オルタナティヴロックバンドVery Apeのシンガー
「Ape」のブログでございます。
基本的には過去のことについて語ります。
2006/7/22
さあさあ、皆さんお待ちかね!
“わたバン”(私のバンド遍歴)の続編が始まるよ〜!!
今回はいよいよY氏の正体が明らかになるのか!?
それは僕自身、書き始めてみないとどうなるのか分からないのですよ。
どうせなにも考えてないからな!へっ!!!
ということで、サクサク進んで参りますよ〜〜〜!!
さて、前回はY氏の年齢について、僕が凄くかわいい感じでテンパッちゃったところでストップしてしまいましたが、
その後テリーさんに確認しましたよ。Y氏が今何歳くらいか。
そしたらね、ビックリ!!本当に40歳くらいだって言うじゃありませんか!!!
エェェェェ〜〜!!!ですよ本当に。
ということで皆さん、是非これから始まる世にも奇妙な物語を、Y氏が40歳近く(当時は30歳くらい)だと思って聞いて下さいよ!!
まだ肌寒さの残る、とある休日に、僕とテリーさんはY氏との待ち合わせ場所である、
埼玉県にある某楽器屋のメン募コーナーの前でそわそわと並んで立っていた。
周りに人は数人いるが、どうやらまだY氏は来ていないようだ。
何度も言うが、僕は当時中学二年生である。
こういう風に、人と待ち合わせをした経験も恐らく殆どなかった筈だし、
必要以上に緊張していたことだろう。
電話でY氏は、なにやら大リーグ(ここがミソ)のどっかのチームの野球帽を被って来ると言っていた。
だから僕等は必死になって大リーグの帽子を探したんだ。キョロキョロキョロキョロ…。
しかし、見栄っ張りな僕達は、本当はもの凄くテンパッてるくせに、
「あ〜、なんか腹減んね?」
「うん、、なんか変な匂いするよね…。」
「あれ?そういえば昼飯喰って来たっけ?」
「分かんねぇ、でも多分うんこの匂いではないと思うけど…。」
と、冷静に、小粋に会話を楽しんでいるフリをして、実は全然噛み合ってなかったり、
超うわの空だったりしていたのだが、そんなことを繰り返していた数分後、
視界にフッと大リーグチームの野球帽が入って来たのだ…!!
「(はうあっ!!!)」
「……ぉい……:*;+>,]/@_:#……」
「(えっ?なに!?)」
「…ぁ…ゎ、ぇぃ……」
と、二人とも声にならない声でお互いに「行け!行け!」的なムードを出しつつ、
肘でツンツンしあっていたのだが、そうこうしている内にその野球帽は、
スタスタと僕等の前を軽快に通り過ぎていきそうになったのだ。
そこで「まずい!」と思った僕はテリーさんの背中を力いっぱい押すと、
テリーさんはウマイこと「おっとっと…」とか言いながら、
その大リーグの真ん前に躍り出て「これはもうお前が行くでしょ」的な空気はばっちり作れたのである。しめしめ。
するとテリーさん
「あのぅ、すみません、もしかしてYさんですか?」
すると大リーガー
「え?あ、違いますけど…。」
するとテリーさん、顔真っ赤。
という感じで、人違いだったのですよ、これが。
それで二人ともヘラヘラして恥ずかしいのを誤摩化しながら、
またメン募の前に立っていたのですが、
一回アタックしたもんだからなんか少し余裕出て来ちゃって、
微妙に風格なんかも出てきてしまったりしたりしてね。
まるで、ナンパの時と同じ感じで、
街に出て一人目に声かける時はメチャクチャ緊張するのに、
そこで玉砕してしまえばもう無敵。
二人目以降はもう「次ィ!!」「ハイ!次ィ!!」
とサクサク行けちゃう感じと同じなんですよね。きっと。
ハっ!チョット待ってくれ!!
これじゃまるで僕がナンパとかしたことあるみたいじゃないか〜〜!!!
