
名古屋でのレッスンを終えると、室生の山奥に向かう。奈良県の古い寺で、前から気になっていたのだが、生徒のJazzfarm さんのご厚意で、山荘を持つ友達の方に急遽泊めてもらうことになったのだ。
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名古屋から1時間ほど電車に乗って、亀山市に着くと、Jazzfarm さんの車に便乗して走ること1時間、途中で、新作「La Galaxia,天の河のほとりで・・」を聞きながら行く。Jazzfarm さんの言うことには、放出されている心のパワーが凄いので、運転しながら聞くのはきついというので(笑)あとでゆっくり聞いてもらうことにした。僕は毎回楽しんで聞いています。
山荘に着くと、友人のT さんが快く迎えてくれる。挨拶代わりにピアノを弾いてくれるというので聞く。ベートーベンの激昂?、いや月光だ。なかなか心の困った演奏、いや心のこもった演奏に感心したが、僕が音楽のプロだと聞いて、Tさんから矢継ぎ早に質問が出ていた。
そこで気が付いたのは、どのようにして演奏しているかという方法論だが、例えば#が4個ついて、どう見てもC#マイナーの曲なのだが、彼の場合は、全ての音はハ長調の音にその都度#を付けて一個一個弾いているようなのだ。
僕の読譜法を紹介すると、そのあまりの違いにJazzfarm さん共々驚きを隠せないようだった。我々の読譜はこうだ。
●まず調号を見る。#が4個と言うことは、まずEメジャーか、C#マイナーであろうとあたりを付ける。ジャズの楽譜はコード記号が記されているので、そこからの判断になるが、クラシックではそう言う記号はないので(バッハの時代には数字付きベースが合ったと聞くが・・)、始まりと終わりの和音を見る。案の定C#マイナーであることが確定した。
長年のアドリブの訓練で、G#,C#、Eという3音のアルペジオを見るとC#マイナーというコードは頭の中で鳴るし、右手のメロディを視唱で歌って見せると、不思議がっていた。どうやら弾くまでどの音の高さかイメージできないらしい。私の場合は譜面を読んだだけで、難しい和声でなければ、音は頭の中で鳴るのだ。あらゆるキーのあらゆる音階和音を長年に渡って練習してきているので、どんな音でもその練習で体験した音階、和音なのですぐ解るのである。
音楽は、何調か、何のコードなのか、ドミナントなのかトニックなのかを感じながら演奏されるべきなのである。これが間違った日本の固定度読み教育のお陰で、調性感を持たない、読譜だけは出来るが音楽は感じていないロボットのような人間をたくさん生み出して来た。
音楽は、相対音感、移動ドで理解されなくてはならないと思う。その理由は、音楽の一番楽しい美味しいところがそこにあるからである。そのおいしさを知らないで譜面通り演奏できたとしても、何が楽しいというのだろうか?英語の意味がさっぱり解らないでそれらしく歌っているジャズ歌手のような、悲しさと滑稽さがそこにある。
さて、木のお風呂や、おいしいクルミ入りパンなどの一宿一飯のもてなしを受けて、目指すは室生寺。なかなか雰囲気のあるお寺で歴史を感じた。龍穴神社の大木の太さはどうだろう。少なくとも500年は経っている。人間など、ちょこまかと動き寿命も短い生き物と見えるだろうな?
でも日本に入ってきた仏教は、仏陀の言いたかった哲学をどれほど理解していたのだろうなとも思った。
例えば、無常とは、全ての物事は、全ての人の心は移り変わってゆく、自分という確たる実体は存在しない、因縁という、原因結果の法則等の、仏教哲学はどこへ行ったのだろうか?人々の生活に指針となる考えを指し示すのが仏教なのだが、葬式に訳の分からないお経を聞かされてお金だけ取られるのはもう遠慮したいところだ。(笑)
大阪でも2日間のレッスンを終えると、大阪関目のブラウニーに顔を出す。大阪ジャズ協会理事も務めている宮岡さん(tp)のライブに顔を出すのが目的だが、そこで大先輩の長谷川元伸さんに会う。この方はアルトサックスの名手で、一昨年の韓国公演ではお世話になったのだ。その味のある職人芸は健在で、久々に二大先輩と。ジャズのセッションは楽しい。いつもは若手を使って、生徒には指導する事が多い僕も、こういう先輩音楽家とやらさせて頂くのは滅多にないので楽しいのである。素晴らしい歌唱力のはらさちこさん(Vo)も駆けつけてくれて、楽しい大阪の夜は更けてゆく。

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