く、この地方では一年を通して殆ど雨が降らないとのことだった。

「何から何まで頼りきりで申し訳ない」

「いえいえ。私のほうこそ、背中の心配をしなくて良い旅がこんなにも快適だとは思いませんでした」

ようやく緊張が解け、二人は小声で言葉を交わした。シェールはと言えば、少し前に力尽き、今はベッドの端でスヤスヤと寝息を立てている。

「でも、明日からはガイドを雇ったほうが良いかもしれませんね」

言いながら、ユリアは自ら持参した地図に視線を落とした。よく見ると、随所に手書きの書き込みがある。

「ガイドをですか?」

「この後の過ごし方にもよりますが、部族に接触を図るのでしたら、私の似非(えせ)東方語では心もとありません。片言以上のアステリカ語が話せて、この辺りの地理に詳しい方が望ましいですが、そううまくいくかどうか」

ユリアの口から溜め息が漏れた。その間も目は忙しく動いている。びっしりと書き込まれた地図を見るに、彼女がここへ来るまで一体どれほどの時間を費やしたのか、うかがい知ることが出来た。

「すみません、ここまでしていただいて」

「いいえ。乗りかかった船とでも言いましょうか。調べ始めたらつい楽しくなってしまって。折角なら、シェールくんにお母さんが見ていた景色を見せてあげられたらと」

「お気持ちはありがたいですが、良いところで休んでください。疲れたでしょう」

相変わらず地図にかじりついているユリアを見て、タリウスには彼女のこれまでの寝坊と遅刻の理由が改めてわかった気がした。

「意外とまだ元気です。タリウス、あなたが絶えず気を配ってくださったから」

「私は何も…」

「ひとり旅をしていたときは、その辺りのことは本当にもう散々でしたから。詳細はあえて省きますが」

「くれぐれも無茶だけはしないでください」

想像するだけで心臓に悪い。改めて釘を刺すと、ユリアがクスリと笑った。

「本当に心配症なんですね」

「な…!」

「静かにしないと、シェールくんが起きてしまいますよ?」

思わず声を上げそうになったところをシーッとユリアに制される。

「おやすみなさい」

次の瞬間、ユリアは空いているベッドに滑り込むと、涼やかに言った。一方、残されたタリウスは溜め息と共に口の中でおやすみと呟いた。

どこからどう見ても、いつものユリアである。そのことがかえってタリウスを混乱させた。


翌日は、ユリアの提案で朝から旅人向けの案内所へ向かった。案内所では、ガイドと共に馬やラクダが借り受けられる仕組みになっているようだが、行き先は主要都市や代表的な観光地に限られているように見受けられた。

「この地図のこのあたりへ行きたいのですが、連れて行っていただけませんか?ええ、勿論そちらも素敵な場所でしょうけれど、でも私はここに行きたいんです」

ユリアが異国語を交えながら根気よく説明するが、カウンターの向こう側にいる男は渋い表情のままだ。何を言っているかまではわからないが、とにかく難色を示していることだけは、タリウスにもわかった。

「だめですね。そこは何もないから行くべきではないと言っています」

ユリアはすぐ後ろに控えていたタリウスに小声で伝えた。

「どうしますか?直接ここに行くのは諦めて、近くまで案内してもらいますか」

「そうですね…」

確かにこのままここで粘っても事態が好転するとも思えない。徒に時間が過ぎていくだけだ。タリウスは考えを巡らせながら、ふと表で待たせていた息子に目をやった。

息子は、案内所の前で束の間の自由時間を満喫している。常にこちらの視界に入る位置にいるよう言い付けてあるが、ともすれば見失いかねない。

すると、息子が突然二歩三歩と後ずさった。何事かと出入口に注視すると、身の丈の大きな男が大股で案内所に入ってきた。見たこともないような大男に驚いて道を開けたのだろう。

