ぼくのモーターサイクルはホンダのXR400(改)である。東北道を白河まで。途中三回休んだ。オフロードサイクルは疲れる。なんたって風がモロに胸に当たる姿勢だ。
ここ(白河)から林道を目差して西に進むが、入ったところがなにか駐屯場とかである。すぐに行き止まりになって今度は別荘地のなりかけのような所で、良いダートだったが何回も同じ所に出てしまうほど狭い。諦めてしばらく行くと期待していなかった所に鎌房林道というダートがあった。どんどんと高度を上げていく。するとまったく通るのがやっとというほどの(草が迫っている時期なので尚更)林道に入る。ここはしかしどうも誰かが通った跡があり、抜けられそうである。
それにしても最近珍しいほど荒れた林道だ。荒れていると言っても崩れているわけではなくただ比較的大きく丸い石が走りにくいと言うほどだ。この辺はそういえばなぜか丸くなった小石の砂利が多いことを思い出した。石が動いてしまって走りにくいが走り甲斐はあるということだ。
この道は思いのほか長い。どうなることかと思っていると砂利道になり走りやすい気持ちいい所になった。
と思いきやその道が突然広い舗装道!になる。どうなっているんだと思ったらそこはスキー場だ。羽鳥湖のスキーリゾートの建設中なのだ。それにしても今どきスキーリゾートとは!時代錯誤もいいところだ。ほんとに完成するんだろうか。して欲しくない。とにかく道路は新しく広いできたてである。ああいやだ。
118号に出て会津下郷に向かう。芦の牧温泉からの芦の牧線という林道に入ってみたがこの道はどんどん狭くなり揚句は草に阻まれてしまったが、誰も通らないようながけっぷちは土が軟らかくてちょっと怖いほどだった。しかし入口にゲートがないのは良心的だ。
引き返してもう一本の支線に入る。小さな黒い兎が前をどんどん逃げていくが足が遅い。子供だろう。なぜかぼくの行く轍のとおりに逃げるのですぐ追いついてしまう。しばらくゆっくりと付いて行くかたちになったが、そのうさちゃん突然とまってしまい、ぼくの目の前で横向きに坐ったまま動かなくなった。おいおい俺はおまえをとって食おうってんじゃないぜ。こんな所でもう運命は尽きたなんて顔しないでくれよ。
しばらくはそこで停まっていたが観念してしまった動物はもう動こうとしないものなのか。
なにか自分の運命を受け入れてしまったようで悲しい習性だなと感じたな。早く行けってばと手を振っても動かないので轍をかえてゆっくりと彼を追い越した。それでうさちゃんもやっと草むらに入ったというわけ。
はじめから草むらに逃げりゃいいじゃん。
今日の林道は短かったが、いろいろと変化に富んだ走行で面白かったし疲れた。会津若松の親戚の家で泊ったが、テレビで世界陸上を見ているうちに横になりたくなって寝てしまった。
翌日はゆっくりと出た。ホテルじゃなく知った家に泊まるとどうしてもゆっくりとしてしまって出る足が鈍るものだ。結局出たのが10時半でこれが後で後悔の種になる。
会津若松から252号で只見川に沿って走る。
しかし道を間違えて49号をどんどん西へ行ってしまい、西会津に行ってしまった。西へ行けば小出方面に行くと勘違いしていた。それで400号に戻って南に下ったがこの道がいい。舗装だが細かったり荒れていたりでカーブの連続が楽しめる。ここが砂利道だった頃に走ってみたかった。まあ、そんなことばかり考えて走っているのだ。
只見川は広い川だ。思いのほかゆったりとした流れで少し驚いた。もうちょっと荒々しいと思っていたから。

只見駅に着く手前に蒲生岳という小さい山がある。小さいがすっくと伸びたその姿が美しい。「会津のマッターホーン」などという渾名がついているが、余計なお世話でしかない。これはこれで充分見事な山だ。今度いつか登ってみたい。
しばらくすると田子倉ダムのコンクリートの塊が見え、ここからやっと山に入るわけだ。
峠に登っていくとどんどん高度は上がり田子倉湖が遥か下の方にまるで神経細胞のごとく、そして川はニューロンのごとく。とても美しい景色だが、景色を堪能する感性はぼくには欠けている。とにかく曲がりくねった舗装道をクリアする快感にひたる。ここら辺に来るともう車はほとんどまばらで思いのままにコーナーにトライできる。何回やっても本当に満足ができるコーナリングは出来ない。いったい何百回コーナーを攻めただろう。
このあたりの崖っぷち道路には雪よけのシェルターが回廊のように山をトラバースしている。この風景は壮観だが、人為的な風景でもある。時にはそんな人工のなせる業が美しいと思うこともある。
すでに涼しいことが当たり前に感じていた。これで雨でも落ちてくりゃ防寒を考えないといけないなと思いつつ峠(六十里越えトンネル)を越え福島県から新潟県に入った。右に浅草岳への登山道を見る。
252号はいつまでも只見川と只見線といっしょ。ずっと同行の仲間だ。一昨年トロッコ列車でとおった行程を今は逆に走っている。その時はこの道路がこんなに広い道路とは思っていなかった。路線は昔のまま道路は年々新しくきれいになっていく。
すきっ腹に何かを入れなければと「入広瀬・道の駅」で休んでそばを食った。この「山ごっつぉ蕎麦」はうまかった。以前桧枝岐で食った固くてあごが痛くなるほどの蕎麦に次いでうまかった。ウド、芋がら、ギボウシ、ミズナ、ゼンマイなどどっさりと入っていた。
さてと腰を上げて考えたがこれから小出にでて奥只見湖を抜ける時間がキビシイ。その352号というのがはたしてオートバイを通させてくれるのか、もしくはそのあとの林道も果たして通行できるのかと考えると気分はへなへなとしぼんでくる。そしても一つの理由はこのXRのライトが暗い道ではどう見ても心もとないほど貧弱だからだ。
あと3時間早ければとほぞをかんだ。

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