迷路の植え込みの上のほうに咲いた黄色い花に、黒い蝶々はヒラヒラしながら歌を歌っていました。
“迷子はどこに居るでしょう。どこに居るのかわからない。わからないのは、あの名前。知っているのは私だけ・・スカイ・フライ・ブラック・・”
鈴をころがすような声とでもいうのでしょうか?リンリンと高く細く美しい声でした。
その歌をかき消したのは、寅ちゃんの声でした。
寅「迷ったら、動かないこと!そういうこと!」
ヒデコ「えーこっちだってば!」
福「いえ、違います。こちらです。」
たま「うーん、どっちだったかなー??」
寅「動かないこと!」
ひろ子さんとサチコさんは、にぎやかな声のする方を角からコッソリのぞきながら、小さな声で話しました。
ひろ子「私の張り子姿をみたら、寅さんも、福さんも驚くわねえ・・」
サチコ「どうかしら?二人とも根性ありそうだから大丈夫じゃないかしらそれより、ナマズくんが居るから、ここは、私が出て行って・・寅ちゃんの性格だから・・で、おひょうが居るから・・ウンこれでいこう!」
角から、ひょっこりサチコさんは姿を現すと、大声で叫びました。
サチコ「あーやっとみつけた!こっちこっち!」
思ったとおり、この声を効くと、寅ちゃんは早かった。ダーッとこちらに走ってきました。
このダッシュは、誰にも止められませんでした。
おひょうは、サチコさんの変装(スカート姿)を見抜くと、福さんとヒデコさんの間に素早く入り込みました。
寅「あー良かった。見つけてくれて、やっぱり、動かないことだわ。」
息を切らしまがら寅ちゃんは話します。
寅「あら?サチコさん今日はスカートね。いいじゃないの??あら?」
どうやら、後ろの張り子の招き猫に変身しているひろ子さんに、気づいたようです。
寅「あら?張り子?大きいわねえ。いいじゃない!わ!動くの!えーすごい!作ったの?コンピュターで動いてるの?えーどれどれ・・」
サチコさんは、福さんの安全を確認すると、おひょうに叫びました。
サチコ「おひょう!ヒデコさん捕まえて!ナマズよ!」
たま「OKまかしとき!ガッテンしょうちのすけ!」
たまさんは、あっという間に、おひょうにもどりました。(豹の土人形です。)
ヒデコ「うへぇーばれてるー」
そう言うと鼻をフンフン鳴らしながら逃げ出しました。
おひょうが、ヒデコさんの腕をつかむとヌルリとすべりました。
ヒデコさんは、おひょうの捕まえた腕からヌルヌルのナマズに姿を戻しました。
その調子で、ヌルリヌルリとナマズは、植え込みの中へ逃げました。
おひょうは、植え込みに引っかかって入れません。
しばらくしてポチャンと水音がしました。
おひょう「ちえっ逃げられたか!」

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