去る1月25日に実施されたパレスチナ議会選挙でイスラム原理主義を標榜するハマスが圧勝したことを受けて、イスラエルや欧米から様々な憂慮の表明や否定的な圧力が加えられています。私は決してハマスを支持する者ではありませんが、パレスチナの大多数の人々も私たちと同じ普通の生活者であるという大前提の下に、大きく3つの認識を持つことを訴えます。
まず第一は、ハマス=テロリスト集団と単純にみなすことの誤りです。もちろん強いイスラム信仰に立脚するセクトではありますが、その主要な活動は、福祉や医療、教育などを提供する組織として、住民の中に受け入れられてきたということです。イスラエルによる占領下で、行政の機能が皆無に近い状態の中で、他の政党やNGOと同様、社会サービスを担ってきたということは伝えられず、事件の主役としてのみメディアが報道してきました。
第二の点は、そうは言っても多くの人々は元から支持をしていたわけではなく、近年の様々な内外状況が、人々にハマスへの投票を促したことです。対テロ戦争(参考
http://www.juko-in.or.jp/Message2005.htm#051009vsterr)の典型のようなイスラエルの政策によって、土地も財産も尊厳も奪われていく人々にとって最後に頼るところとなり、加えて分断されたパレスチナ社会で自治政府の諸勢力が争い、腐敗し、失望と反感を買っていたこともあります。人々は“過激派”としてのハマスを支持したのではなく、宗教的な原理の下に“誠実できれいな”ハマスに期待したと見るべきです。
そしてもう一点は、この選挙がいたって民主的に行われたということです。アラブ世界で初めてと言えます。もちろん「満場一致」ではなく反対者も少なからずいることも含め、間違いなく民意を反映しています。そして心しておくべきことは、「民主的」な選挙を行うことで、今の情勢の中では、世界中で「原理主義的」な政権樹立が予測されることです。それは人々に内在する要因というより、抑圧的で差別的な国際情勢がそうさせるのだと私は確信します。
民主的かどうかという観点において、パレスチナ社会は、少なくとも石油資本に支配されているサウジアラビアをはじめとする「親米」政権の国々よりはよほどマシです。人々はそんなアメリカが押し付ける民主主義のダブルスタンダード、不正義、拝金主義を、そのしわ寄せを受ける立場として、とうに見極めているのだと思います。
十数年来、現地の人々と接し、その現実、取り組み、希望、失望を目の当りにしてきた者として、彼ら彼女らの「究極の選択」を尊重し、大国の都合に翻弄されてきた人々が、今こそ人間として生きる権利を獲得し、自らの意思で未来を切り開くチャンスを生かせるよう、訴えて行きたいと思います。
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