2014/10/31

ザ・トレンチ塹壕 感想  ベン・ウィショー

イギリスで世界大戦と言えば第一次の方であると、その時代が舞台の「パレーズ・エンド」や「戦火の馬」「ダウントン・アビー」を見て知りました。

トレンチ・コートの語源になったトレンチ=「塹壕」の様子もその映像やお芝居で見ましたが、まさか、そのものの映画(DVD)まで見るとは自分でも予測していませんでした。

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「ザ・トレンチ<塹壕>」1999年イギリス映画。
監督/脚本:ウィリアム・ボイド
撮影監督:トニー・ピアース(アンダーワールド、眺めのいい部屋、ハワーズ・エンド、ホワイト・ファング)
キャスト:ポール・ニコルス、ダニエル・クレイグ、その他とベン・ウィショー

第一次世界大戦における最大の会戦であり、イギリス軍史上最大の失敗だった「ソンムの戦い」を描く。この映画がイギリスで作られたのは話がわかります。が、日本でもこの映画は全国劇場公開され日本版DVDまで発売されていたとは知りませんでした。しかもアマゾンで\463?!

ベン・ウィショーのデヴュー作がこれで、しかも彼がヘルメットでダニエル・クレイグの鼻をへし折った、と知った時には興味を持ちましたよ。しかし出番もそんなにないみたいだし暗そうな戦争映画を英語オンリーで見るのはハードだからきっと私はこの映画は見ないだろう、と思っていた私がポチってしまうには十分な理由でした!


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物語は、攻撃命令が延期された塹壕の中での、兵士たちの会話が中心です。延期決定から突撃まで二日間の物語。

ダニエルは軍曹ウィンター役で、彼の上のハート中尉(ジュリアン・リンド-タッド/THE HOURにも出てました)と小隊の部下に挟まれた中間管理職みたいな役です。一応主人公はビリー(ポール・ニコルズ)という若い兵士のひとり。彼を含め兵は全員10代の少年なのは戦局が思わしくないから。ウィショーくんはその中でもちょっとドジっ子で心優しい少年デニスを演じていて、ビリーの兄が撃たれた時、一生懸命ビリーを慰めようとして逆にウザがられてしまいます。カッコつけたい、男らしく見せたい年頃の少年の中で癒し系の存在感が。髪型もまたおサルさんみたいでね、そんな子がお茶を運んでくれたら癒されますよ・・・

戦争の極限状態の映画と言えば、日本軍を描いた「硫黄島からの手紙」を見ましたが、共通の空気が張り詰めてました。「日本軍はケダモノvsイギリス軍は紳士」みたいなイメージがあったのですけど(それは「戦場のメリークリスマス」のせい)イギリス軍とて下士官は自分の保身に必死だったり、兵卒はただのお兄ちゃん達。塹壕を出て見回りをした時にドイツ軍の兵士をひとり捕獲して来るのだけど、言葉も通じない一人を相手に数人で「ドイツ人は殺してやる!」と囲んで暴力を加える。出撃の直前に怖気付いて「事故です!」と泣いて言い訳しながら自分の脚を銃で打ち抜く兵もいた。

反対に、こういうのはイギリス軍だなーと私が思ったのは、迷路のような塹壕の分かれ道に、ロンドンの通りの名前を表示していたこと。「Patticoat Lane」とか「Heymarket」とか。それから、塹壕の出入りの合言葉を決めるのに、第1案が「シェイクスピア」だったこと。結局は敵が考えつきそうもない「Post Office」に落ち着いたのですが。

ちょっと意外だったのは、ウィンター軍曹が瓶から赤いものをスプーンで食べてると思ったら、それは奥さんのお手製イチゴジャムでした。軍曹ってそんなに偉くないのに持ち込みの食料もあるのですね。

そして食べ物といえば、攻撃命令の出た小隊は、暖かい食事をもらえます。そして恐怖心から少しでも解放されるようにとのウィンター軍曹の計らいでアルコールも飲ませてもらえます。この雰囲気は・・・戻ることのないカミカゼ特攻隊。

そしたら、それもそのはず、攻撃命令とは、先にヤリのついた銃を構えながら塹壕を出て、平原の350m先のドイツ軍の塹壕に向かってただ歩いていくことなんです?!「歩兵」とはよく言ったけれど、「戦火の馬」でサーベルかかげた騎兵が機関銃に撃たれて落馬し馬だけが走って行きましたが、あのような銃弾が嵐のように向かってくる隠れる所もない平原を、歩いて敵陣まで行って攻撃せよ、という命ですから、少なくとも敵艦に突撃すれば攻撃になるカミカゼよりも意味がない。横1列になって進む様子は将棋の歩のコマとまったく同じなんですよ!