男は案内所に入り、カウンターに向かって某かを言った。

「タリウス」

そのとき、ふいに後ろから肩を叩かれた。

「あの男性の首に、刺青があるのがわかりますか」

振り返ると、耳元でユリアが囁いた。言われて、タリウスはそれとわからぬよう男に視線を向けた。確かに男の首筋には三日月状の刺青がある。

「だが、あの模様は…」

「シェールくんのお母さんのものと同じではありませんが、時代的には確か一緒だった筈です。同じ地域かあるいは近い地域かもしれません」

言うが早い、ユリアは男に向かって話し掛けた。男は怪訝そうにこちらを見やり、言った。

「何だ」

久方ぶりに聞く母国語に彼らは顔を見合わせた。

「翼の文様をもつ部族を探しています」

「ツバサ?」

「鳥の羽根のような…これです。ご存知ありませんか」

ユリアは鞄から小さな紙を取り出し、男に見せた。いつぞやタリウスが石の入った袋から書き写したものだ。

「探してどうする」

「お会いしたいと思います。もし、場所をご存知でしたら、ガイドをお願い出来ませんか」

「知らないな」

男は食い気味に答えた。明らかに不自然だが、ユリアはそれには気を止めず更に続けた。

「そうですか。それでしたら、他の部族のところでも構いません。例えば、月の文様の部族とか」

「つ…!!」

刹那、男の瞳孔が開く。

「お前ら何者だ?!本当の狙いは何だ!!」

男は激昂した。

「ただの旅行者です。他意はありません」

「旅行者が何で刺青のことを知っているんだ!」

「それは文献で…」

「ユリア、これ以上はよそう」

ユリアはなおも応酬しようとするが、タリウスが止めに入る。

あくまで冷静な彼女とは対照的に、男のほうは目が血走り、今にも暴れ出しそうだった。このままでは確実に厄介なことになる。実際、カウンターの男はおろおろと狼狽え始め、離れたところにいる息子もまたこちらの異変に気付いた。

「でも」

「不躾なことを聞いて申し訳なかった。もう失礼しよう」

ユリアは未だ諦めきれない様子だったが、強引に腕を取ると、男に向かって黙礼した。

「とうさん!おねえちゃん?大丈夫?」

「ええ、何でもないわ」

「大丈夫だ。それより待たせたな。ひとまずお前の好きなところに行こう」

万にひとつも男が追いかけてきたらどうしようかと思ったが、幸いその心配はなさそうだった。
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2020/11/29  21:52

ディシプリンスパンキング〜お尻叩きで罪を贖う世界〜(レビュー)  そらごと

本編の途中ですが、先日読んだスパマンガがあまりに私の萌えツボにヒットしたので、ちょっともうガマン出来なくなりまして。作者様にお願いして、こちらでご紹介がてら感想などを書かせていただくことにしました。

いわゆる同人誌なので、そういったものが苦手な方、作品だけ読みにいらしてくださっている方は、バックでお願いします。


レビューを読む
3

2020/11/28  23:03

続石の記憶3  小説

その後、彼らは順調に歩みを進め、予定していた街で宿を取った。交通の要所であるこの街は、多くの人々で賑わってはいるものの、気候や文化は王都と大差なかった。

問題はここから先だ。明日の今頃は、上着を一枚脱ぎ捨て、聞き慣れない言葉に難儀しているかもしれない。自分ひとりならともかく、息子を連れている以上安易な選択は出来ない。タリウスは珍しく気弱になりながら、いつもと違う天井を見上げていた。すると、すぐ隣で人が動く気配がした。

