先週東京に冷たい雨が降った頃、山は雪だったようだ。
本仁田山の頂上の北斜面には真っ白い雪が張り付いていた。
12月11日(日)、今日は川苔山に行く予定だった。10時ごろに奥多摩駅に着いたが、川苔橋までのバスが1時間も先だ。それでここから歩いて、本仁田山を通っていくことにした。
奥多摩駅を下りて進行方向にちょっと行くと、正面に山にへばりついている大規模な工場が見える。この工場があるために一旦左に橋を渡ってからもう1回こちらの側に渡り返すことになる。この短い行程でこの石砕工場の全貌を目にすることが出来るが、何とも不思議な光景だ。まるで山の一部が変身して出来上がったような建築物だ。自然の風景の中にはめ込まれたオブジェのようだ。こんな巨大な物体が奥多摩駅のすぐ隣にあろうとは、殆んどの登山客は気が付くまいよ。
ここが奥多摩の「顔」の1つであることは、その巨大さから言っても当然なのだが、パンフレットを覗いても載っていない。観光案内という範疇からは外れているということなのだろうが勿体ない話だ。「自然らしさ」を売り物にする近ごろの風潮からすれば、どうも見られたくないものなのかもしれない。しかし、同市の思惑はどうであれこれが大いなる見ものであることには違いない。とにかくシュールだぜ。
この工場から引かれたトロッコ線が、昔はたくさんの岩石を運んだに違いない。そのトロッコ用陸橋も今は使われずに風景の一部になっている。自然の中に、今は廃墟となってしまった「夢の跡」というのもどこか殺伐としてぼくは好きだ。
さあ、この「モニュメント」を過ごして山に入る。
始めのうちは舗装道を行くがこの道は殆んど車も人も通らない細い道路だ。30分ばかりいくと左にぐいっと道は曲がり、民家が右手にある。正面の沢を上っていくととんでもない方角にいってしまう。この民家の中を通って東の登山道を選びジグザグを登る。
この民家の裏手を右に入る
ここからは延々と急勾配の坂を歩くことになる。これがこのルートの人気のない原因なのかもしれない。変化が乏しい。
尾根に出たところで一息ついて顔を上げると行く手が見えてしまうほど北に一直線に登山道は続く。本仁田山に着くまで一切「遊び」がない。ハイ登って、ハイ着きましたってなもんで休ませてくれない。まだかまだかと思いながらいくつもの峠を越える、という「くすぐり」がないのだ。
しかし左手には石尾根の絶景が見えるし、考えようによっては真面目一直線の登山も悪くはない。
本仁田山の頂上は雪の絨毯だった。突然のひと気。10人ほどいた。軽く挨拶してすこし下り、にぎりめしを一個。周りは一面真っ白。いい気分だ。
鳩ノ巣への分岐(ここがコブタカ山と言う、どこが山なんじゃ!ってなところ)を過ぎていったん大ダワという所に下り再び川苔山への急登になるが、ここに張り紙あり。
登山道が崩落して通行止めになっている。ロープをくぐって様子を見ると上の方には既に崩落防止の工事がしてあり危険はなさそうだ。ま、張り紙にある通行止めは、危険だからというよりも登山道の整備が済むまでお待ちくださいということなのだ、と解釈して先に進む。
ここは川海苔山のまき道でほぼ水平に造られているから歩き易いし、なかなかルートとしては良い感じだ。しばらく行くと山頂への道が右手に出てくるので、ぼくとしてはお薦めのコースだ。この工事が終わって通行止めが解けたら行くといい。メインコースより静かで眺めもいいと思う。

ぼくはそのまま、川苔山には行かず、百尋の滝を目指した。気分次第でそこから川苔山に登ってもいいやと思ったからだ。しかしほとんど水平に伸びた登山道が楽チンでつい道を失い、気がついたら林の中に入っていた。引き返すのもしゃくだし、こっちに行って見ようなんて黄色い塗料がついた杉の木をたよりに下っていくと道がなくなった。あらら、このしるしは伐採予定の木につける黄色かいな。
川は下に見えるし道路も見えてきたのでそのまま下りたが、足元が悪くてまた脛に傷をつけてしまった。天気が良いと考えもなしに歩いてしまうのだった。多分あそこで右に山を巻いていくところを直進してしまったのだろう、と見当をつけた。
ほどなく百尋の滝から降りてくる登山道に合流した。
2時15分、細倉橋にはすぐ出たが、この川苔谷の沢はいくつかの滝があってほんとにきれいな水の流れが臨める。この橋がこの行程のベースになる。
しかしここから舗装道を1時間ばかり歩かないとバス停のある川苔橋につけない。ここが舗装されてなければなぁといつも思う。この舗装道はソバツブ山の直下まで続いているが通り抜けれるわけじゃなし、舗装にする必要はまったく無いのじゃないかな?
バス停のある日原街道からこの林道に入る入り口には仰々しい鉄のゲートがつけられているがこれは開閉して車が入れる。そのために車ならば川苔山の往復は容易に出来る。
じゃ、何でこんなゲートがあるんだ?
川苔橋バス停前
(12月12日記)

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