欧米人が「神風特攻隊」について「日本人はなぜあんなことができる」などと不思議がりますけれども、それ以下の作戦をイギリス軍は決行していたのです。ドイツ軍の武器の性能の向上に、イギリス軍の戦法がまったく追いついていなかったのです。オックスブリッジ卒のインテリは戦場でテニスンの詩を読んでる場合ではなかったのですよ。

それでも最終的には連合軍が勝利したので、栄光の尊い犠牲となった戦没者を讃えるために、こうした映画も作られ続けているのかな。




最後に、この映画について2013年2月の「MailOnline」でウィショーくんが例のヘルメットも含めて発言していました。以下、抄訳。

ウィショーがまだ17歳の高校生で試験勉強をしていた時、学校や青少年劇団での彼のパフォーマンスを見たエージェントが契約したことから、この小さな役がもらえることになった。
「あれがまったく初めての仕事で、それまでプロの俳優に会ったこともなかったからどうしていいのかわからなかったのを覚えてる。」
と彼の東ロンドンの自宅近くのカフェで緑茶を口に運びながら彼は思い出していた。

「僕の最初のシーンは、塹壕の中をダッシュして角を曲がるとダニエルにぶつかるというものだった。」
「僕たちは、あの第一次世界大戦の端の尖った丸いヘルメットをかぶっていて、彼には『すごく尖ってるから気をつけろ』と言われた。」
「それで僕は塹壕を走って角を曲がり、ダニエルに勢いよくぶつかった。彼の鼻筋が切れた。それが本当に初めての仕事での初めての撮影だった。」
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2014/10/30

PADDINGTONトレイラー  ベン・ウィショー

ベン・ウィショーの声が入った映画「Paddington」のトレーラー第3弾が公開され、イギリスの11/28公開日まで1ヶ月を切りました。日本はまだ映画公開さえも発表されてないのですが、IMDbには12/4公開と出ています。それなら前売り券も出ていていい頃ですし、やはり何かの間違いでしょうね・・・残念ながら・・・!!!

時はクリスマス商戦に入っておりますので、ロンドンでは世界1の百貨店に選ばれたSELFRIDGESでも映画に合わせてちゃーんと関連商品を集めたウィンドウ・デコレーションと「THE PADDINGTON CURIOSITY SHOP」というコーナーを設置しています。

11/4からはロンドン中にセレブのデザインした50体のパディントン像が出現するチャリティ・オークション「THE PADDINGTON TRAIL」も始まります。

キャストも豪華ですけども、レッド・カーペットもあるのでしょうかね。お祭り騒ぎも、主役が子供の友達のクマだとほのぼのとして喜んで参加したいじゃないですか?!ここ日本からも参加できるのであれば〜(ジタバタ)

さて、新トレイラーを見た感想です。

ウィショーくんの声は、何だか合っているのかそうでないのか、もはや私には判定できず、ただ嬉しいだけです。しかもMailOnline記事

「ウィショーのキャスティングが決まってすぐ、彼の台詞全てに演技もつけた動画が撮られアニメーターに渡された。それを参考にしてパディントンの顔を声と表情が調和するよう造れるように。」

って書いてあるのを読んで、いったいどこがウィショーくんなんだろう?という気持ちでクマの顔をじーーーーっと見つめてしまいます。・・・・トレイラーの限りでは、まだよくわかりませんが、最初にオレンジの匂いをくんくんするところは「パフューム」でよく見たシーンでした。ウィショーくんは身体能力高いので、顔の表情よりもお風呂でサーフィンしたり傘で空飛ぶクマの中に入ってるような気がしてなりません(笑)。

クマ以外では、原作本のイメージとブラウンさん夫妻のイメージがけっこう違ってました。ミスターは呑気でちょっととぼけたお父さんかと思ってたら、ヒュー・ボネヴィルはもっと有能なビジネスマンっぽい、パディントンとの出会いでは「怪しいクマにかかわるなよ」って態度でした。ミセスの方は、「レイヤーケーキ」でイカれたビッチを演じたサリー・ホーキンスがどんな心優しい面倒見のいいママ役をやるのかと思いきや、やはり普通でない不思議ちゃんママっぷりで、まあ、そういう女性でないと駅のホームでクマを拾ってきたりしないだろうな、と納得させられました。

ニコール・キッドマンの出演を知った時は彼女がミセス・ブラウンかと思ってたのですが、彼女の役は101匹わんちゃんのクルエラ・デ・ビルのような魔女っぽい謎のキャラクターで、珍種熊のパディントンを剥製にしようと捕獲を狙っているらしいです。(トレイラーで見たのではなくこれは記事で読んだ)