「起きているのか」

「うん。なんか寝られなくて」

身体は疲れている筈なのに、と息子は不思議そうに呟いた。

「シェール、ここから先は俺にとっても未知の地だ。頼むから…」

「わかってるよ」

シェールは困ったような、半ば諦めたような声でタリウスの台詞を遮った。

「危ないことはしないし、迷子にもならない。でしょ?」

「わかっているなら良い」

どうやら無意識のうちに同じような忠告を繰り返してきたらしい。だが、シェールは特に気を悪くした素振りも見せず、ぽつりと呟いた。

「ありがとね、とうさん」

「何だ、改まって」

「忙しいのにこんなお願いきいてくれて。それから、宿題のことも」

「ここ最近、忙しさにかまけてお前には我慢ばかりさせていた。だから、たまには良いだろう。それに宿題に関しては、俺は何もしていない」

一番の功労者は、他ならぬユリア=シンフォリスティである。今回の旅にしても、彼女は計画段階から随所で采配を振るってくれた。思い出したらまた陰鬱な気持ちになった。

「おねえちゃんやミゼットにもいっぱい助けてもらったけど、でもとうさんがいなかったら宿題をやろうとすら思わなかったから、ちゃんと出来たのはとうさんのお陰だよ」

思ってもいなかった言葉に、靄のなかにうっすらと光が射した。

「何故お前はそんなに俺を好いてくれるんだ?」

「何でって、そんなこと考えたこともないけど。でも、とうさんと一緒にいると安心するし、何にも怖くない」

そして、続く台詞にハッとさせられる。泣こうが笑おうが、息子を守れるのは自分以外にない。これまでも、これからも。

「とうさんのことは時々怖いって思うけど」

「時々?」

「ううん、本当はしょっちゅう。でも、だからこそ何が起きても平気かなって」

シェールは少しも悪びれない。そんな息子を前に自然と口許が緩んだ。

「過度な期待をされても困るが、それにしたってお前のひとりくらいなんとかなるだろう」

漠然とそんな思いが心に満ちていった。

「シェール、明日も早い。もう寝よう」

「うん、おやすみなさい」

ほどなくして、彼らは眠りに落ちた。


翌朝はからっとした良い天気だった。そのせいか、タリウスの気分も昨日よりか幾分晴れていた。

「おはようございます」

出立の準備を整え、玄関ホールに立ったところで我が耳と目を疑った。

「おねえちゃん!?」

そして、次の瞬間、隣で上がった奇声に、これは現実なのだとぼんやり理解した。

「急用があったんじゃなかったの?」

「ええ。でももう済んだわ」

「本当に?」

「一緒に行くって約束したもの」

息子はユリアと一日振りの再会を喜び、それから彼女と手をつないでこちらへやってきた。

「お邪魔でしたか」

「いいえ」

我ながらもう少し気の利いたことが言えないものかと思ったが、いかんせん言葉が出てこない。それ故そう答えるのが精々だった。


一体いつの間に彼女はこんなところまでやってきたのだろう。そもそもあれほどまでに怒っていたというのに、突然心変わりしたのは何故だろう。

頭の中は数々の疑問で埋め尽くされているが、余計な詮索はしないに越したことはない。そう思い、タリウスはあえて何事もなかったかのように振る舞った。


「今晩泊まれる部屋があるか、聞いてきますね」

予想したとおり、東へ進めば進むほど、雑踏の中には耳馴染みのない言葉が増えていった。

日が傾きかけた頃には、母国語を話すのは彼らと同じ旅行者だけで、商売人は片言のセールストークを口にする以外、こちらにとって全く意味の解さない言語を話すようになった。

「すごいね、おねえちゃん。よくわかるね」

「全然。半分もわからなかったわ」

「うっそ!」

シェールが驚くのも無理はない。日用品の買い出しから乗り合い馬車の値段まで、すべてユリアが単身交渉に当たっていた。

「私は買いたいし、あちらは売りたい。お互い利害が一致しているから、なんとかして伝えたい、どうにか理解したい、そう思った結果よ」

「けど」

「それに、安心して交渉に当たれる環境というのも大切よ。いくら底値まで値切ったとしても、その間にお財布をすられたら意味がないもの」

ユリアは微笑んだ。


ちまちま進みます…
6

2020/11/23  23:12

続石の記憶2  小説

それから数週間後、紆余曲折あった後、彼らは出立の朝を迎えた。

「じゃあね、ぼっちゃん。くれぐれも気を付けて。お父さんの言うことをちゃんと聞くんだよ」

女将は朝食の片付けを一時中断して、玄関の外まで見送りに立ってくれた。

「わかった!」

「結局、ユリアちゃんは行かないのかい?」

女将がタリウスを仰ぎ見るが、即座に応答出来ない。

「急用が出来たんだって」

言葉に詰まる彼を横目に、シェールが小さく答えた。残念で堪らないと言わんばかりの息子の様子に、タリウスはチクリ胸に痛みをおぼえた。

「一度にみんないなくなっちまったら、私が淋しいんだけどさ」

「そっか。それもそうだね」

それでも女将を気遣う息子の健気さに、タリウスは一層居たたまれない気持ちになった。そんな気持ちを絶ちきるべく、彼は一礼して踵を返した。シェールもそれに続いた。

息子の念願が叶い、こうして二人で旅に出たというのに、タリウスの胸中は穏やかではなかった。隣を歩いているシェールは、思うところがあるのか、先程から終始無言である。否がおうにも意識が内へと向いた。