まぁ、それぐらいあるけどさぁ。
で、そんな感じで少し余裕出しつつ、また野球帽を探してたんですよ。
するとまた、フッと大リーグっぽいのが視界をかすめたのです。
「おい、今度はどうかな?(笑)」
「どうせ違ぇだろ(笑)」
「な!俺もそう思う(笑)」
「じゃあちょっくら行ってくるわ!(笑)」
と、言ってテリーさんは軽快に話し掛けにいったのだ。大リーグキャップの男に。
「あのぅ、すみません、Yさんですか?」
「あ、そうです、Yです、あ、どうも」
!!!!!
キャー!!来たよ、本物!!
と、僕等は完璧に緊張感が抜けていたので、軽く凍り付く。
しかし、会ってみてから僕は大事なことに気付いた。
相手は大人じゃないか…。何で会う前に気が付かなかったのだろう…。
僕は大人なんてそれまでの人生で、親か、親戚か、友達の家の親か、先生か、近所の商店街のおばちゃんくらいしかしか知らなかった。
瞬間、緊張や焦りからか妙な汗が噴き出してきた。
まずい…僕はきちんとしたマナーとか分からないぞ…。
まさかこんなタイミングで大人と接することになるなんて……。
もっとちゃんと、新聞とか、ニュースとか見とけば良かった…。
なんて、大袈裟に感じるかもしれないが、
まだ世の中のことなんて何も知らない中学生にとっては、
大人と接することはこれくらい大問題だった筈である。
それはまるで初めてのセックス、初めての高級フランス料理、初めての結婚披露宴のスピーチ、
等になんの予備知識も持たずに挑むくらいの勢いがあるのだ。
そんな風に凍り付いた頭で、ピヨピヨと焦っていたのだが、
冷静にそのY氏の風体を観察してみると、なにかがおかしいのだ…。
なんというか威厳が無いと言うか、大人には見えないと言うか、
髪型が“まことちゃん”ばりのざんぎり頭だと言うか、服が全体的に黄ばんでると言うか、
終止ヘラヘラ笑っていると言うか………。
だんだん「こいつ本当に大丈夫か…?」的な感じで僕が思っていると、
「じゃあ、取り合えずそこらの喫茶店でコーヒーでも飲みますか。」
と、Y氏は慣れた感じでそう言ったのだ。
「(はうあっ!!やっぱりこの人は大人なんだ!!
コーヒー、喫茶店……大丈夫か俺…。ちゃんとその場を乗り切れるか…!?)」
当然、当時中学生の僕は自分から喫茶店に行ったことも無ければ、
外でコーヒーを飲んだことも無い訳で、焦る焦る…。
取り合えず場所を移すってんで、近くの喫茶店まで歩きつつ、軽く話をする。
「僕はねぇ、清志郎さんが大好きなんだよ。RCサクセションって知ってる?」
とY氏。
しかしながら、僕等が当時それを知っている訳は無い。
なにせ、そもそもB'zのコピーがやりたくて、メン募を出していたくらいなのに…。
というか、この人は一体何を見て僕等に電話をくれたんだ…?