ブラウン家のお手伝いさんミセス・バードにはジュリー・ウォールターズですが、ハリー・ポッターの時みたいな暖いおばさん像を描いていたら、ミセス・ブラウンのようにやっぱりファンキーなおばちゃんでびっくり。隣のおじさんらしきミスター・カーリーにはピーター・カパルディだし、かわいい熊のお伽話に見せかけて変人大集合の映画の可能性が考えられます。

そうそう、時代も現代になってますね。ポスター見るとロンドンのスカイラインにロンドン・アイが入ってますから。原作の50年代ぽい雰囲気も損なってないけど、21世紀らしい部分はどんなふうに出てくるのかも楽しみです。




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2014/10/29

マーガレット・サッチャー〜政界を夢見て〜  その他の映画・ドラマ・舞台

しばらくhuluを見ていないので解約しようとコンテンツを眺めて見つけたのがこの2008年放送の「The Long Way to Finchley」でした。1949~59年の若いマーガレット・サッチャーが政界入りを目指して、女性と労働者階級への偏見との戦いの時代を描いたBBCドラマです。

サッチャー役のAndrea Riseboroughという女優さんは、甘い容姿が気になったのですが、終盤、彼女の当選を阻む競争相手のオッサンをやり込める山場でそれが豹変し、鉄の女の片鱗を見せた変わりようがすごい演技で、すっかり彼女のペースに巻き込まれドラマが終わった時には私はサッチャーの味方となっておりました。

しかし実は「このドラマを見よう!」と決めた理由は、夫のデニス・サッチャー役のローリー・キニアが良かったからです。



ローリーでもNTliveで見たハムレットはあまりピンとこなかった(たぶん衣装が好きじゃなかった)のに、50年代のツイードのクラシックな格好した彼はジワジワと胸に来ました。目立つ役ではないのに、強い妻の尻に敷かれるでもなく彼女を応援し見守る夫の存在感がありました。

プロポーズのシーンが傑作です。何度かデートしてもプロポーズをしないデニスに、マーガレットは唐突に尋ねるのです。「あなたがもしもプロポーズするつもりなら、言っておくけど、答えはイエスよ。」私ももしも将来そんな状況に遭遇することがあったらこの台詞は使える!と感銘を受けました。

デニスの友人役(と思う)でシャーロックのアンダーソンことジョナサン・アリスも出てます。

さらに、保守党党員で、ストーリー上重要な役のテッドを演じたSamuel West、どこかで見たと思ったら、「ハワーズ・エンド」でヘレナ・ボナム・カーターの恋人を演じた人でした。(あの時も中産階級のお嬢さんと恋する労働者階級の詩人という役だったけれど、このドラマでも彼の階級が話の展開上キーとなっていて、なぜ彼はかっこいいけど労働者階級の役なんだ?って思いました。ジェイムズ・マカヴォイもそうよね。イギリス人には労働者階級の魅力的な男子の典型的なイメージってあるのかな。)彼は今年のThe Riot Clubや来年公開のSuffragette(ベン・ウィショーが出る)など気になる映画にも出ているそうで楽しみです。

さて、肝心のサッチャーの成功ストーリー、ひたすら女性差別との戦いでした。

今の英国はエマ・ワトソンが国連でスピーチをしたのをきっかけにセレブの男性も参加しフェミニズムが盛り上がっています。でも日本に住む私たちには、女王様を抱えサッチャーを出した国として、そして演劇の世界でも女性スタッフがたくさん活躍していて既に女性差別がほとんどないように写ります。

しかしサッチャーの選挙演説への聴衆からの質問は男からも女からも「あなかには家族がありますか?」「母親不在は子供に良くないから家庭にいるべき」「朝も夜も政治家はいつも勤務せねばならないが育児ができるのか?」などという、まるで現在の日本のオッサンのようなことばかりなんですよ!!

