オルタナティヴロックバンドVery Apeのシンガー
「Ape」のブログでございます。
基本的には過去のことについて語ります。
2010/10/8
「戦慄のオルタナティヴ地獄vol.12」
過去日記
すでに一週間が経過しようとしておりますが、10月2日に3年ぶりに開催したVery Ape企画「戦慄のオルタナティヴ地獄vol.12」も、ご出演いただいたアーティストやご来場いただいた皆様のおかげで、大成功のうちに無事終了することができました。本当にありがとうございました!
さて、当日我々Very Apeのステージが最高だったかどうかはさておき、僕にとってあの日は忘れられない最高の夜となりました。
そもそも、なんで自分はいい歳こいて未だにバンド活動に明け暮れているのかというと、「やめるっていう発想が無いから」という訳なんですが、でも何年か前までは評価とか人気とかを意識し過ぎて、音楽とは別のところで神経を擦り減らしてしまって勝手にしんどくなってた時とかもあったけど、今はそういった邪心というか計算というか、そんな類のものはほとんど無くて、単純にバンドで音を出したり、ステージでパフォーマンスをすることが最大の喜びになっているから、やめるという発想がないのです。好きなことをわざわざ自分から進んでやめる必要なんてないですもんね。
あと、ちょっと話が逸れるんですが、一般的に「バンド(特にロック)は若い人間のやるもの」とか「いつまでも諦めきれずにバンドやってて見苦しい」とか、そういう考え方って、かなり多くの人が持っていると思うんですよ。だけど、じゃあそれが例えば音楽以外の芸術とかスポーツとかでも同じことが言えるのかというと、多分そんなことは無いんだと思う。
僕も先程敢えて「いい歳こいて未だにバンド活動に…」みたいな書き方をしたけど、それって「バンド=若い人」という勝手に作られたイメージのおかげ(せい)で、違和感無くすんなり読み流せるんだと思うんですよね。本当はいい歳こいてても若くても自由にやりたい人はやればいい訳で。
と言うかむしろ、ここから先はあくまで完全なる僕個人の考えですが、若くてバンドをやっている人よりも、いい歳こいてもバンドを続けている人の方が、本当は圧倒的に本気度が高いんだと思うんです。
と言うのも、社会的な責任とかってどんな人でも年々大きくなっていくじゃないですか。バンドやってるとかやってないとか関係なく。で、その大きくなっていく責任の重圧に負けて、多くの人は簡単な方に、楽な方に、ぬるい方に行ってしまいがちだけど、その重圧に負けずに、相当なエネルギーを必要とするバンド活動を生活と両立して行っていくというのは、想像以上に大変なことである。
だって、ほら。例えば三大欲求とか言われているうちの1つ「性欲」についてだけど、どんなに女性がベッドの中で艶っぽい振る舞いをしても「今日は疲れているんだ…」とか言ってそっぽ向いてしまう男性の描写なんてテレビで何度も見たことありますよ。本能レベルの欲求であるはずの「性欲」なのに、ですよ。
でも、やるんですよ。バンド活動は。生活に疲れていても、更に疲れてしまうようなライヴ活動を。どんなに好きなことでも、体が付いていかなくなっちゃいそうな時とかは確かにある。それでもやるんですよ。「なりたい自分」というものが明確にあるから。
ふと余所見をすると、リゾート地でのんびり過ごす恋人たちが見えて、一瞬「いいなぁ…」とか思うけど、それでも自分自身を信じて続けていくんです。
で、上に書いたように「好きだからやっている」というのは、もちろんそれはそれで間違いではないんだけど、もうちょっと具体的に書くと、若い頃に自分が散々聴いたり観たりして影響されまくったアーティストたちの様に、びっくりする様な格好いい音を出してみたいとか、ドキドキとワクワクでおしっこをちびってしまいそうな観たことも無いようなパフォーマンスをしてみたいとか、それが僕がバンド活動をずっと続けている理由の中で大半を占めています。自己実現ってやつですね。
その影響を受けたアーティストたちの中でも、「KING BROTHERS」の影響は僕にとってかなりのものだった。
高校生当時NIRVANAフリークだった自分は、少なからずNIRVANA等のオルタナティヴ・ロックの影響を受けていたであろう日本のギターロック系のバンドにも興味を持ち始め、それらのアーティストがよく掲載されていたロッキング・オン・ジャパンなども読むようになった。
高校生なんてお金もないし、せっかく買った雑誌は必ず隅から隅まで読んでいた。まだまだ世の中のことなんてちょっとぐらいしか知らない高校生にとっては、雑誌などのメディアの影響力はとてつもなく強大で、そこに載っているアーティストたちの言葉は僕の感性に刺さりまくった。その中でもひときわ異彩を放っていたのはKING BROTHERSのインタヴュー記事で、今となってはそのページを担当した人にお礼を言いたいぐらいなんだが、もう雑誌を読んでいて「この人たちの音楽は一体どんな音楽なんだ!」と気になって仕方なかった。
