餅をきな粉にまぶして食い、もう一つはみそ汁に入れて食べた。
テレビをつけると『卒業』(1967年)を映していた。1970年に青春だった人はほとんどこれを見ているはずである。
うまくできた作品で、ストーリーの中の人間が反抗と愛着を繰り返す映画で、人の変容をとても辛らつに象徴的に描いているのだ。そして観ている者もそのたびに、また違った嫌悪と愛情を登場人物に投影するのである。観客を一方的に同じ方向にもっていくわけじゃない、見るものそれぞれが違う反応ができるように計算されて実に巧妙な映画だ。
それなのにハッピーエンドの結末としてしまい、あの映像だけが記憶に残ることになる。花嫁略奪映画の決定版である。
しかし最後のバスの中のふたりは妙に慎重で、ぼくらはあの後この二人は幸せにはなんないだろうと確信してしまうのだ。うまい!という映画である。
そのままテレビを見ていると『ベンハー』(1959年)をやっていた、勝手知ったる映画と思いきやほとんど記憶から消えていたのでこれも実に面白かった。あの戦車レースじゃない、ほかのストーリーが見えてきたのだ。いわばキリスト教の布教映画である。主演のチャールトンヘストンはこの映画の前後に『十戒』(1956年)、『偉大な生涯の物語』(1965年)とキリスト教映画に主演している。
だから信心深いかと言えば、とにかく市民権運動に参加したりライフル協会の会長になったり変転のある生き様で天使と悪魔を持っている人らしい。『黒い罠』というオーソンウエルズの監督したカルト映画にも出ていた、不思議な人物だ。

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