喫茶店までの道中、といっても結構短かったんだが、Y氏は喋る喋る。
緊張して、借りてきた猫のように大人しく、相槌しか打たない僕等をよそ目に、
一人でペラペラ喋っては、ハハハ、と笑う。
しかも声がやけにしゃがれていて、空気の漏れるような声で、ハハハ、と笑うのだ。
僕等は、そのY氏の、ハハハ、のタイミングに何となく合わせて、
ハハハ…と笑うのが精一杯で、当時無知だった僕等には、
色々なロックバンドの名前等を挙げつつ話すY氏の話の内容が全く分からなかった。
喫茶店に着き、Y氏とテリーさんがアイスコーヒーを頼んだので、
僕も慌てて同じ物を頼んだ。
「よ〜し、ここで子供だって言うのがバレたらおしまいだ!」
という訳の分からない事にこだわり、僕は喫茶店シロウトだと思われないように、
上手くこの場を乗り切るということだけに情熱を燃やした。
アイスコーヒーが来て、皆の前にガムシロと、ミルクが並ぶ。
僕は迷わず、ミルクを開けると、全部コーヒーに注ぎ、
次にガムシロも同様に注ごうとして、他の二人を見て目を疑った。
テリーさんは何も入れずに飲み出しているし、
Y氏はミルクとガムシロを両方とも半分ずつくらいしか入れていないのである。
それを見て僕は「大人って難しいぜ…」とか思いながら、
ガムシロを半分だけ注いだのだ。
まぁ、そんなこんなで、
取り合えずまず初めにお互いの好きな音楽等について話し始めたのだが、
なんと言ってもY氏の声のデカイこと…。
それはもう店中にわざと聞かせてるんじゃないかってくらいですよ。
しかも好きな音楽の話しながら、突然デカイ声で歌い出すし。
そりゃあ周りのお客さんも普通にこっち見てる訳ですよ。
で、しまいにはテンション上がってきたY氏は、
テーブルを叩いてリズム取りながら歌うんです。
その時、僕は思いましたね。
「恥ずかしぃ〜〜!!!!」
って。
「えっ!?コイツやっぱりちょっとおかしいんじゃないの!?」
って。
ちらっとテリーさんの様子を見てみると、やはり恥ずかしそうで、顔真っ赤。
ちらっとY氏の方を見てみると、気持ち良さそうに歌ってる…。
あぁ、あぁ…しかもテーブル叩いた時に半分残したミルクがひっくり返っちゃって、
上着の袖にべったりミルクが付いてるじゃない…。
「え!?誰!?……最初にコイツのこと大人って言ったの誰!!?」
僕は恥ずかしさで熱くなっていく頭の中で必死に考えた。
僕は一体こんなところで何をやっているんだろうか…。
こんなところで30近いヤツに辱められてていいんだろうか…。
バンドをやるってこういうことなのか…?
大人になるってこういうことなのか…?
違うよなぁ、コイツがおかしいだけだよなぁ…?
どうなの!?どうなんだい!?
するとY氏がふと
「なんか僕だけ歌ってもアレだから、君もなんか歌ってよ!」
と、しゃがれた声でテリーさんに絡む。
するとテリーさん
「え…ここでですか………あ、いや……、え〜っと……」
するとY氏
「恥ずかしい?」
するとテリーさん
「あ、はぁ…」
するとY氏
「まぁ、今はしょうがないよね。もっとやっていったら平気になると思うけど…。」
と、ヘラヘラ前歯の無い笑顔を浮かべ、
カサカサでボロボロな手で寝癖だらけのざんぎり頭をポリポリ掻き、
ハハハ、と空気の漏れるような声で笑ったのだ。
この頃の僕にはY氏の言う意味が分からなかった。
というかY氏の存在自体意味が分からなかった。
でも、今の僕はこう考える。
Y氏は下の中のいずれかだったのではないだろうか。
1、一般常識では考えられない奇抜な行動を取る天才肌。
なんか声もガラガラだったし、ロックスターになれる人材だったのかも知れない。
2、実は少年に興味がある変質者で、少年が恥ずかしがる姿が大好き。
3、ただのジャンキー
4、ただの馬鹿
絶対にこの中のどれかだ。間違いない。
彼は明らかに特殊な人間だったと思うし、今出会ったら一秒でも早く別れるよう、
あの手この手を考えると思う。
僕とテリーさんにとって、彼はバンドをやっていく上で初めて会った人間であり、
僕等には他に比べる対象が無かった。
だから、こういう場合の適切な対処方法が分からなかった。
喫茶店から出るとき、Y氏はこう言ったのだ。
「じゃあ。これからもヨロシクね!また連絡するよ!」
「え!?なになに!?俺等結局一緒にバンドやんの!!!!??」
つづく

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