でも、当時の僕はどこに行けばインディーズアーティストのCDが購入できるのか分からなかった。今のようにインターネットも普及していなかったし、近場に大きなレコードショップも無かったし。なので、僕はすぐにKING BROTHERSのCDを手に入れることが出来ずにいたのだが、ある日近所にある本屋とCD屋とレンタル屋が合体したような店で立ち読みをしていて、フラっとCDコーナーに近づくと、なんと「インディーズコーナー」と書いてある小さな小さな一角が存在するではないか。おいおい!こんなのがあるの初めて気づいたぞ!と思うと同時に興奮してそのコーナーを漁っていると、売っているじゃないですか。KING BROTHERS。
正直、その頃の僕は一気に音楽への興味が加速していた時期で、「インディーズコーナー」にはKING BROTHERS以外にも前々から気になっていたアーティストのCDがたくさん陳列してあった。お金の無い高校生はその宝の山からせいぜい1枚か2枚買えていいところという程度の所持金しか持ち合わせておらず、非常に悩んだ。
悩みに悩んだ挙句、シンプルに一番ジャケットの格好いいCDを買うことに決めたのだが、それがKING BROTHERSの「星盤」だった訳である。帯に書いてあったメッセージも強烈だったしね。
で、家に帰ってから早速CDを聞く訳だけども、本当にびっくりしたね。格好良すぎて。ちょっとおしっこちびってしまったかも分からん。
それから僕は完全にファンになって阿呆みたいにCDを聴きまくって、KING BROTHERSの音楽は僕の青春時代の大切な思い出たちとは切っても切れない関係になっていきました。
その後、何年も経ってから、観にいっていたライヴハウス近くのコンビニで出待ちして、初めて西宮の大統領ケイゾウさんに話しかけた時は、マジで心臓が口から出るかと思った。嘘偽り無く僕は震える手で自分のバンドの音源とフライヤーを差し出して、ケイゾウさんがそれを快く受け取ってくれた時は完全におしっこを漏らしてましたね。
実はその時(5年ぐらい前かな?)に「自分たちが主催するイヴェントにKING BROTHERSに出演していただき、共演するのが夢です!」的なことを伝えていて、今回「戦慄のオルタナティヴ地獄vol.12」でとうとうそれが実現したのである。本当に感慨深かった。
今回は、そんな思い入れのあり過ぎる「KING BROTHERS」の他に、同世代で東京で活躍している最高に格好いいバンド「BlieAN」と「URBANフェチ」にも出演していただいた。
BlieANは2年前に、URBANフェチは今年の5月に初めて共演と、彼等とはまだ出会ってからの期間が短いですが、共演する度にどんどんレベルアップしており、それを見て嬉しいやら悔しいやらの感情が入り混じりつつ、メチャクチャ刺激を受けます。
彼等には今と変わらぬスタンスを貫き続けて、もっともっとたくさんの人たちに支持されるような大きな存在になって欲しいです。
「戦慄のオルタナティヴ地獄」は冒頭に記載したとおり、実に3年ぶりの開催となった訳だが、何故その3年の間開催してこなかったのかと言うと、単純に怖かったんでよね。
と言うのも、自分たちの見える範囲でのここ最近のライヴハウスシーンの状況は、どこも集客に苦しんでおり、それを打破するための具体的な解決策も見つかっておらず、実際自分たちもイヴェント集客のための有効なプロモーション手段に確かな答えを持っていた訳ではなかったし、以前もこのブログ上で書いたことがあったと思うが、一度Very Apeはイヴェントの運営に心身ともに疲れ果てて解散の危機に瀕したことがあったため、また同様の事態を招いてしまうのではないかという不安もあったし、とにかくリスクが高すぎた。
でも、オルタナ地獄の運営方針のひとつでもある「こんなに面白いアーティストがいるということをもっと広く認知してもらいたい」という思いは、その3年の間も心のどこかにずーっと引っかかっていて、そのための手段のひとつとしてオルタナ地獄が自分たちの中では一番取っ掛かりやすく、かつ結果にも繋がりやすそうだなということは分かっていたけど、怖いからあんまり深く考えないようにして、でもやっぱりなぁなんてまた悩んで、そんな風に僕個人の中では長いこと悶々とし続けていたのだが、それはVery ApeのギタリストT氏もほぼ同じで、「やる⇔やらない」の間で揺れまくった挙句、たまたま「やる」の方に思考が傾いているときに、突然、彼の後先考えなさっぷりと勇気の決断が発動されて、メンバーに「イヴェントをやりたい想いとその理由」を熱く語りだしたと思うや、その勢いにメンバー皆も引っ張られて、開催の決断を下したのである。
で、結果的に、やってみてどうだったかと言うと冒頭に書いたとおり「忘れられない最高の夜」になったし、本当にやって良かったと思いました。ここはT氏に感謝しなければならない。
ステージの上からKING BROTHERSのギタースクリーム担当マーヤ氏が放った「このイヴェントを続けて欲しい!」という言葉が胸に突き刺さって、心底感動しているんだけど、その場ではその喜びをどう表現したらよいのか分からなかった。でも、その言葉を受けて、ちょっとしたリスクぐらいなら軽く飛び越えていけるような勇気をもらったことだけは確か。
ちなみに、今後のオルタナ地獄の開催については今のところ未定だけど、明日メンバーでミーティングして、その辺の方針などを決める予定。

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