コウモリとカメレオン  3) アイデンティティー

2000年の1月にイギリスからフランスに移住して丸8年。イギリス人の父と日本人の母を持つ子供たちの心の故郷は、ここノルマンディーなのです。  筆:滝つぼ

心の故郷ノルマンディー

三人の子供たちも16歳、12歳、10歳となり、それぞれに親しいお友達も近所にいて、ソーシャル・ライフも充実している様子です。近所の子供達は我が家が気に入っている様子で、次々と子供達が我が家に集まってきます。

私も夫もフランス語ができないし、私はいつも働いているしで、親達は子供達のお友達作りにはまったく貢献しませんでした。イギリスにいた頃は私もイギリス社会に溶け込もうと努力したものですが、フランスに来てからは、すっかり手抜きをしていたので、この人間関係は親の力を一切借りず子供達が自分達の力で築きあげたものです。

移住した当時7才だった長男はフランス語もまったくできない状態で学校に放り込まれ、母国語を変更させられ、自力でお友達を作って、この社会に溶け込んで、今の人間関係を確立させるまでに、並々ならぬ苦労をしたのだそうで、「もう、二度とあんな思いはしたくない」のだということです。

イギリス人でもなく、日本人でもなく、フランス人でもない子供達は、どこの社会にも完全には属する事ができません。でも、子供達は自分達の力でノルマンディーの人々に受け入れられ、このノルマンディーを「心の故郷」と感じているようです。

コウモリとカメレオン

私が思うに、異文化の中で生活する時、「コウモリ方式」を取る人と「カメレオン方式」を取る人と、2つに分かれるような気がします。「コウモリ方式」というのは自分の都合に合わせて方針がコロコロと変化する事。「カメレオン方式」というのは、自分の置かれた環境に同化して、そこでの常識に従う事です。方針が変化する点では両者は似ていますが、この2つは大きく異なります。例えばこんな例がありました。

以前、レストランで、ある事について日本人のお客様に「ここはドイツなんだから、ちゃんとドイツ式にやって下さい!」というご指摘を受けました。「そうでしたか。それは失礼しました」という事で、ドイツ式を取り入れました。

しかしその方は、あれほどドイツ式を主張したにも関わらず、レストランではチップを置くのがドイツ式ですが、それについては日本式に切り替えてチップは置いて行きませんでした。

つまり「コウモリ方式」というのは、自分の都合や利害に合わせて「いいとこ取り」をすることです。一方「カメレオン方式」は、たとえそれが自分の元々の文化や常識とは異なり、自分にとっては不利だったり不都合だったりする事でも、潔くその環境のしきたりに従うやり方です。こういう生き方をすればたとえ外国人やよそ者であったとしても、その社会ではきちんと受け入れてもらえるものなのだと思います。

カメレオンに徹した子供達

うちの子供達は小さい頃から「みんなと違う事」を強いらされて生きて来ました。イギリスでも日本でも片親は外国人。フランスでは両親ともが外国人。「みんなと違う事」は子供達にとっては「耐え難い苦痛」なのです。

そんな環境の中で周りから「なんだ、僕らと同じだね」と扱ってもらう事は、子供にとっては死活問題。自己防衛本能が働いて、瞬時にその環境ではどんな風に振舞うべきなのかをいち早く察し、その環境の中に同化して「皆と同じになる」事をうちの子供達は本能的に学び、身に着けたのだと思います。

イギリス人のお父さんと日本人のお母さん。こんな特殊な家庭でも周囲から「仲間はずれ」にされる事なく、自分達の幸せを自分達の手で勝ち取った子供達。フランス語もドイツ語もできるようにならず、日本人社会の中だけで生きている私としては、そんな子供達に我が子ながら、「アッパレ!」と、褒めてやりたい心境です。


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