カムカム「ひろこさん、まねき猫まつり楽しかったなあ。第2回目もがんばろうな。」
ひろこ「そうね、がんばりましょう。ところでカムカム、ここはどこなん?」
カムカム「サー僕もようわからんのんじゃ。サチコさんが僕を、サチコさん家の丸テーブルに乗せてウニャウニャ言うたら、ここに座っとたんじゃ。」
ひろこ「と、言うことは、サチコさんは、いないってことよねえ。」
カムカム「うん、そうなんじゃろうなあ。でも見て、僕に影をくれたんじゃ。ほら見て!」
カムカムが、お尻をふると薄暗い中、不慣れそうなカムカムの影が、ぼんやり揺れていました。
ひろこ「良かったねえ。いい影ねえ。」
なんだかそれを聞いて、影が喜んでいるようでした。
カムカム「それで、僕達どこに行くの?上?した?」
ひろこ「そうねえ、したにきてカムカムに会えたんだから、やっぱり下かしらね。」
カムカム「下は暗いねえ。一応猫目だけど、こう、真っ暗だと何も見えないねえ。」
その言葉が終わらないうちにカムカムの座っていた赤い座布団が丸くなったかと思うと、赤い明るいちょうちんになりました。
さっそく、カムカムとひろこさんはちょうちんを手に階段を降り始めました。
丸い小さな赤ちょうちんを先頭に張子の招き猫が2匹暗くて長い地下への階段をトコトコ下りていきました。
カムカム「100だ。ねえ、ひろこさん。ずいぶん降りたよ。これで100回曲がったんじゃ。ひと曲がりに10段あるから、1000段も下りたんじゃ。えーっと一段10センチとして10000センチ下りたんじゃから、100メートル下りたんじゃなあ。100メートル地面をもぐったらなにがあるんじゃろう?」
ひろこ「じゃあ、ちょっと、ここで一休みしましょうか?100メートル?地下鉄ってどのくらい地下なのかしら?」
二人が足を止めた踊り場には座るのに調度良いフカフカのソファーがありました。二人はソファーに腰をおろしました。
カムカム「はあー、ひろこさん、ずいぶん下りたねえ」
カムカムはちょうちんで下りてきた階段を眺めました。
カムカム「あれ?ひろこさん!上への階段がないよ!もう戻れないよ!」
上への階段はたったの5段しかありません。
カムカム「大変じゃ!早く下りんと階段がなくなるわ!ひろこさん早く下りよう!早く早く!」
カムカムはひろこさんの手を握ると早足になりました。
ひろこ「まあ、大変。」
二人はあわてて立ち上がりましたが、足に砂袋でもくくりつけられたみたいに足が重くなっていて、もう少しでこけそうでした。
カムカム「うわぁ!足が貼りついとる、サツコさんがくれた影、調子悪いわ!」
ひろこ「まあほんとう。おかしいわ、私の影も重くなってる!」
すると、次の瞬間影は、ふっと軽くなったのです。
カムカム「いそごうよ!」
二人は消え始めた階段を後ろに、また下へ下へと足を急がせました。
軽やかに下へ下へ進みます。今度は、影が引っ張っているみたいです。どのくらい下りたでしょう、息が切れてきました。
カムカム「ひろこさん!もうだめ」
そういってカムカムは踊り場で、へたり込んでしまいました。
二人は気づいていませんでしたが、二人の速度に合わせて、階段も消えていたので階段の消えるスピードもかなり速くなっていました。
結局、二人の後ろにはいつも5段しかなかったのです。
ひろこ「カムカムしっかりして!」
ひろこさんはカムカムの隣に一緒にしゃがみ込みました。
猛スピードで消えていた階段は二人が急に止まったものですから、つい、うっかりと二人のしゃがみ込んでいる踊り場も消してしまいました。
カムカムとひろこさんは二人とも、赤ちょうちんと一緒に暗い中下へ下へ落ちて行きました。
消えた踊り場は、あわてたようにまた出現しましたが、二人が下に落ちてしまった後でした。
二人は落ちながらも手をしっかりつないでいました。
ずーっと落ちます。
カムカム「落ちちゃったねえ。」
ひろこ「どこまで落ちるのかしら?」
カムカム「このぶんだと、地球をつきむけて反対側につき抜けちゃうよ。反対側だとみんな逆立ちしているのかなあ?それとも、地球の真ん中で焼けちゃうのかなあ?」
長いこと落ちていました、その落ちている間に二人はいろいろな話をしました。

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