一体何故こんなことになってしまったのだろう。タリウスはここ数日のことにおもいを巡らせた。

今回の旅にユリアが同行したいと申し出た時、シェールは勿論、タリウスも手放しで喜んだ。博識で異国語にも精通している彼女がいれば、あらゆる場面で心強い。何よりも、彼女の同行そのものに価値があると思った。

ところが、その後すべてを台無しにするような出来事が起きたのだ。


「既に聞き及んでいるかも知れないが、ミスシンフォリスティは今期限りで職を辞すそうだ」

ゼイン=ミルズの言葉にタリウスは耳を疑った。だが、上官はこちらのことなどお構いなしに先を続けた。

「彼女には随分と無理も聞いてもらったことだし、仕事を世話してやれたらと思ったんだが、何が気にくわないのか断ってきてね。その辺りの事情を君は何か聞いているか」

「いいえ」

そもそも自分はユリアが士官学校を辞めることすら知らなかったのだ。

「妻の伝で、傍系の皇女様の教育係に推したそうだ。彼女は実力は勿論、身許もしっかりしている上に、立ち振舞いも何ら問題ない。無理強いするつもりはないが、釈然としなくてね」

「本人は何と言っているんですか」

「自信がない。ただその一点張りだ」

確かにその話だけを聞くと解せない。普段の彼女は、思慮深い反面、未知のことに対しては出たとこ勝負な一面がある。少なくともやってもみないうちに諦めたりするようなことは、これまでになかった。

何かある。直感的にそう思い、ついいらぬお節介を焼いてしまったのが運の尽き、この後彼は猛烈に後悔することになる。


「士官学校を辞められるそうですね」

「ええ、元々臨時雇の代用教員の筈が、居心地が良くてつい長居をしてしまいました。次が決まったら、お知らせしようと思っていたところです」

その口ぶりから、恐らくは未だ新しい働き口が見付かっていないのだとタリウスは理解した。

「ミルズ先生が仕事を紹介したいと仰っていましたが」

「奥方経由のものですよね。その件でしたら、既にお断りを」

「立ち入ったことを伺うようですが、何か問題が?」

「とんでもない。身に余る光栄ですが、私如きにはとても務まるとは思えません。ミゼットさんの紹介となれば尚更です。もしも不手際があれば、多大なるご迷惑をお掛けすることになり兼ねませんから」

見たところ単なる謙遜ではなく、そこには確固たる意志が働いているように感じられた。だが、そうだとしたら、彼女が先程からそわそわと気もそぞろな様子でいるのは何故だろうか。

「何を怖がっているんですか」

「怖がる?」

一瞬にして、ユリアの表情が強張るのがわかった。

「そうとしか見えません。事情は知りませんが、逃げ回っていても何も解決しないのでは?」

「知ったようなことを言わないでください。私は怖がってなどいませんし、逃げてもいません。もう私に構わないでください」

彼女はいよいよもって落ち着かない様子で声を荒げた。

「気を悪くされたのなら謝ります。失礼しました」

「ご心配いただなかくても、自分の食い扶持くらい自分で探します。そういうわけですから、残念ですが東方にはご一緒出来ません。貧乏暇なしですから!」

「待ってください」

「いいえ、待ちません」

ユリアは正に烈火のごとく怒り、一方的に喚き立てるとタリウスの視界から消えた。

これまでにも拗ねたり、甘えて我を通そうとするユリアを目にしたことはあるが、それでも本気で怒ったところは殆ど見たことがない。それ故、タリウスは目の前で起きたことを受け入れるまでにしばらく時間を要した。

結果として彼の直感は当たっていた。だが、それはおいそれと他人が触れて良いことではなかったのだ。タリウスは不用意な発言をした自分をひどく呪った。
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