だけど、それは60年以上前のことです!
同じことを書いたのを思い出しました。それはドラマ「The Hour」の感想でした。あれもやはり50年代が舞台なので、女がテレビのニュース番組プロデューサーをやるのに主人公が差別と戦う。

そういう歴史を見ると、イギリスも昔は女性が政治なんてできるわけないと思われていた土壌で出てきたサッチャーさんという人は、やっぱりすごい人なんだな、と改めて思いました。

このドラマには続編があり、リンゼイ・ダンカンがサッチャーで失脚までが描かれているらしいので、そちらもぜひ見たいです。その二つのドラマがセットDVDになって出ているのですが、日本アマゾンでも1149円よりというかわいいお値段で輸入版は出てはいます。でも政治のお話みたいな不得意分野は日本語字幕が欲しいものです。
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2014/10/27

ロンドン育児のいいところ  イギリス

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写真には写ってないけど、羊さんもいたんだよね

娘の誕生日でロンドンでの育児生活を思い出したので、それもこの機会に少し書いておくことにします。

ロンドンで育児をしてよかったと思います。

まず散歩として街を歩く機会が多かったこと。通学・通勤をしたらできなかったと思います。6年間に1ヶ月の短期も含めると6つのフラットに住んだので、その近所はそりゃあもう歩きに歩きました。赤ちゃんの時は子供は自分では動けないわけですから、私が行きたい所へ行き放題です。当時、古着の買い付けのお仕事をちらっとしていたので、散歩の域を超えカムデンやグリニッジのマーケットや古着屋へもベビーカー押してぐるぐると。。。怪しい。

それと子供を通して地域の住民となれたことです。
たぶん日本でも同じですが、独身者の生活って近所付き合いはない。外国暮らしだと昔からの友達もいないし、家族親戚もなし。ところが子供がいると、犬の散歩と同じで周りの人と話がしやすいんです。フラットの管理人のおばさん、住人のお年寄り、両隣のおばさんと世間話したり、地域のお祭りに参加してイギリスの普通の暮らしを体験しました。

育児生活が充実していた理由のひとつにPlay Groupの存在があります。
地域の児童館のような集まりがあり、子供を遊ばせながら、大人はお茶をしながら社交や情報交換をします。日本の児童館と違うのは、各Groupが、規模も、そこを統括している個人の裁量で活動内容もまったく違うことです。個人主義の国なので、そこのリーダーの決定権が大きいのです。あとはその地域にある建物を利用するので、私の経験では都心のウェストミンスター区では荘厳な建物でゴージャス感がありました。

Play Groupは子供のいる家庭のサポート活動もするので、子供を遊ばせるだけでなく、バス遠足や、観劇、施設で開催しているクラスに子供と親が無料か低料金で参加できました。政府から助成金が出ていたからです。例えば、
遠足・・・サファリパーク
     ビーチ
     イチゴつみ
     乗馬体験 
観劇・・・ローカルな劇場
     オペラハウスでバレエ
クラス・・・キッズヨガ
      大人ピラティス
      大人ハーブコース
      大人陶芸
      大人クッキング
      育児クラス
その他・・・マッサージ
      大人のみのクリスマスディナー

こういうイベントがなくても、セント・ジェイムズ公園の近くに住んでいた時は、子供を遊ばせていると宮殿の楽隊マーチが来たり、戦争記念日には頭上をイギリス空軍の飛行機がアクロバット飛行していったり、女王様のお膝元で暮らしている感がありました。

キングスクロス界隈に引っ越した時にはロイヤルな雰囲気からは離れてしまったけど、上の写真のコーラムズ・フィールドという子供のための大きな施設があり毎日のように行きました。ロンドン大学、ブルームズベリーも近く、ディケンズやヘンデル博物館などへ子供連れで行けたし、サドラーズウエル劇場も徒歩圏で夜夫が帰宅したらバレエを観に行けた。子供の小学校はちょっとワケあり子供の足で徒歩30分のコベントガーデン地区だったので、劇場がたくさんありました。今思うと、あの時お芝居に興味を持っていたら天国だったのになあ!毎日学校へ送り迎えしていたのに〜。 

その時には、ベビーカーがあると狭い店やカフェには入れない、とか、夜の外出は夫の協力なしにはできない(それは今もまだある)とか、それなりに大変だったのだけれど、子供の世界を通して、独身の時よりもディープな地元生活ができたと思います。   
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2014/10/26

13回目の誕生日  家族のこと

今日は娘Mの誕生日です。

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13年前は、このロンドン大学病院は文字どおり大学の隣だったのですが、
今は移転してモダンなビルになっています。

移転先は、BBCシャーロックのBaker StことNorth Gower StがEuston Rdとぶつかった向かいです。

入院した部屋は、ベッドルームよりもバスルームの方が無駄に広い、いかにも謎のイギリスの古い建物という感じで好きでした。オバケが出てもおかしくない風でしたが、出産と育児初日という非日常だったため、せっかく出てくれていても気がつかなかったのかもしれません。

しかし一番よく覚えているのが、赤ちゃんのお世話をしたことではなく、入院食もいくつか選択肢があり、デザートにアップルクランブルも食べられて嬉しかったという情けない話です。
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