マクドナルドで本を読んでたら突然ドカドカっと二階から数人が階段を下りてくる足音。それがいったい何事?というほどの尋常ではない感じで、うっせえなと思ったとたんにガラーン!!とけたたましい音がして鉄の棒が落ちてきた。
ぼくはその螺旋階段のちょうど下の席にいたのだから驚いた。振り返るとその一団は揃ってマスクをして黒っぽい服を着た一見「暴走族」風の出で立ちだった。ぼくはちょと頭に来てずっと彼らを目で追っていたら、外に出るなり逃げるように自転車を引きずっていた。
まだ何があったのか判らなかったが、すかさず店員の一人がユーカンにも飛び出して来ていちばん遅れたやつを捕まえた。その店員がそいつの胸倉をつかんでコノヤロウと言っているのでコリャただごとではないぞと思った。しかし店員は1人少年たちは6人なので多勢に無勢と思ってぼくは興味半分助太刀半分で飛び出した。
ところがである、捕まった大柄の少年はスイマセンなどと言っている。いやに気弱なやつなのだった。なんか意外な展開だ。そしてまた店員のほうは、ちょっとこっちへ来いよ!などといやに威勢がいいのだ。つまり喧嘩にも何もなっていないのである。
ぼくは気を削がれてどうしたらいいのか場を失ったわけだ。
そしたらスゴスゴと、ほんとにまったく絵に描いたようにスゴスゴと戻ってきた少年たちに向かって、おまえらお客さん(ぼくのことだ)に当たったらどうするんだ!こっち来て謝れよ!と言っている。すると奴らは借りてきたネコのようになってしまい言われたとおりに、スイマセンなんて言うんだ。
いったい彼らに何があったんだ?さっきの勢いは何だったんだ?もう完全にその場を取り仕切っているのはその店員である。
でその後はずらりと並んだマスク少年を前にして「お前らなぁ・・・・」と店員の説教が始まってしまった。もうこれまでだ。もうぼくには興味はない。
このうるさくて従順な少年たちをどう理解したらいいのだろう。あまりにも「弱い」。
ちょっと悲しくなって店を出た。
事のついでに話すと、今日は小さな出来事でまったく違った思いを経験した。
家の近くをジョギング中に前から点滅灯をつけた自転車が来た。近づいてきても避けようとしない。
間近に来た時にやっと気付いて危うくぶつかりそうになり止まったが、自らバランスを失って倒れそうになった。ぼくは彼の腕を支えてから「見えなかったの?」と幾分強い調子で言った。見ると初老の人だ。
そしたらゴメンでもスイマセンでもなく「ああ倒れなくて良かった」と言うのだ。思わずぼくも、ああ転ばなくてよかったねと言ってしまった。それで彼はハハッと照れ笑いをしてそのまま行ってしまった。たった数秒間のことだったが、不思議に気分が良かった。
危ない思いをしたのにいったい何でこんなにすっきりした気分なのだろう。どう見てもむこうの不注意なのに。
もちろんその意味はすぐに分かった。それはその人が感じたことをそのまま口に出したからだ。思ったことだけを言ったからだ。

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