アメリカ―ドイツ(グループG)
ドイツの一方的な試合だったが、それをそう感じさせないほど「アメリカの試合」だったかもしれない。
はっきりとドイツはアメリカの牙城を崩すことに苦慮していた。アメリカの守備は完ぺきだった。こういうのを完ぺきというのだろうと思ったほどだ。それほどドイツはもう打つ手がないと感じただろう程にゴールを割れなかった。アメリカは進歩したなと感じた、クリンスマンのどこがいいのだろう。これはまったく意外なことだった。
彼らは相手の攻撃のパターンを読み切ってこのグループステージを戦っていた。定石通りの攻撃では失点しなかった。
結局、ドイツもキーパーにはね返されたボールをミューラーがミドルでたたき込んだ1点だけが得点だった。それはいわば「偶然」の産物だった。つまり偶然が関与したから入ったと思わせるような1点だったのだ。
このアメリカをショートパスで崩すのはかなり難しいと思った。それではパスの出どころを限定されてまんまとカットされてしまい、一気にカウンターを食らうような気がする。
相手のパスの出しどころを限定してカットするやり方は強いチームが必ずすることだが、いつもぼくは感心するのだ。パスを一定の速度で出さしておき、何回目かのパスの出どころを開けておく。すると誘われてそこにパスしてしまう、それで終わりだ。
カットするのは容易なこと、というわけだが、それができるのはごく限られている。その犠牲になるのはいわば日本のように同じようなパスをくりかえして出すチームなのだ。
ま、ことはそう単純ではないかもしれないが、大筋はそういうことだ。そしてこの日のドイツは同じようなパスをつなげざるを得ないようになり、それでアメリカに幾度かのカウンターを食らったのだ。アメリカはそれを手ぐすね引いて待っているのだ。その粘り強さと素早いカウンターは相手がどんなに強くても有効だと、証明して見せたのだ。
次のベルギー戦にはそういう戦いが見れるだろう。
一方このグループのガーナは惜しくも敗退した。群を抜いて強さを感じたガーナのつまづきの元は、やはりこのアメリカとの対戦での残り数十秒の粘りの差だったのである。結果は最下位に沈んだが、アフリカ独特のあきらめの良さとでもいうのだろうか。
この組こそ「死のグループ」だった。
ベルギー―韓国(グループH)
韓国は期待はずれというかがっかりした。こんな淡白なチームは韓国ではない。いったいどうしたというのだろうか、あのシツコサはどこへ消えてしまったのか。
始まってなんだか日本チームを見ているようだった。同じような速度のパス、クロスの甘さ、下手なファウルでもらう反則の笛、これが韓国か?しつこく足に食らいついてくるあの強引さはまったくどこへ行ってしまったのだろうか。
つまり韓国は弱くなった、という印象なのだ。アルジェリア戦での大敗の時と同じように、ぼくはこれはやばいなと感じてしまった。東アジアがヤバイと。
そして前半終了時にベルギーがまったくバカな反則をして(相手のすねを踏みつける)、退場者を出した。丸々後半は11対10で戦う韓国、これならいくらなんでも韓国は勝てるだろうと思った。
ところが後半になっても韓国の攻撃パターンは変わらないのである。同じようなことをくりかえしているし、ミスがあまりにも多すぎる。クロスなぞまったく合わず、なのである。
まいったなあ、これじゃロシアがグループ突破してしまうじゃないか、プーチンが笑ってしまうじゃないかと心配になった。向こうの試合ではロシアが先取したとの情報が入った。
そのうちに韓国はカウンターを受けること再三、ついには相手のシュートのこぼれ球に詰めることをせず、がら空きになったところにベルギーが入り込んで難なくゴールを許してしまったのだ。しかしまだ10分以上あるというのに、怒涛の反撃さえ見せず相手の軍門に下ってしまった。0−1で終了の笛。
あまりにも不甲斐ない韓国だった。
ところが向こうではアルジェリアが頑張ったのだ。ロシアのゴールをこじ開けて同点として終わったというのだ。見事これでロシアを蹴落として、初めての(多分)グループ突破を決めたのだ。おめでとう!
アルジェリアこそこの組で勝ち上がるに値するチームだった。

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