水戸東シニアの谷井監督は、投手出身。甲子園出場チームのエース番号を背負っていただけあって、投手の気持ちや苦労はイヤというほど理解している。
がんばっても打たれるときもある。調子の良いとき悪いとき、自分をどのように持って行ったらよいか、様々な経験から解っている。
前週の練習試合でピリッとしなかった、我がチームのエース。今シーズン最後の試合となった23日の牛久大会に投げさせない・・・と明言していた。
そのエース、当日朝、集合時間になっても来ない。電話をすると、親子で朝寝坊。遅刻である。
マイクロバスで試合会場に向かったナインとは別に、親子で自家用車で試合会場へ。
エース親子は、その道々、何を話しながら来たのか?到着して直ぐに監督のもとへ・・・
神妙に監督に謝る二人に対して
「まあ、他の連中よりは30分・1時間よけいに寝たんだから、今日は良いピッチングが出来るよな。」
私が監督だったら「エースの自覚がない!」と、怒鳴りつけて、試合にも出さないだろう。
しかられると思って監督に謝ったエース親子だったが、ほっとした様子。しかし、安堵してばかりはいられない。
そのエースは「しっかり投げなくちゃ・・・。」そう自覚したのだろう。
しっかり投げなかったら、監督に顔向けが出来ない・・・。
ピッチングは「心」で投げる。まさに、その通りだった。
低めに決まるストレート、鋭いカーブ、ランナーを出しても要所をしめる。ベストピッチだった。
そのゲームでたった一球の失投で、同点タイムリーを許したものの、前週とは全く違ったピッチングを見せてくれた。
試合後、何よりうれしそうだったのは、その監督である。
まさに、親子の些細なエラーを、見事にタイムリーヒットに変えてしまったのである。
お見事としか言いようがない。

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