札幌に出張した時のことです。
仕事が終わった夜、大通に出た帰り、バスに乗りました。晴れていたためか、大通り公園やテレビ塔が綺麗でした。続いて、時計台が見えました。ライトアップされていて美しいものでした。
そのとき、ふと、以前勤めていた会社のSさんのことが浮かびました。Sさんは西日本地区の部長さんでした。茨城の学校を出て、この業界一筋の大ベテランでした。お酒が大好きで、出張に同行した際は、前半小言、後半べろんべろんの構成で、楽しいお方でした。茨城弁のトークは味がありすぎます。またある日は梅田の立ちのみで泥酔して、最後、阪神電車まで引きずっていったこともあります。
昔かたぎのオッサンで、よく怒られました。私も若かったのか、よく激論を交わしたこともあります。でも嫌味はありません。うるさいけど味のあるオッサンといった感じでした。いい意味で、日本を代表するオッサンといっても過言ではないでしょう。
Sさんは飲みのあと、スナックやカラオケで、いつも十八番を歌っておりました。石原裕次郎の「恋の街札幌」でした。
私、何回も聞いているうちにこの曲が好きになり、別のところで何回か
歌ったりしたこともあります。この歌は石原裕次郎よりも、Sさんの歌って感じがするのです。
昨年、私がこの会社を去るとき、Sさんは飲みに連れて行ってくれました。その日私は泥酔し、どうやって帰ったのか覚えていません。
その後、Sさんとは1度年賀状と電話のやり取り程度にとどまっていました。また飲みましょうという言葉を交わしていた気がします。
しかし、昨年春のある日、1通のメールがとどきました。その会社の課長さんです。Sさんが亡くなったとの事。私が会社を去った直後、入院をされたときいていたのですが、末期の癌だったとのことです。諸事情で弔問や見舞いが許されなかったのが悔やまれます。
この日は、月が綺麗に出ていました。
Sさんがビールをぐいぐい飲んで、「恋の街札幌」を気持ちよさそうに歌っている姿が大通公園の空に浮かんだ気がしました。
歌ってる時、また気持ちいい顔してるんですよ、Sさんは。あの世でも・・・いいオッサンしてるんだろうなぁ。
この場を借りてSさんのご冥福をお祈りいたします。

0