知らないうちに、近くにスーパーができた。OKスーパーというのだそうだ。
できたのが分からなかったのは何の宣伝もなくチラシも出ない。しかも一階はすべて駐車場になっていて上にスーパーがあろうとは思えないほど静かである。どこにも宣伝文句の字が見られないのだ。これって凄いことです。一見そこにスーパーマーケットがあるとは思えないのだ。
道に散乱した自転車の風景があるわけじゃないし、値引きの文句がうたってある張り紙類も見当たらない。
いちばん驚いたことは値引き用のカードを何の手続きもなくハイとくれたことだ。ぼくはこれを待っていた。
以前から、何で値引きカードを作るのに住所や電話番号などを教える必要があるんだろうと思って、不信感が渦巻いていたのだ。どうせこの個人情報をどこぞに売って値引き分を補てんしているのだろうと思うしかないではないか。多分それは当たっていると思う。
物を売るのに「値引きしますから、お宅の住所・電話番号を教えてください」なんていう馬鹿な商店があるものか。値引きをするのにそんな必要はあるはずがない。あの「ポイントカード」なるものは要するにそうやって物を売っているのである。
必要もないそういうことをするのには何か理由がある。その情報をどこかに流しているはずなのだ。最近、人はちょっとしたことでも個人情報だからなどと自分の素性を明かすのを嫌がるが、スーパーのポイントカードなどには一向に危険を感じていないようである。
つまりぼくは、OKスーパーというところでやっとアタリマエの商売を見つけた気分なのだった。やればできるのだ。値引きカードに住所の登録など必要ではないことをこのスーパーが証明しているのだ。
そして他にも意外なことをこの店はしている。
あのレジ袋というのが無いのである。買い物の際は袋をご持参くださいとアナウンスが言っている。ビニール袋は10円でレジで売っている。だから袋も商品なのである。当然店の名前も絵柄も印刷されてない半透明な唯の袋である。考えれば至極当然のことなのだった。
さらに、「基本的」にあのスチロール製のトレーを使っていない。野菜や肉類が、あのトレーに入ってさらにビニール袋に梱包されている風景もない。気分がいい。もうそろそろこういうことにぼくらは慣れるべきなのである。
過剰包装といわれて長くたつがいつまでたってもそれが改められる気配がないのはどうしたことだろうか。こういうスーパーがあるということは、やればできるのである。
それでぼくはこのスーパーに好印象をもちそれまで行きつけのスーパーから鞍替えしているわけなのだが、何とそれまでのスーパーよりも定番品がずっと安いということにも気付いた。目玉商品並みである。ということはこの店はあのやたらにやかましいビラが踊る「目玉商品」という方式も取っていないのだ。
今日は何が安いとか、ポイントが何倍だとか、そういう馬鹿な客寄せが一切ないらしい。気持ちがいい。すべてが簡素である。
しかし思うにだから人気がないとも言える。巷の人たちはあのまがまがしいスーパーの雰囲気が好きなんじゃないだろうか。いつもお祭り騒ぎをしているようなあのウルサさが好いのじゃないだろうか。そんな気がする。だっていつもこのスーパーは空いているもの。
みんな高いの安いのと言っておきながら本当はあのごった返しているお祭りの商店のような雰囲気が、本当は好きなんじゃないだろうか。
しかしいったいこの差は何なんだろうか。これまでのスーパーになにかだまされていたような気がしてならない。
いったいこの先どういう変化がぼくに起こるだろうか。つまり、やっぱりスーパーはス−パーだとがっかりさせられるのだろうか、それともこの印象は変わらないのだろうか。

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