新しい見樹院は、山と連携し、森を守ります。
基本的な構造は鉄骨意・鉄筋コンクリートですが、ふんだんに使用される木材に関しては、宮城の栗駒木材から供給される国産のむく材のみを使います。現地で伐り出された杉材を、現地の乾燥施設で、石油や石炭を使わず、現地の端材や枝からできたチップを使い、バイオマス100%で低温燻煙乾燥させます。60度以下の低温なので、古民家が囲炉裏で燻されるのと同じ原理で、木の細胞が壊れず、しなやかに乾燥し、何百年と長持ちします。化学物質の防腐剤や防カビ材も使いません。

燻煙乾燥炉
栗駒では、伝統工法の大工職人を確保し、組み立て以前の加工までを行うことにより、山側の雇用と収入を向上し、森林の保全と地域の自立、そして材木だけの供給ではなく、家具等の部品まで生産することで森林資源を有効利用しています。さらに、天然住宅が標準的に装備する高性能ペレットストーブが、従来廃棄するしかなかった木皮の燃料化も実現し、森林資源の100%利用も可能になります。
木曽ヒノキなどは、植林して100年で育てると言われますが、50年で育てる木を、最低60年で使っていけば、森は20%ずつ回復することが出来ます。これまでのように、30年足らずで廃材になっていくサイクルでは、持続可能にはなりません。森は正しく使うことによって、守られていくのです。
荒れる日本の山林
私はずっと東京で生まれ育ちましたが、高校時代は山岳部で、毎月のように山に登っていました。その頃に比べても、今の山はどこも非常に荒れています。それは、安い外材に押され、林業が成り立たなくなり、山を守る人がいなくなってしまったからです。一方、東南アジアをはじめとした熱帯林を伐採し、森で暮らす人々を苦しめる状況を、私も目の当たりにしてきました。何千年と育まれてきた文化も人々の生活と共に破壊されます。近年はさらにアラスカやシベリアの北洋材まで手を伸ばし、地球温暖化に拍車をかけています。
山が荒れると、水も枯れ、海も貧しくなります。一次産業が崩壊したところに、ダムやゴミ処理場、そして海側では原発ができます。そうすると自然はさらに貧しく、価値のないものになります。大資本が大儲けしながら、そのような日本の負の歴史を輸出しています。
原子力や海外派兵の理由として、必ず「資源に乏しいわが国」ということばを聞かされます。でもそれはウソです。本来豊かな山林があり、清冽な水が流れ、世界に誇る文化と生活が築かれてきました。ちょっと前、コメが余っていた頃から、爆発的に人口が増えたということもありません。グローバリゼーションの価格のトリックで、他国の自然と命を買い叩き、大量の石油を消費して、地球も私たちの心も体も蝕む消費社会が成り立っています。
「見樹院」の「樹を見る」とは、立ち木や枝振りを見ることではありません。見えない根っこや樹木を支えているあらゆる縁を見極めるということです。命を生かしめているものすべてへの想像力を広げ、そのつながりのなかに「私」「いま」「ここ」の可能性と使命に目覚め、世界と未来を良い方向へ変える力を発揮してほしいというのが「見樹院」の願いです。エコヴィレッジとは言っても、都会で100%自給自足は出来ない分、山側とつながり、その持続的発展を支えていく、気づきと実践の場にしていきたいと思います

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