野球選手は、雨にはあまり良い思い出がありません。
雨が降れば、練習できなくなるし試合だってやりづらくなりますよね。
ところが世の中には、雨に感謝しているところがあるんです。
雨が降らないと、生死に関わるところがあるんです。
今年7月に、日本政府の派遣で「遺骨収容特別派遣団」の一員として、硫黄島に行ってきました。
太平洋戦争で亡くなられた方々のご遺骨が、未だに帰れずにたくさんあるんです。
20台の頃には、何度も遺骨収集に行かせてもらったんですが、ここのところ行けずにいました。
地名で言えば、東京都小笠原村です。同じ日本であるのに・・・・
実は、この島、民間人は入ることが出来ません。
今は、自衛隊の基地があるだけです。
400人の自衛官が駐留しています。
この自衛官の生活用水が、雨水頼りなのです。
滑走路に降った雨水をためて、使っているそうです。
私たちが行ったときも、なかなか雨が降らず、貯水率が40パーセントを切ったと言っていました。
現地の自衛官の方が
「もう少し貯水率が下がると、隊員を本土に帰すしかないんです。台風が来てくれるのが一番いいんですけど・・・」
台風を心待ちにしているなんて、信じられませんよね。
太平洋戦争当時も、この島は雨水頼りだったのです。水がなくて、多くの兵士は「水が飲みたい。」と言って死んでいったそうです。
六十数年前も、今も同じなのです。
そのお話を聞いてから、台風の進路を気にするようになっていました。
今回の台風19号が、硫黄島付近を通りました。良かったな・・・ 正直、ホットしました。
蛇口をひねれば、水は黙って出てくる。そんな生活に慣れてしまった日本人。
昨年の震災で、水のありがたさを思い知らされましたが、のど元過ぎれば熱さ忘れる!じゃありませんが、また少し水のありがたさを忘れてきていると思います。
水が少なくなって、自衛隊員を本土に帰しても、最低限の人員は硫黄島に残るそうです。
私の知人は、海上自衛隊の救難ヘリの救命救急士。どんなことがあっても硫黄島に残っていなくてはなりません。
「最後には、一日に2リットルのペットボトル一本渡されるだけですよ。それで全てをまかなうんです。信じられますか? 当然、顔なんて洗わなくなりますけどね。」そう言います。
水のありがたさに、あらためて感謝すると共に、遠い南の島で、国のために日夜がんばっている自衛官の方々に敬意を表したいと思います。

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