原書名 Happy for no reason.
出版社 発行所=三笠書房
著 者 マーシー・シャイモフ 茂木健一郎
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さて、この本の、印象に残った話の続きである。
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難病の皮膚病に苦しむスカーレットは、立ち上がることもできず、電動車いすの生活で、有る仏教僧にに出会う。彼に自分の悲惨な状況を話した彼女は、同情と、思いやりの言葉を期待していたが、僧の返答は、
「自分を憐れむのはおやめなさい。人の幸せを考えるようにするのです。」
「無理です。こんな状態なのですよ。自分のことで精一杯です。」
彼女は、彼は何も解っていないとがっかりするが、何故かその言葉が心に引っかかり、以降、少しづつ気を付けるように。
ある日、スーパーのレジに並んでいると、明らかに虫の居場所が悪そうな女性が、カートを品物でいっぱいにして後ろに並ぶ。真っ先に「何て品の無い人かしら、目を合わせないよう、関わらないようにしよう。」と思ったけど、例の僧の言葉「人の幸せを考えるのです。」を思い出し、こう思い直す。「この人は今日、とてもイヤなことがあったのよ、私にだってこういう状態の時があるじゃない?、この人を幸せにするには、どうしたらいい?」
彼女は振り向いて、「お急ぎのようですね?」
「ええ、急いでるんです、遅れそうだから。」
「私の前にどうぞ。」
「いいえ、大丈夫です。」
「どうぞ、遠慮なさらないで、私は急いでいませんから。さあ、どうぞ。」
変化は劇的でした。いらいらをまき散らし、レジを怒鳴りつけそうな勢いだった彼女は、人に親切にされて、別人のようになったのです。
私の前にカートを進めながら、何度も有り難うと言い、店員にも礼を言い、笑顔で店を出ていきました。
私はすがすがしい気持ちになりました。回りを見ると、誰もが私に笑顔を向けて、言葉を交わし合っているのです。・・「素敵ね?」「気持ちの良い場面だったわね?」「今日も良い日になりそうね?」
それからは、もっと人を幸せにしたくて、出来ることはないか探すようになりました。人のためになろうとすれば、機会は至る所に転がっているものです。
・・・病気も良くなり、僧に再会したときに、人の幸せを考えるようになって、自分の人生がどれほど変わったかを、彼に話すと、にっこり笑って、「良かったですね?本当に良かった。」
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彼女に負けじと、私もこの前、エレベーターで、乳母車を押す若い母親に、赤ちゃん眠そう!と微笑みながら話しかけたら、母親も微笑み返した。一瞬のなごやかな雰囲気を楽しみ、ああ、生まれてきて良かったなぁと、父母に、世界に世界の生きとし生けるものに感謝の気持ちがこみ上げる。

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